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理不尽だ!

 あー、どうしよう。俺、このままどこかに連れていかれちゃうのかな……というか、妹候補って、なんだよ……訳わかんねえよ。誰か説明してくれ……。

 俺がそんなことを考えていると、銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な『ルルナ』が俺の心を読んだかのように説明し始めた。


「そんなお兄ちゃんのために、妹候補の一人である私が特別にお兄ちゃんの使命を教えちゃうよー。拍手ー!」


 ルルナは一人でパチパチと拍手していたが、キリのいいところでやめると、咳払いをして説明を再開した。


「えーっと、まず何から話したらいいかなー? やっぱりお兄ちゃんの秘密について話した方がいいかなー? うーん、まあ、いいや。とりあえずお兄ちゃんがこれからしなければならないことを教えるね」


 なんか勝手に語り始めたよ、この子。そ、そうだ。今のうちに学校に行こう。早くしないと遅刻しちゃうしな。

 俺がそーっと自分の部屋から出ようとすると。


「あっ、言い忘れてたけど、お兄ちゃんは私と契約しないと、この家から出られないよ」


「残念だったな、出会って間もないやつの言うことを信じる俺じゃないのさ! さらば!!」


 しかし、俺がドアノブに手をかけた瞬間、全身に静電気以上の電流が流れた。

 そのせいで仰向けで倒れ、数秒の間、気を失ってしまった。意識が戻って、はっと目を覚ますと、パッと立ち上がり、ルルナにいつ攻撃されてもいいように両腕をクロスさせてガードを固めた。

 しかし、ルルナはやれやれとでも言わんばかりの顔をしていた……。


「それじゃあ、改めてお兄ちゃんがこれからしなければならないことを教えるね」


 大きなお世話だってんだよ、まったく。


「あと、分かってると思うけど、お兄ちゃんの心の声は全部私に聞こえてるから、私を怒らせないように……してね?」


 ルルナがそう言いながら笑みを浮かべたが、その表情から怒りを感じた俺は、ルルナの話を気をつけの姿勢で聞くことにした。


「そうそう、最初からそうしていればいいんだよー。お兄ちゃんは察しが悪いねー。コホン、それじゃあ、今度こそ説明するね。お兄ちゃんがこれからしなければならないことは……」


 俺は緊張して生唾をゴクリと飲んでしまったが、ルルナは話を続けた。


「私たちの世界の王様になることだよー」


「…………は?」


 俺は思わず、そんなことを言ってしまった。えーっと、俺の聞き間違いじゃない……よな? 俺が王様になる? どうしていきなりそんなことを……。

 ルルナは俺がものすごく考えているのを知っていながら、こう言った。


「動揺しすぎだよー、お兄ちゃん。まあ、いきなり王様になれなんて言われても、ぴんとこないよねー。それじゃあ、簡単に私たちの世界について説明するよー」


 また勝手に話を進めやがった。まあ、話を聞くだけなら、いいか。


「私たちが住んでいる世界では、魔王がぜーんぶ支配しててねー。正直、困ってるんだよー。なんかねー、人間の女の子にねー。無理やり自分の子どもを産まそうとしたりするから、魔族ばっかり増えちゃってる状況なんだよー。それでねー、それに対抗するために異世界から魔王と同等の力を持つ存在がいないか探してたんだよねー。そしたら、運良く、お兄ちゃんを見つけたってわけー。分かったー?」


 なんの話をしてるの? この子。あー、分かった。これドッキリだなー。どこかにカメラがあるんだろー? どこだー? どこにカメラがあるんだー? 悟りを開いたような顔でそんなことを考えていた時、ルルナはこう言った。


「ということで、お兄ちゃんには私たちの世界を救う旅に出てもらうよー。けど、しばらくここで生活してないと魔王軍の誰かが気づいて、この世界を支配しようとするから、冒険は一日、一時間ってところだねー。まあ、細かい説明は向こうに行ってから話すから、とりあえず私と兄妹契約しよっかー」


 ルルナは言いたいことを俺に伝え終わると、じりじりとこちらに近づいてきた。その時のルルナの全てが悪魔のように思えたが、歯を食いしばりながら拳を作ると、自分の意見を言ってみた。


「お、俺はお前の言うことなんか聞かないぞ! 俺はこの世界で普通の人生を送りたいんだ! だから、俺の人生を……日常を……壊すんじゃねえよおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 朝から近所迷惑だと思ったが、自分の人生が壊されるよりかはマシだと思い、自分の意見を口にした。しかし、ルルナは。


「あっ、そう。それじゃあ、このままお兄ちゃんを襲っちゃうけど、いいのー?」


「は? お前、いきなり何言って……」


「私と兄妹契約しないと、その遺伝子を受け継いだ存在に魔王を倒してもらうしかないからねー。けど、そうしちゃうと、お兄ちゃんは私と子作りするだけで用済みになっちゃうよー? それでいいのー?」


「は、はあ!? なんだそれ! 俺とお前がそ、その……子どもを作るだって!? 冗談じゃない! まだ手を繋いだこともない相手と作ってたまるか!」


「ふーん、そっかー。それじゃあ、お兄ちゃんを食べた私が魔王を倒すしかないねー。でも、せっかく出会えたんだから、初対面の女の子に血の一滴まで食い尽くされたくないよね?」


「……俺に選択の余地はないってことか……」


「そうだよー。さあ、早く選んでー。私と兄妹契約をして旅に出るか、今すぐ私と子作りして、その子に魔王を倒してもらうか、私に食べられるか」


「こんなのあんまりだ! 俺に拒否権をくれ!」


「ダメだよー。ビシッと決断しないと。それにもし、お兄ちゃんが今、私が言った項目以外のものを選んだら、この世界の存在そのものを消しちゃうからねー」


「……り、理不尽だああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 俺、これからどうすればいいんだ? 誰か教えてくれ……。というか、そんな力があるんなら、その力でさっさと魔王倒せよ……。あー、早く高校に行きたいなあ……。

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