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待っていたぞ!

 夏休み最終日……魔王城……魔王の間……。


 現在、魔王(主人公の実の弟)と主人公の戦い……いや兄弟喧嘩が繰り広げられている。


「あちゃー。これはもう誰にも止められないねー」


 ユミナ(黒猫形態)がそう言うと。


「ううん、大丈夫だよ……。だって、この世界に魔王なんて最初からいないもの……。この世界を支配しているのは魔王じゃなくて……この私……『ルナ・アンリミテッド』なんだから……」


 銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ・リキッド』……いや『ルナ・アンリミテッド』がそう言った。


「……ルルナちゃん。とうとう思い出してしまったんだね……。この世界が君の『やり直し』の力によるものだってことを……」


「うん、残念ながらね……」


「それじゃあ、またやるの? あの二人が仲良くなれるように君はまた同じことを繰り返すの?」


「ううん、もうそんなことはしない。あの二人にはもう『やり直し』を使えない。だから……ここで倒す」


「ルルナちゃん……いや、ルナちゃん。別に無理しなくていいんだよ? 神様にもできることとできないことがあるんだから……」


「ううん、私、やるよ。この世界を救うために……。たとえ、それがこの世界を終わらせるようなことになっても……」


 ルルナ・リキッド……改め、『ルナ・アンリミテッド』は銀髪ショートではなく銀髪ロングになると、宙に浮き、白いドレスをまとった。

 そして、未だに戦っている二人に向けて、その力を解き放った。


「全てを貫く我が槍よ、今こそ、その力を我の前に示せ……。『無限の真紅槍インフィニティ・クリムゾン』!!」


 ルナがそう言うと無数の真紅の槍が彼女の周囲に出現し、彼らの方に飛んでいった。

 その時、二人はニシッと笑った。


「この時を……!」


「ずっと待っていたぞ! ルルナ!!」


「……?」


 二人はその無数の真紅の槍を華麗にかわすと、二人で魔力砲をぶちかました。


『いっけえええええええええええええええええ!!』


「こ、こんなもの……!」


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 負けて……たまるかああああああああああああああ!!』


「くっ……! どこからそんな力が……!」


『やり直しなんて、もうさせない! だから、おとなしく、消し飛べええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!』


「神であるこの私が負ける? いや、可能性は充分にあった。しかし、この世界以外の世界では実現しなかっただけ……ということか……」


『俺たちは……絶対に……元の世界に……帰るんだああああああああああああああああああああああ!!』


 二人の魔力砲が彼女の魔力障壁を破壊すると、そのまま宇宙の彼方まで飛ばしかけた。

 しかし……。


「間に合えええええええええええええええええ!!」


「お兄ちゃん!? いったい何を!」


「最初から知ってたよ! お前が俺の弟のために俺をこの世界の揉め事に巻き込んだことも、お前が神だってことも! けど、俺は……! それでもお前のことを……本当の……家族だと思ってるんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 彼はルナ……いやルルナに手を伸ばした。

 バッドエンドで終わらせるわけにはいかない。

 誰一人として、死なせやしない。

 もうやり直しなんてしなくてもいい。

 ただ、となりで笑ってくれるだけでいい。

 死ぬ直前までそばにいてほしい。

 彼にとっての彼女はそう思えるほどの存在になっていた。

 それは義理の妹としてではなく、ましてや家族としてでもなく、純粋に彼女を一人の女性として愛することを決めた、彼自身の本当の気持ちだった。

 これが最後なんてことはありえない。

 まだ帰れない。

 こんなところじゃ、終われない。

 俺たちの本当の居場所はここじゃない。

 けど、俺たちはもうその場所を見つけていた。

 俺たちの……本当の居場所……それは……。


「お願いだ! ルルナ! 俺とずっと一緒に居てくれえええええええええええええええええええええ!!」


 彼女は涙を流しながら微笑えむと、彼の手をギュッと握った。


「……うん、ずっと一緒だよ……。お兄ちゃん……」


 抱きしめ合った二人は、白き光に包まれた。

 そして、その光は世界を照らした……。

 さぁ……帰ろう……俺たちの本当の居場所に……。

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