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ちょっと待ったあああああああ!

 夏休み最終日……魔王城近くの森……。


「カナミ、あれが魔王城なんだな?」


「ああ、そうだ。忘れるわけねえよ」


 白い猫耳と白髪ロングと黒い瞳と白いシッポが特徴的な美少女『カナミ・ビーストクロー』はそう言った。元魔王の幹部が言うのだから、間違いない。


「まあ、ここまで一ヶ月と少しかかったわけだが、その間にお前はさらに強くなったよな」


「ああ、そうだな。けど、本当に勝てるかどうかは、まだ分からない」


「まあ、そうだろうな。なにせ、現魔王の本気がどれくらいのものかなんて誰も見たことねえから、対策のしようがねえ」


「ああ、まったくだ。というか、魔王城の外にいるのって……」


「ああ、お察しの通り、魔王軍だよ。まったく、歓迎されてるのかされてないのかよく分からないな」


「けど、あれくらいなら、隕石を落とすくらいでなんとかなりそうだ」


「おい、ちょっと待て。隕石を落とすのはやめろ。私もいるんだぞ?」


「大丈夫だ。俺から離れなければ何とかなる」


「おいおいおいおい、待て待て待て待て。そういう問題じゃなくてだな」


「すまん、もう呼んだ」


「え?」


 その直後、魔王軍は巨大な隕石により、全滅してしまった。

 その爆風はこちらまでやってきたが、彼の魔力結界の中にいるものや人はその影響を受けなかった。


「よし、行くぞ」


「ちょっと待ったあああああああ!」


 カナミは彼の前に両手を広げて、立ち塞がった。


「カナミ、お願いだから退いてくれ。お前を傷つけたくない」


「そんな脅し、私には通用しないぞ!」


「そうか。じゃあ、ここでお別れだ」


 彼は一瞬で彼女の背後に移動すると、後頭部にチョップをした。


「……カハッ!」


「悪いな、カナミ。今までありがとう。お前のことは忘れない」


 彼はそう言うと、地面に倒れたカナミの頭を撫でた。

 そして、敵地へとおもむいた。


 *


 ユミナの屋敷……ユミナの寝室……。


「お兄ちゃん……どうして私たちに黙って魔王城に行っちゃったの?」


 銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ・リキッド』はユミナのベッドの上でそんなことを言った。

 すると、いつもは猫に変身しているユミナが人の姿で寝室に入ってきた。


「……ユミナちゃん」


「ねえ、ルルナちゃん。本当に行かなくていいの?」


「うん、いいんだよ。これで。お兄ちゃんが私たちを置いていったのは私たちがいなくても大丈夫だって、思ってのことだから」


「ねえ、ルルナちゃん。それ、本気で言ってるの?」


「……え?」


「君たちのことが必要じゃなくなったから、黙って魔王城に行ったって、本気で思ってるの?」


「そ、それは……」


 ルルナがそう言うとユミナ(本来の姿)はルルナの襟首をつかんだ。


「私はね、決めたんだよ。ケンジくんが魔王を倒すまでずっと一緒にいようって、なのに君はずっとここにいる。本当にそれでいいの? ねえ、ルルナちゃん。私は次、どうすればいいのかな? 教えてよ。ルルナちゃん……いや、ルルナ・リキッド!」


 ルルナは下唇を噛むとユミナを吹っ飛ばした。


「……私に……説教するな!!」


「おっとっと……。すごい力だね……」


 ユミナはそう言いながら、受け身をとった。

 ユミナはゆっくり立ち上がると、彼女の目を見た。


「分かったよ。行くよ……。今から行くよ! 魔王城に行くまで、どれくらいかかるかは知らないけど、それでもお兄ちゃんの戦いを見届けに行くよ! この屋敷内にいるみんなを……そこまで連れて行くよ!!」


「うん、それでこそルルナちゃんだよ。それで? 私に何かできることはないかな?」


「じゃあ、魔王城まで最短で行くにはどうしたらいいか教えて」


「うん、いいよ。けどまあ、元魔王の幹部である私なら、ここから一瞬でそこに行けるけどね」


「そう……。なら、早くみんなを呼んできて。あと、今から魔王城に乗り込むから、準備は手短に済ますように伝えて」


「うん、いいよ。けど、君の思いはちゃんとみんなに届いてるよ」


 その直後、寝室に入ってきたのは屋敷内にいるルルナとユミナ以外の人たちだった。


「そっか……。私のことをずっと待っててくれたんだね。それじゃあ、行こう! 魔王城に!」


『おー!!』


 こうして、ルルナたちは魔王城へと向かうことになった……。

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