さあてやりますか!
魔王を倒すために特訓をすることとなった俺は高校に行く前に異世界から来た銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ』にしごかれていた。
「朝からこのメニューはきつすぎるぞ! もうやめてくれよ! ルルナ!!」
「ダメだよ! お兄ちゃん! 私を倒せるくらい強くならないと魔王なんて倒せないよ!」
「だーかーらー! 俺にはそんな力はないんだよ!」
「そんなことないよー、お兄ちゃんの体内に蓄積されている魔力は魔王のそれといい勝負だよー」
「だとしても、朝から20キロダッシュって、俺は自衛隊に入る気なんてないぞー! というか、お前はなんで飛んでるんだよ! 一緒に走れよ!」
「私は飛行技術を上げたいから、飛んでるだけだよー」
「そんなの不公平だああああああああああああ!!」
朝早くに叩き起こして、俺に何をするのかと思ったが、まさかこんなことになってしまうとはな……。トホホ……。
俺たちはこの後、普通に高校に行って帰ってくると、異世界へと転移し、再びルルナが通っていた学園へとやってきた……。
「あ、足が悲鳴を上げているよおおおお! な、なあ、ルルナ。今日は早く帰らないか? 明日も走るんだろ?」
俺が両足の痛みに耐えながら、ゆっくりと歩いていると俺のペースに合わせて歩いてくれているルルナがこう言った。
「お兄ちゃんの体は同じトレーニングをすると弱くなっちゃうから、明日はまた別のトレーニングをするよー。そうだねー、ナイアガラの滝にでも行って、滝行するー?」
「なあ、ルルナ……水圧って言葉知ってるか?」
「大丈夫、大丈夫。お兄ちゃんなら、耐えられるよー」
「『兄妹契約』をお前と結んだからか?」
「よく気づいたねー。じゃあ、ついでに伝えておくよー。コホン……えーっと、私と契約したことでお兄ちゃんの体は鍛えれば鍛えるほど強くなれる体になったから、今のままでも、その辺のモンスターは普通に倒せるくらいにはなってると思うよー」
「そう……なのか? 全然、実感ないんだけど……」
「最初はそんなもんだよー。それじゃあ、今日は『モンスター狩り』に行こうかー」
「体調が優れないので、参加を辞退させていただき……」
「お兄ちゃんに、拒否権なんてないよー?」
笑顔でそう言うルルナの顔からは妙な威圧を感じたため、俺は。
「すみませんでした。それでは参りましょう」
そう答えるしかなかった……。俺、結婚したら、こんな風に嫁の尻に敷かれるんだろうなあ……。なんてことを考えながら、俺たちは『モンスター狩り』に行くこととなった。
____学園近くの草原。
「えーっと、こいつを倒せばいいのか?」
「うん、そうだよー。『ポイズンスライム』だよー」
「なるほど。紫色のスライムだから、毒を持っているということだな。それで? 毒耐性のない俺にどうやって戦えと?」
「うーん、そうだねー。とりあえず殴ってみてー」
「なるほど、死ねと仰るのですね。分かりました、では早速……って、そんなことできるかー! 序盤で殺そうとするなー!」
「大丈夫だよー。20キロダッシュを耐えた体なら、毒だって耐えられるよー」
「どういう理屈なんだよ……。いくら体を鍛えても、毒は効くんだぞ……」
「大丈夫だってー。ほら、騙されてたと思って、試しにやってみてよー」
「……くっ! よ、よし、お前を信じるぞ! ルルナ! うおおおおおおおおおおおお!!」
俺は『ポイズンスライム』の方へ走っていくと、俺を攻撃しようとジャンプした、それを拳で殴って吹っ飛ばした。
「見たか! ルルナ! これが俺の力だ!!」
俺はルルナを指差しながら、そう言った。そんな俺の行動の一部始終を見ていたルルナはパチパチと拍手をしながら、こう言った。
「わー、すごいね、お兄ちゃん。びっくりしたよー」
ぼ、棒読みかよ!? まあ、ルルナからすれば、ポイズンスライム程度はどうってことないってことか……。はぁ……道のりは長いな……。
お兄ちゃん、すごいなー。ポイズンスライムを直接殴ったりなんかしたら、普通は即死なのに……。やっぱり持ってるねー、お兄ちゃんは。
「え、えーっと、とりあえず、今日はこれで終わり……」
「何言ってるの? お兄ちゃん。この世界のスライムの類は群れで行動するんだよ? 一匹倒したら、群れ単位で突っ込んでくるよー」
「……へ、へえ、そうなのかー。じゃあ、俺はこの辺で失礼して……」
「お兄ちゃん? 分かってるよね?」
今日、ルルナのこの顔見るの2回目だよ。何なんだよ、その威圧を感じさせる笑顔は……。この子、こんな恐ろしい子でしたっけ?
「ほら、お兄ちゃん、いっぱい来たよー」
俺が振り向くと、ポイズンスライムがうじゃうじゃやってきていた。
俺は拳同士を合わせると覚悟を決めてこう言った。
「さあてやりますか!」
こうして俺は『ポイズンスライム』の群れを倒していったのであった……。
レベル?が結構上がったため、その日は早々に俺の家に帰って寝た。
次の日の朝の特訓はツキノワグマとの一騎打ちになっていたため、死にかけた……というのは嘘で、そいつは俺が少し睨むと、山の中へと一目散に逃げていった……。
ルルナの言っていたことは、どうやら本当のようだ……。俺はめちゃくちゃ強くなってしまったようだ……。