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サイコパス魔王!

 夏休み……ケンジの家……ケンジの部屋……。


 銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ・リキッド』と黒いドレスと黒い翼と黒髪ロングと紫色の瞳が特徴的な美少女……いや美幼女『クロエ・ドロップアウト』はケンジの体を使って会話をしている赤目の魔王の話を聞いている。


「つ、つまりあなたは、お兄ちゃんが魔王にならないようにお兄ちゃんの代わりに魔王をやってたってこと?」


 ルルナがそう言うと魔王(ケンジの実の弟)はこう言った。


「うん、そうだよ。そうしないと、僕なんかよりものすごく強いお兄ちゃんが魔王になっちゃうからね」


「で、でも、今のお兄ちゃんは……」


「たしかに今のお兄ちゃんでは、僕には勝てない。けど、それは時間の問題なんだよ」


「どういうこと?」


「お兄ちゃんには、リミッターが十個あってね。それが全部、解除されたら僕が何人いても勝てないくらいの力を出せるようになってしまうからだよ」


「そ、そのリミッターは今、どれくらい外れてるの?」


「まだ一つしか外れてないよ。けど、一つ外れたってことは残りのリミッターも外れる可能性があるってことだから、少しまずい状況なんだよね……」


「そ……そんな。それじゃあ、そのリミッターが全部、解除されたらどうすればいいの?」


「そうだね……。僕もそうなってほしくはないけど、もしもの時は……お兄ちゃんを殺すしかないね。どんな手を使ってでも」


「それしか方法はないの?」


「ない。けど、ある」


「ど、どういうこと?」


「今はないけど、もう少ししたら、その方法が見つかるかもしれないってことだよ」


「少しいいか?」


 クロエは魔王にそう言った。


「うん、いいよ。なんだい?」


「魔王……いや、田村たむら 健吾けんご。お前は私たちに何かを頼みに来たのではないのか?」


「うん、そうだよ。よくわかったね」


「まあな。それで? お前は私たちに何をしてほしいのだ?」


「そうだね。まあ、ストレートに言うと……お兄ちゃんの前から消えてほしいってことかな」


「それはどういう意味だ?」


「言葉通りだよ。今後、一切お兄ちゃんと関わるのをやめてほしいってことだよ」


「そんなことできるわけな……」


 クロエは腕を真横に伸ばして、ルルナに忠告した。それ以上、言うな……と。


「そうか……。では、私たちがそうすれば、お前は実の兄を殺さずに済むということだな?」


「そこまで読まれてたか……。まあ、実際そうなんだけどね……」


 ルルナは彼の言葉に……そして彼の笑顔に対して怒りを抱いていた。

 クロエの忠告を守れば、ケンジは殺されずに済む。しかし、今ここで何も行動を起こさなければ、義理の妹として……人として大切な何かを失ってしまう……そんな気がした。

 だから、彼女は彼にこう言った。


「ふざけんなよ……」


「ん? 何か言った?」


「ふざけんじゃねえよ! 実の兄貴を自分の手で殺すために異世界から来ただと! お前の頭はどうなってるんだよ! 長い間、魔王っていう役を演じてたせいで、頭まで魔王になっちまったんじゃねえのか? お前が世界をぶっ壊そうが、女といちゃいちゃしようが知ったこっちゃねえけどな! ……私の……私たちの優しくて、かっこよくて、強くて、可愛くて、面白くて、お人好しで、面倒見のいい、世界でたった一人しかいない兄貴をお前なんかに殺させやしねえよ! 分かったか! サイコパス魔王!」


 クロエはルルナが急変したのと、魔王に対して宣戦布告したのに、驚きを露わにしていた。

 クロエは、冷や汗をかきながら、魔王の方を見た。

 すると、魔王はニヤリと笑っていた。


「……君、名前は……?」


「ルルナ……リキッドだ」


「リキッド……。そうか……あのロリッ娘の娘か。通りであいつの血の香りがするわけだ」


「とことんキモいな。お前、本当に兄貴の弟か?」


「はっはっはっはっは! 君……いや、ルルナは面白いな。僕にそんなことを言うやつなんて今までいなかったよ」


「だろうな。だって、お前は仮にも魔王だ。逆らったら殺される。それくらいの存在だって思われても仕方ねえ」


「まあ、そうだね。というか……魔王である僕を敵に回しておいて……生きていられるなんて思ってないよね?」


「それは百も承知だ。というか、こうなる可能性は少なからずあった……そうだろ?」


「ああ、そうだよ。だからさ、ルルナ・リキッド。僕を敵に回したことを後悔させてやるから、首を洗って待ってろよ?」


「いや、私はその前にお前の首を取りに行くから、それをする必要はねえよ」


「言わせておけば……! いいか! 魔王である僕を敵に回したということは、魔王軍に所属しているやつらを敵に回したということなんだぞ! お前はそれでもいいのか!」


「ああ、別に構わねえよ。兄貴を殺しにわざわざ異世界までやってきたお前の軍なんざ、朝飯前だ!!」


「その言葉、覚えておくぞ。ルルナ・リキッド。しかし、お前がいくら命乞いをしようと、この体の持ち主は必ず殺すからな」


「そんなことさせねえよ。だから、とっとと失せろ!!」


「ふん、今に見てろよ。きっと後悔するからな」


 魔王はそう言うと、ケンジの体の中から出ていった。

 その瞬間、ルルナはヘナヘナと座り込んだ。

 クロエが近くに行くと、えーん、えーんと大きな声で泣き始めた。

 クロエはルルナが恐怖という感情を表に出さないようにしていたのを理解すると、ルルナをそっと抱きしめる、彼女が泣き止むまで優しく頭を撫でていた……。

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