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魔王!

 夏休み……俺の家……俺の部屋……。


「なあ、クロエ。まだ終わらないのか?」


「ああ、まだだ。もう少し待ってくれ」


「いや、でももう三十分くらい経ってるぞ?」


「う、うるさい。お前の体の中にあるパワーアップした五属性の力に刺激を与えないように隅々まで調べるのは容易ではないのだ。文句を言うな」


 黒いドレスと黒い翼と黒髪ロングと紫色の瞳が特徴的な美少女……いや美幼女『クロエ・ドロップアウト』は俺にそう言った。


「はいはい、分かりました」


 俺はベッドに横になった状態でクロエに抱きつかれている。

 わざわざこんな体勢になる必要はないんじゃないかとクロエにこうと思ったが、これ以上話しかけたら、怒られそうだと思ったため、断念した。

 ____それから三十分後……。


「よし、もういいぞ」


「……そうか。やっと終わったか。じゃあ、退いてもらっていいか?」


「そ、それはダメだ」


「え? なんでだ?」


「お前がその……ルルナと……キ……キスをしていたからだ」


「いや、それと何の関係があるっていうんだよ」


「はぁ……お前は乙女心が分からないのか?」


「おいおい、俺はこれでも五人の義理の妹の兄貴なんだぞ? 乙女心が分からないわけないじゃないか」


「そうか……。では私がなぜお前に抱きついているのか分かるか?」


「いや、それは分からないな」


「即答か……」


「なんだよ、悪いかよ」


「いや、いた私がバカだった。今のは忘れてくれ」


「そうか、わかった……。それで? お前はいつまでこうしてるつもりなんだ? そろそろ、晩ごはんの時間なんだぞ?」


「う、うるさい! 私がいいと言うまでこうしてい……」


「お兄ちゃーん! ごはんだよー! 早く来てー!」


 その声が聞こえた瞬間、クロエの顔は真っ青になった。


「おー、今行くー。ほら、行くぞ。クロエ」


「あ、あああああ、そうだな。そうしよう。いや、そうするべきだ」


「クロエ、大丈夫か? なんか顔色が悪いぞ?」


「そ、そそそそそ、そんなことはない。は、ははははは、早く行くぞ」


 クロエはそう言うと俺の手を握った……。

 その時、俺の中に何かが入ってきた


「……ク……ロエ。俺から……離れろ」


「ん? どうしたんだ?」


「い……いいから、離れろ!」


 俺はクロエを突き飛ばした。


「おい! いくらなんでも突き飛ばすことないだろう!」


 その時、クロエは目の前にいる彼が彼ではないことに気づいた。

 クロエは目の前にいるそいつを睨むと、闇の力を体にまとわせた。


「お前、何者だ」


「…………」


「答えろ! お前は誰だ!」


 そいつはニシリと笑うと、赤い瞳を輝かせながら、こう言った。


「……お前は誰だ……か。まあ、別に名乗れない理由はないから教えてあげるよ。僕の名前は……」


 その時、銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ・リキッド』が彼の部屋に入ってきた。


「お兄ちゃん……いや、魔王! お兄ちゃんの体を乗っ取るなんてどういうつもり!!」


「ひどい言われようだね。僕はただ、この体を借りているだけなのに……。でも、懐かしいな、この感じ」


「そんなことはどうでもいい! なんで異世界にいるはずの魔王がお兄ちゃんの体の中に入ってるの!」


「魔王である僕に対して、そんなことを言うなんて……君、命知らずだね」


「い、いいから早く、私のお兄ちゃんから離れ……」


「私のお兄ちゃん……だと? 嘘をつくな! この体の持ち主は僕の実の兄なんだぞ!」


「そ、そっちこそ、嘘つかないでよ! お兄ちゃんに弟なんていな……」


 その時、ルルナは思い出した。彼には五才離れた弟がいて、今でも行方不明だということを……。


「そ、そんな……魔王が……あなたが……お兄ちゃんの弟だっていうの?」


「ああ、そうさ。僕の名前は『田村たむら 健吾けんご』。今は魔王をやっている者さ」


「そ、そんな……嘘でしょ……? なら、なんで今まで私たちの世界にいたの?」


「その前に一つ確認しておきたいことがある。お兄ちゃんは交通事故で僕たちの両親は死んだ……。そう言ってなかった?」


「え? あー、うん、そうだけど……。それがどうかしたの?」


 そっか。やっぱり記憶を書き換えられてたんだね。


「実はね、それをやったのは僕なんだよ」


「……え?」


「僕がやっと歩き始めた頃、それは起こってしまった。家族みんなでドライブしている時、僕の中の大きな力が暴走したんだ」


「そ、そんな……じゃあ、なんでお兄ちゃんだけ助かったの?」


「それはね、お兄ちゃんの中にある膨大な魔力がお兄ちゃんの体を守ったからだよ。まあ、僕はそのあと、とある悪魔に君たちの世界に連れてこられて、魔王になってしまったんだけどね……。けど、お兄ちゃんは僕なんかよりすごい力を持っているから、お兄ちゃんが次の魔王にならないように、僕はずっと魔王という役を演じてきたんだよ……」


 それを聞いたルルナとクロエはしばらく動けなかった……。

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