来いよ!
その日の放課後……。異世界……。俺は昨日と今日でマリア・ルクスとアヤノ・サイクロンを妹にしたため、異世界にいられる時間が4時間くらいになった。(『兄妹契約』を無理やり結ばされた……)
異世界で特訓できる時間が増えたため、俺は放課後になると、ルルナたちと共に一時的に異世界へ転移し、モンスターを倒しまくっていた。
「そおりやああああああああああああああああ!!」
「グギャー!」
今日は『ダッシュリザード』をたくさん倒していた。戦闘能力は低いが、足の速さが半端ないため、遭遇した者たちのほとんどはその動きについていけずに負けるか……撤退することが多い。
しかし、4人の妹候補たちに『兄妹契約』を無理やり結ばされた彼は、そんな『ダッシュリザード』の動きを完全に捉え、かつ正確に拳を打ち込んでいた。
「えーっと、これで20匹くらいかな?」
俺がその辺でひっくり返っている『ダッシュリザード』を見ながら、そう言うと。
「ううん、25匹だよー」
銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女ルルナが呑気に歩いてくるなり、そう言った。
「お前もマキナたちみたいに一緒にモンスターを倒さないのか? ストレス発散にもなるぞ?」
「いや、いいよー。返り血、浴びたくないからー」
「いや、それは仕方ないだろ」
「あー、えーっと、私の苗字言ってなかったっけー?」
「ああ、知らないけど」
「じゃあ、言うねー。私の苗字は……『リキッド』だよー」
「なるほど、『液体』って意味か。ということはお前の得意な魔法って……」
「うん! 『水魔法』だよー!」
「やっぱりか。マキナ・フレイム。マリア・ルクス。アヤノ・サイクロン……そして、ルルナ・リキッドか。ん? ということは、残り一人は……」
「もちろん、闇魔法が得意な子だよー!」
「だろうと思ったよ。それで? 今日はこれで終わりなのか? 時間はまだあるんだろ?」
「うーん、そうだねー。じゃあ、試合するー?」
「試合?」
「そうそう、試合。お兄ちゃんがどれくらい強くなったのか、見極めるために、私たちが一人ずつ、お兄ちゃんと戦ってみようかなって」
それをどこから聞いていたのか、マキナとマリアとアヤノが俺たちの前に突如として出現した。
あー、これ、絶対やるやつだと俺は察した。
「あっ、ちなみに私たちの誰かに負けたら、お兄ちゃんは今日の夜、私たちと一緒の布団で寝ることになるから、気をつけてねー?」
なーんてことになりそうだなあ……ということも考えていた。
____試合会場は草原。
「さて、最初は誰かな?」
「じゃあ、まず私から行くよー」
「最初はルルナか。いきなりやばそうだな……」
「うん、強いよー。私のお母さんの次くらいに強いよー」
「そうなのか? 幼女母最強説が浮上したな」
「でも、実際、私はお母さんが戦ってるところなんて見たことないんだけどねー」
「ないんかい!」
「うん、ないよー」
ルルナの母親はルルナが前に通っていた学園の学園長である。
「はぁ……そうか。なら、さっさと始めようぜ。できるだけ早く帰りたいしな……」
「えー、そんなに私と一緒に寝たいのー? 困っちゃうなー」
「誰もそんなこと言ってないぞ……。よし、それじゃあ、やるか!」
「うん!」
____試合開始。果たしてその結果は……?
「ルルナ、大丈夫か?」
「お、お兄ちゃん、強くなったねー」
ルルナに手を貸しながら、そう言う彼は、けろっとしていた。
彼の圧勝である。ちなみに勝敗を決めたのは、デコピンであった。
「次は私とですね! お兄様!!」
赤髪ロングと緑色の瞳が特徴的な美少女『マキナ・フレイム』がそう言った。
「ああ、そうだな。お手柔らかに頼むよ」
「できるだけ、そうしますけど、手加減するのは難しいので、覚悟してくださいね!」
「ああ! さぁ、来い! 俺にお前の力を見せてみろ!」
「望むところです! はぁあああああああああ!!」
____結果。
「はぁ……はぁ……お、お兄様〜……つ、強すぎですよ〜」
「いや、なんかごめんな。俺、いつのまにか相手の属性が分かれば、それに対抗できる属性を付与させた状態で攻撃できるようになっちまったみたいだ」
「い、いえ、大丈夫です……。ではマリアさん、よろしくお願いします」
「はーい!」
元気な声で返事をしたマリア・ルクスは金髪ロングと赤色の瞳が特徴的な美少女……いや、美幼女である。
「それじゃあ、お兄さん。行っくよー!」
「おう! 来い!!」
____結果。
「もう! お兄さんはなんでそんなに強くなっちゃったのー!」
「いやあ、なんか体に受けた属性のダメージはそのまま俺の属性になっちまうみたいでな」
「それずるいよー、じゃあ、今の試合で私の光魔法もお兄さんは使えるようになったんだよね?」
「ああ、多分な」
「うーん、まあ、お兄さんが強くなることはいいことだから、別にいいけど……」
「けど?」
「分からないことがあったらなんでも訊いてね! 使えるのと使えこなせるのは全然違うから!」
「ああ、分かった。ありがとな、マリア」
「どういたしまして。それじゃあ、最後はアヤノさんだね」
「やっと、私の出番か! 覚悟しろよ! バカ兄貴! あたしは他の3人のようにはいかないぜ!」
「威勢はいいが、俺に勝てるぐらいの力はあるんだろうな?」
「あたしらは未成年だけどな! これでも各属性の頂点に君臨してんだよ! 甘く見んな!」
……未成年の中ではだけどな。まあ、いいか……。
「そうか……なら、見せてみろよ。お前の力」
「そんなの言われるまでもねえ! 行くぞ! バカ兄貴!!」
「来いよ! お前の全てを俺に見せてくれ!!」
____結果。
「はぁ……はぁ……はぁ……う、嘘だろ……めちゃくちゃ強えじゃねえかよ……」
「いやいや、お前も結構強かったと思うぞ?」
「あぁ? そりゃどういうことだ?」
「お前の風魔法はなんというか……その……嵐に近いやつだったから、一瞬驚いた」
「は、はは、そうかよ。でもな、バカ兄貴。それでもあたしの負けは変わらねえ。そんで、バカ兄貴があたしに勝ったから、最後の妹候補が明日、来ると思うから覚悟しとけよ?」
「ああ、それなりに準備はしておくつもりだ。お前の時みたいに校庭に穴を開けられちゃ困るからな?」
「な……! その話はもういいだろ! こら待て! バカ兄貴!!」
「待たねえよ〜、ほらほら、こっちだ〜」
「ちっ……! あたしらに勝ったからって調子に乗るなよ! バカ兄貴!!」
アヤノ・サイクロンが彼を追いかけ始めると、ルルナとマキナとマリアも彼を追いかけ始めた。
この後、彼が異世界に居られる時間ギリギリまで、彼女らはずっと彼を追いかけ続けていたとか、いないとか……。




