絶対に許さないぞおおおおおおおおおおおお!
夏休み最終日……魔王城……魔王の間……。
「……来たか」
魔王の間で待ち構えていた魔王(主人公の実の弟)は彼の気配を察知したのか、そんなことを言った。
その直後、彼は現れた……。
「まずは城の外にいた僕の軍をどうやって倒したのか教えてもらえるかな? お兄ちゃん」
扉をぶっ壊して中に入ってきた彼は、こう言った。
「そんなの隕石でドカーン! と一発かましてだけで終わったぞ? 正直、物足りなかった」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。今の僕は僕に仕えていた幹部八人分の魔力を……」
「解除……」
「なっ……!」
「転送……」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 最後まで言わせてよ!」
しかし、もう遅かった。魔王に取り込まれていた八人は魔王の中から出てきて、どこかに転送された。
「あいつらはあいつらの故郷に送ったから、二度とここには帰ってこないだろうよ」
「……許さない……」
「あ?」
「絶対に許さないぞおおおおおおおおおおおお!」
魔王は怒った。そして、その膨大な魔力を象徴するかのようなオーラを体から放出した。
「ふん、その程度か……。はぁあああああああ!!」
彼は魔王のそれよりもすごい大きさのオーラを体から放出した。
「この短期間の間に、どうしてそこまで強くなったんだよおおおおおおおおおお!!」
「それを今からお前の体に叩き込んでやる! 覚悟しろよ! 魔王!!」
両者は激しくぶつかった。
打撃……打撃……嵐のような……打撃……徐々にその勢いとパワーが増していく……打撃……。
どこまでも……どこまでも……加速する打撃……。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「はぁああああああああああああああああああ!!」
兄弟対決はまだ終わらない。
というか、まだ始まったばかりだ。
お互い、体力は有り余っている。
どれだけ相手に拳を放とうと、まだ何も起こらない。
その直後、ルルナたちが魔王城に到着した。
そして、彼らの戦いを見届けていた。
「……お兄ちゃん」
銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ・リキッド』は小さな声でそう言った。
「僕が偽りの魔王として、この世界に君臨している間に、お兄ちゃんはあんなやつらに油を売っていたのか!」
「はぁ!? こっちは魔王を唯一倒せる存在だからって言われて、こっちの世界の揉め事に巻き込まれたんだぞ!」
「そんなの知らないよ! 僕をすぐに倒しに来なかったお兄ちゃんが悪いよ!」
「なんだと! もう一回言ってみろ!」
魔王とそれを倒す者の戦いというより、兄弟喧嘩が始まった……。
「だいたい、お兄ちゃんが悪いんだよ! 僕をろくに探してくれなかった!!」
「探したさ! けど、異世界にいるなんて、予想できるわけないだろ!」
「予想してよ! その前に地球の大陸を全部、探したの!」
「そんなことできるわけねえだろ! 許可がないと上陸できないところだってあるんだぞ!」
「そんなの知らないよ! 僕はこの世界にいる時間の方が長いんだから、そんなこと知ってるわけないでしょ!」
「じゃあ、なんで俺のところに……俺たちの家に帰って来なかったんだよ! 俺たちはずっとお前のことを待ってたんだぞ!」
「うるさい! うるさい! うるさい! お兄ちゃんに僕の何が分かるのさ!」
「何にも分かんねえよ! けど、お前が辛い思いをしていたことだけは分かる! だから、俺たちの家に帰ってこい!」
「そんなこと今さらできるわけないでしょ! 僕は魔王なんだよ! この世界の支配者にして、悪魔たちの王なんだよ! そんな僕がこの世界からいなくなったら、誰がこの世界を支配するの!」
「支配なんかしなくていいだろ! というか、お前の役目は今日で終わりだ!」
「そんなこと絶対にさせない!」
「いーや、絶対に終わらせてやるよ! そんでもって、今日中にお前を家に連れて帰る! 言っておくが拒否権はないぞ!」
「そんなの僕が認めるわけないでしょ! よく考えてよ! お兄ちゃん!」
「お前こそ、さっさと目を覚ませよ! 魔王なんか辞めちまえ!!」
この喧嘩はこの後……数時間続いた……。