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ポーン!

 俺の名前は『田村たむら 健二けんじ』。普通の高校2年生……だったが、異世界からやってきたルルナ・リキッド、マキナ・フレイム、マリア・ルクス、アヤノ・サイクロン、ミーナ・ノワールという俺の妹候補たちのせいで俺の日常は壊された。

 なんでも、俺にはルルナたちの世界にいる魔王と同じくらいの魔力があるらしく、早々に魔王を倒せるくらい、その力を引き出せるようになってほしいらしい。

 まあ、俺と一緒のクラスに転校してきて、普通の高校生と変わらないことをやっているところだけを見れば、ルルナたちが異世界人だとは思わないけどな。

 まあ、なんだかんだで俺たちは今日も普通の高校生活を満喫し、家に帰ると異世界に転移して、俺はとにかく強くならなければならないため、モンスターを倒しまくっていた。

 ちなみに、ルルナたちは、そのへんで好きなことをしている。呑気なものだ。こんなことをしていたら、きっと今にでも魔王の手先がやってく……。


「ねえねえ、君が魔王様を倒せる可能性がある人間だよね? 今日の朝、電柱のてっぺんから見てたんだけど、気づいてたかな? というか、いつも素手でモンスターを倒してるの? すごいねー」


「あー、気が散るから、あとにしてくれ」


「私が魔王様の手先だと言っても?」


「なら……ここで消えてもらうだけだ!」


「おっと、危ない、危ない」


 その美少女は黒髪ショートで頭にツノが生えていて、瞳は赤く、背中からコウモリのような翼が生えており、先端が矢印のように尖っているシッポはクネクネと妙な動きをしていて、服装は黒いワンピースだった。


「お前、悪魔か何かか?」


「うーん、ちょっと違うかなー」


「じゃあ、なんだ!」


「そんなに怒鳴らないでよー。私は君と戦いに来たわけじゃないんだから」


「なら、さっさとここに来た目的を話せ! さもないと……」


「あー、はいはい、わかったから、少し落ち着こうよ。ね?」


 ルルナたちがこいつを無視しているということは、こいつはそんなに危険ではないことなのか? うーん、まあ、話くらいは聞いてやるか。


「よし、わかった。今すぐ話せ」


「せっかちさんは、モテないよ?」


「余計なお世話だ」


「えーっと、君はツンデレって、やつなのかな?」


「誰がツンデレだ!」


「あー、はいはい、そんなに怒らないでよー」


「お前がさっさと話さないからだろうが!」


「はぁ……わかったよ。今から説明するから、よく聞いてね?」


「ああ……」


 草原に心地よい風が吹くなか、そいつは説明し始めた。


「私の名前は『ユミナ・ブラッドドレイン』。魔王様に代々仕えてきた『十人の幹部』の一人である、吸血鬼よ」


「吸血鬼……か。太陽の光が当たっても灰にならないってことは、人間とのハーフなのか?」


「ううん、違うよ。この世界の吸血鬼はみんな日光には強いよ。子どもの頃から、外で遊んでいればね」


「ほう、人間でいうところの汗腺みたいなものか。なら、嫌いな食べ物はなんだ?」


「えーっとねー……って、話をそらさないでよー!」


「お前、本当に幹部なのか? いや、幹部は幹部でもバカンブかな?」


「うう……人間にそんなことを言われるとは……たしかに私じゃダメかもね。でも、仕事だから、伝えるべきことは使えておかないと……。コホン、えーっと、私が魔王様に君のことを伝えた結果……魔王様は私たち10人の幹部を倒すことができたら、戦ってやってもいいとおっしゃいました。だから、早く強くなってね?」


「あー、そうか。なら、行くぞー!」


「おっとっと。いきなり攻撃しないでよー! 話はまだあるよー!」


「そうか。なら、早く話せ」


「ずいぶんと上から目線だねー。まあ、いいけど。コホン、えーっとね、とりあえず私の家に来てもらえるかな?」


「はぁ? なんでお前の家に行かなきゃいけないんだよ!」


「私のことを少し教えようと思ったんだけど、嫌なの?」


「そんなの必要な……」


 いや、待てよ? こいつの家に行くってことは、あれだよな。10人の幹部の一人の情報を得られるってことだよな?

 なら、ここはこいつに従うべきなんじゃないか? もしかしたら、こいつの弱点なんかがわかるかもしれないしな……。


「必要ないなら仕方ないねー。じゃあ、私はこれで……」


「ま、待ってくれ! 俺、やっぱり、お前んに行くことにしたから、連れてってくれ! ……いや、連れていってください!!」


「うーん、そうだなあ、じゃあ、お互いの秘密を言い合おうか」


「は? なんだそりゃ?」


「お互いの弱みを知っていれば、いざという時に役に立つかもしれないでしょ?」


 うーん、たしかにこいつの弱みを知っていれば、いざという時に俺の側に引き込むことができるかもしれないな。


「よし、分かった。じゃあ、俺から言うぞ。コホン、えー、実は俺の体の中には今、俺とそこにいる5人の血が流れている」


「へえー、君は『兄妹契約』を結んだんだね。毎日、賑やかそうでいいね」


「そうか? 色々と忙しいぞ?」


「あははは、私にはそうは見えないなー。えーっと、次は私の番だね。コホン、うーんと、実は私、吸血鬼と悪魔のハーフなの」


「あー、だから、シッポがあるのか。ん? それってお前の秘密なのか?」


「うん、一応、魔王様と君にしか言ってないよー」


「俺が魔王ぐらい強いっていう実感はないんだけどな……」


「表面上はそうでも、君の体内には底知れぬ魔力を感じるから、間違いないよ」


「そうか……まっ、そんなことより、早く行くぞ」


「他の5人はいいの?」


「あー、ちょっと待ってくれ。今、確認す……」


 俺がルルナたちの方を見ると、全員が笑顔で親指を立てていたため、俺は一人でユミナの家に行くこととなった。


「あー、なんか許可が下りたから、今から行けるぞ」


「そっか。なら、行こうか。ほら、私の手を握って」


「え、あ……ああ」


 ユミナの手は……とても柔らかく……冷たかった。


「それじゃあ、私と一緒にポッピン、パタパタ、ポーン……って、言ってね?」


「えーっと、それ、なんの呪文だ?」


「私の家に行くための呪文だよ」


「どうしても言わなくちゃいけないのか?」


「うん!」


 ユミナの満面の笑み……ケンジは少しキュンとしてしまった。これにより、ケンジはユミナの言うことを聞かざるを得なくなってしまった!


「はぁ……分かったよ。一緒に言うよ」


「よろしい。それじゃあ、行くよー! せーのっ!」


「「ポッピン、パタパタ、ポーン!」」


 こうして、俺はユミナの家に行くこととなった。血を吸われないように気をつけないとな……。

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