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うそだろ!

 はあ……はあ……はあ……。半径十五メートル以上離れると死ぬって……ハードル高えよ……。

 どうしてこんなに疲れているのかって? まあ、『兄妹契約』っていうのをルルナと結んだ副作用で半径十五メートル以上、俺がルルナから離れると死んでしまうらしいから、そうならないように特訓しようとルルナが提案したせいだ。

 異世界に来て全力疾走するとは思わなかったが、まあ、いいトレーニングにはなったんじゃないかな?

 俺が息を整えながら、そんなことを考えているとルルナが笑顔でこちらにゆっくりと降下してきて、ストッと着地した。(ルルナは飛べる)


「なかなかいい走りだったよー。お兄ちゃん。でもお兄ちゃんって、帰宅部じゃなかったっけ?」


「まあ、今はそうだな。けど、俺は中学時代『ソフトテニス』部に所属していたんだ。ちなみに、その時の二つ名は『恐れを知らぬ者(ドレッドノート)』だ」


「へえ、そうなんだ。でもイメージしづらいねー」


「ボールを無我夢中に追いかける姿を見たどっかの学校の生徒が考えたらしいけど、まあ多分、負ける恐ろしさを知らない者って、言いたかったんだろうよ」


「そうかもねー。それじゃあ、お兄ちゃん。用も済んだし、今日はこの辺で帰ろっかー」


「んー? あー、そういえばそうだな。よし、帰るか」


「うん!」


 俺は魔王を倒せる力を持っているらしいが、実感はない。それに異世界にずっといると、魔王軍の幹部や関係者が気づいて、俺の世界も支配しに来てしまう恐れがあるため、俺が異世界に居られる時間はあまり長くない……。


「たっだいまー!」


 ルルナの声が頭に響いた直後、俺の家の屋根裏部屋に戻ってきたのを知った俺は、すかさずルルナにこう言った。


「おいおい、向こうは昼だったけど、俺の世界は今、夜なんだぞ? もう少し静かにしろよ」


「お兄ちゃん! ごめんなさい! だから、私のこと嫌いにならないでー!」


 銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ』は俺に抱きつきながら、泣き始めたため。


「あー、もう、別に俺は注意しただけだろー? そんなに泣くなよ」


 ルルナは目尻に涙を溜めながら、こちらを見ると俺にこう言った。


「じゃあ、頭撫でてー! じゃないと私……私……」


「はぁ……分かったよ。ほら、よーしよし。ルルナはいい子だなー」


「んふふ〜♪」


 俺がルルナの頭を撫でてやると、すぐに笑顔になった。こいつが犬だったら、絶対シッポを振ってそうだな……。

 ルルナはもう大丈夫だろうと頭を撫でるのをやめようとすると、また泣き出しそうになったので、それか

 ら数十分の間、俺はひたすらルルナの頭を撫で続けていた……。正直に言おう。さすがに疲れた……。


「ねえ、お兄ちゃん」


「んー? なんだ?」


 俺たちは屋根裏部屋の床に座ると、望月を観ながら、話し始めた。(満月のこと)


「お兄ちゃんはこれから魔王を倒すために色々しなくちゃいけなくなるけど、大丈夫?」


「大丈夫かって、『兄妹契約』を結ぶためとはいえ、俺の血を一度全部吸ったお前に心配されるとはな」


「もうその話はよしてよー! 恥ずかしいからー!」


「ははは、ルルナは可愛いなー」


「ふえっ!? い、いきなりそんなこと言っちゃダメだよ、お兄ちゃん。今よりもっと好きになっちゃうよー!」


「そうなのか? それはすまないことをしたな」


「まあ、冗談なんだけどねー」


「ははは、なんだよそれー」


 ここで一時、会話が自然と途切れた。なんかこういうのって、あれだよな。恋人同士が愛を確かめ合うシーンに入る直前のシーンみたいだな……。

 俺がそんなことを考えていると、ルルナが俺の手を握ってきた。

 俺はそれに反応して、ついルルナの顔を見てしまった。その時のルルナの顔は月明かりに照らされているのか、すごく輝いていたし、なんだが、色っぽく見えた。


「……ねえ、お兄ちゃん」


 たったそれだけの言葉を聞いただけなのに、俺の脳内は混乱しかけていた。

 エロゲの展開でこういうのあるよね……。そんな感じにあくまで自分は客席から観ている側ですよーという暗示を自分にかけようとした。しかし……。


「お兄ちゃん……聞いてるー?」


 脳みそがとろけてしまいそうな甘く優しい声は俺の脳内をさらに混乱させていく……。


「あ、ああ、聞いてるぞ。どうかしたのか?」


「あのね、お兄ちゃん。私ね……」


 ルルナが徐々に俺の方に迫ってくる。俺は回避するためにゆっくりと蜘蛛くも歩きを始めた。

 しかし、ルルナは人間の動きかどうかも怪しいくらいに、スススーと俺に接近してきて、その膨らみかけの胸を俺の胸に当てると、頬を赤く染めながら、こう言った。


「私……お兄ちゃんと一緒に……寝たい……な」


 ルルナはそう言うと、力尽きて眠ってしまった。どうやら、ルルナは眠くなると色っぽくなるらしい。童貞の俺には少々刺激が強すぎた……。


「……可愛い寝顔だな」


 俺はルルナを俺のベッドに寝かせると、ルルナの頭を優しく撫でながらそう言った。


「んふふ〜、お兄ちゃん。くすぐったいよ〜」


 にやけ顔で寝言を言うルルナは一瞬、とても幼く見えたが、ルルナは俺とほとんど身長が変わらないから幻覚だと気づいた。(三〜四センチくらい俺の方が高い)


「さあて、明日はどうなるんだろうな」


 俺がそう言うと、ルルナは寝言で。


「明日からお兄ちゃんには、十キロダッシュより辛いトレーニングをしてもらうから、覚悟してねー♪」


 さらっとやる気が無くなるようなことを言ったため、俺は家の窓を全部、閉めるとこう叫んだ。


「うそだろおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

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