誰が神殺しだ!
異世界から来たルルナの特訓によって、ツキノワグマを睨んだだけでビビらせることができるようになった俺は、日に日に強くなっていった。
ルルナの世界でポイズンスライムを素手で倒せることがわかったため、俺の世界にいる毒を持つ生物と俺は戦っていた。
虫、鳥、魚、トカゲ、クラゲ、コモドドラゴン等の毒を持つ生物と戦った結果、俺は完全に毒に対する耐性がついていることがわかった。
「なあ、ルルナ。俺ってさ、他の耐性はあるのかな?」
高校に登校している道中でルルナにそう訊くとルルナは。
「うーん、どうだろうねー。お兄ちゃんはたしかに強くなったけど、まだまだ強くなってもらわないと困るからねー」
俺はルルナの世界にいる魔王を倒すために日々、特訓している。
異世界にずっといると魔王軍の誰かが気づいて俺の世界を支配しに来るなもしれないから、俺が異世界にいられるのは一時間程度であとはルルナと一緒に普通の高校生活を送っている。
俺が強くなれるのはルルナがほぼ強制的に俺と結んだ『兄妹契約』のおかげである。
「そうだな。麻痺耐性とかないと困るよな」
俺がそう言うとルルナは俺の手を握った。そして、俺が反応するより先に猛スピードで走り出した。
「よいしょー!!」
ルルナは高校に着くと俺を学校の屋上に投げ飛ばした。もう飛ぶのに慣れてしまったな……。
俺はうまく屋上に着地すると、またもドアを破壊して屋上にやってきたルルナにこう言った。
「ちょっと強情すぎやしないか? というか、その手に持ってるのって……」
「うーん? スタンガンだけど何か問題あるー?」
いや、笑顔で言っても怖さが倍増するだけだからな。バチバチバチって、いわせながら近づいてこないでくれませんかね。
ルルナは俺の目の前で止まると俺の心臓めがせてスタンガンを当てようとした。
「おいおい、心臓を狙うのは反則じゃないのか?」
俺はルルナの手首を掴むとそう言った。
「お兄ちゃん、離してよ! これじゃあ、調教……じゃなくて、調査できないよー!」
「おい、ルルナ。お前、今なんて言ったんだ?」
「べ、別に何も言ってないよー」
ルルナは口笛を吹きながら、俺の顔から目をそらした。なるほど、自分は何も言ってないと……。そうですか。そうですか。なら、こっちにも考えがあるぞ。
「なあ、ルルナ。ちょっといいか?」
「な、なあに? お兄ちゃん。私に何か用?」
「まあ、あれだ。とりあえずスタンガンを渡してくれないか?」
「そう言って私に使うつもりじゃないよねー?」
「お前の手を煩わせたくないだけだ。ほら、こっちに渡してくれ」
「分かったよ、渡せばいいんでしょ、渡せば。はい、どうぞ」
「どうもありがとう。それじゃあ、やるか」
俺は自分の首筋にスタンガンの先端を当てるとスイッチを入れた。しかし……。
「あれ? 全然ビリっとしないな。なあ、ルルナ。これ、電池切れてないよな?」
「さっきお兄ちゃんも見たでしょー。電池は切れてないよー」
「そうだよな。じゃあ、麻痺耐性っていうか、電気に対する耐性はついたってことか」
「多分、そうだねー」
「えーっと、じゃあ、今日向こうに行った時にでも色々試してみようかな」
「色々ってー?」
「んー? だから、あれだよ。他にも火耐性とかあるのか試すってことだよ」
「うーん、じゃあ、今日はお兄ちゃんの耐性があるものとないものを調べに行こっかー」
「そうだな。おっと、予鈴が鳴ったか。行くぞ、ルルナ」
「うん、分かったー」
ルルナはちゃんとドアとドアノブを魔法で修復すると俺と一緒のクラスに向かった。
「じゃあ、お兄ちゃん。まずは『サラマンダー』を倒してみよっかー」
「学校が終わってすぐに異世界に来るとは思わなかったが、まあ、いいか」
俺は拳と拳を合わせると、こう言って、サラマンダーの方へ走り出した。
「行くぞ! サラマンダー! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
結果……。俺は無傷。サラマンダーは気絶。炎を口から出してくれたから、試しにそのまま突進してみた。
すると、その炎が火球になって俺の周りをふわふわと浮かんでいたため、それをサラマンダーの目に投げてみた。
すると、サラマンダーはあまりの痛みに失神してしまったのである。
「相手が放ったものは自分の武器として使える……か。まあまあ、いい能力だな」
俺が右手を開いたり、閉じたりしているとルルナがダッシュやってきて。
「お兄ちゃん、今のすごかったよー! どうやったのー!」
目を輝かせながら、俺の目の前でピョンピョンと飛び跳ねていた。
「まあ、落ち着けよ。俺にもよく分からないだから」
「えー? そうなのー? フ○アリーテイルの主人公みたいだったよー」
「いやいや、俺の異名はサラマンダーじゃないぞ。まだ名無しだぞ」
「うーん、じゃあ、今からお兄ちゃんの異名は『神殺し』ねー」
「誰が『神殺し』だ! 俺は聖○士星矢Ωの主人公じゃないぞ!」
「まあまあ、そんなに怒んないでよー。あっ、もう帰る時間だよー。お兄ちゃん、そろそろ帰ろうー」
「え? もうそんな時間なのか? なら、仕方ないな。そろそろ帰るか」
「うん!」
今日もモンスターを倒しただけだったような気がするけど、魔王は本当にルルナの世界を支配しているのか?
うーん、まあ、今は考えても仕方ないよな。俺はそう思いながら、ルルナと共に俺の世界に帰還したのであった……。