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なんでだよ!

 あー、もう! なんで朝から人生を左右する出来事に遭遇するんだよ!

 俺は普通の人生を送りたいだけなのにー! ……あー、なんかもうどうでもよくなってきたな……。

 えーっと、とりあえず情報を整理するか。俺の部屋にいる銀髪ショートと水色の瞳が特徴的なこいつは『ルルナ』で、俺の妹候補……らしい。

 で、なんかこいつの世界が魔王に支配されてるから魔王を倒すために俺の力が必要……らしい。

 今すぐ魔王を倒すことをここで誓うか、今日出会ったばっかりのこいつと子作りして、俺の子どもに魔王を倒してもらうか。こいつに食われるかのどれかを選択しないと俺のいる世界がルルナ(こいつ)によって破壊される……でいいのかな?

 何度考えても俺に拒否権なんてないことは分かってる。だけど、早くしないと高校に行けないし、俺の人生が終わってしまう。

 さあて、どうしたものかな……。俺が悩んでいるとルルナが。


「お兄ちゃん、別に異世界に行くっていっても、一日、一時間しか居られないんだから、そんなに深く考えなくてもいいんだよー?」


 それは知っている。というか、それを知ってしまったせいで悩んでいることがこいつには理解できないのだろうか?

 いや、やめておこう。こいつには俺の心の声が聞こえているみたいだからな。

 うーん、こういう時はあれだな。占い的な何かに頼るっていうのも一つの手だよな、うん。

 俺は心の中でそう考えてから、ルルナに提案してみた。


「なあ、ルルナ。一つ頼みがあるんだが……」


 その時、ルルナは目を輝かせながら、俺に抱きついてきた。


「わーい! お兄ちゃんが私の名前を呼んでくれたよー! ひゃっほーい!」


「ちょっ! 離れろよ! 暑苦しい!」


「いやだー! もうちょっとだけー!」


「あー! 面倒だなー! いいから、離れろよ!」


 俺がルルナを離そうとした、その時。両手でルルナの体の一部に触れてしまった。

 な、なんだ? この柔らかい感触は? というか、この感触、起きる前にも一度……。

 その時、ルルナが俺の両手首をつかんで、笑みを浮かべながら、俺をベッドに放り投げた。


「お兄ちゃんの……バカあああああああああああ!」


「うわあああああああああああああああああああ!」


 そう……俺はルルナの胸に触れてしまったのだ。そりゃあ、急に触られたら、びっくりするよな……。

 ベッドという名のクッションが無かったら、今頃俺は死んでいただろう……。すごい馬鹿力だった……。

 そんなことを俺が考えていると、一瞬で移動したルルナが俺の首を掴んで、自分の顔を俺に近づけてきた。


「お兄ちゃん、今のはちょっとがっかりしたよ。お兄ちゃんがそんな人だったとは思わなかったよ」


 ルルナは笑顔だが、ひしひしと怒りが伝わってくる。あー、やばいな、これ。女の子を怒らせたら、手がつけられないっていうのは都市伝説じゃなくて、本当のことだったんだな……。

 俺は首を掴まれているから、このままだと確実に死ぬな。あー、どうしよう。俺、このまま死にたくないな……。

 その時、ルルナが俺に提案してきた。


「お兄ちゃんが魔王を倒すって言ってくれたら、無かったことにしてあげても……いいよ?」


「そ、それは信じて……いいのか?」


「……私がお兄ちゃんに嘘をつくと思う?」


 な、何なんだよ、こいつ。急に顔、赤くしやがって。可愛すぎるだろ、まったく……。


「そ、そうだな。そんなことしても……お前にメリットは……ない……よな」


「でしょ? なら、早く誓って。『俺が魔王を倒してやるよ』って」


「そ、それを言えば、俺は……どうなるんだ?」


「妹候補の一人である私が手に入るよ」


「……そっか。なら、仕方ねえな。……分かったよ、俺が……お前たちの世界を支配している……魔王を……倒して……やるよ」


 あー、言っちまったな……。さて、俺は助かるのかな? まあ、美少女に首を絞められて死ぬっていうのも案外……いいかもな。

 俺が誓った直後、ルルナはパッと手を離して、俺を解放した。そしてそれと同時にルルナの態度も元に戻った。


「いやあ、さすがお兄ちゃんだねー。妹のお願いを聞いてあげるなんて。あはははは」


 俺は少し咳き込んでいたが、その言葉を聞いてようやく合点がいった。そう、こいつは最初からこうなることを予想していたのだ。

 俺がこいつの名前を呼んだその瞬間から、俺の負けは確実だったってわけか。はあ、女の子って怖いな。

 俺がそんなことを考えている最中に、ルルナは俺を押し倒した。


「それじゃあ、お兄ちゃん。私と『兄妹契約』を結んでもらうよー。覚悟はできたー?」


 俺は迷わず、こう言った。(迷ってももう手遅れだということが分かってしまったから)


「ああ、分かったよ。俺がお前のお兄ちゃんになってやるよ。だから……俺の妹になってくれ」


 ルルナは四つん這いでニコニコ笑いながら、残酷なことを言った。


「それじゃあ、今からお兄ちゃんの血をぜんーぶ飲み干すから、動かないでねー」


「ああ……って、今なんて言った!?」


「えー? お兄ちゃんの血をぜんーぶ飲み干すって言ったけど、それがどうかしたの?」


「どうしたもこうしたもない! お前は俺を殺す気かよ!」


 俺は必死に説得してみたが、ルルナはキョトンとした顔でこう言った。


「何言ってるの? お兄ちゃん。『兄妹契約』を結ぶには、妹になる子がお兄ちゃんの血を一度、全部飲み干して、体の中でお兄ちゃんの遺伝子情報をもらってから、お兄ちゃんの体にお兄ちゃんの血を全部、入れ直すんだよ?」


「はあ!? そんなことできるわけないだろ! というか、他人の血を体に取り込んでも平気なのか!?」


「大丈夫、大丈夫。異世界あっちではみんなできるからー」


「そんなの信じられるか! あー! 誰か助けてくださーい! 美少女の皮を被った悪魔に殺されるー!」


 その時、ルルナはどこからともなく取り出した注射器の針を俺の首筋に刺して、何かを体に注入した。

 その直後、俺はピクリとも動けなくなってしまった。(会話することはできる)


「……なんでだよ! どうしてそこまでして……俺にこだわるんだよ!」


 俺は大声でそう言ったが、ルルナはそれを無視して、俺の首筋に口を近づけていった。

 あー、短い人生だったなあ……。来世は普通の人生を送りたいものだな……あははははは。


「それじゃあ、いただきまーす……カプッ!」


 ルルナが俺の血を吸い始めた直後、俺の意識はどんどん遠のいていった……。俺、このまま死ぬの……かな……?

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