な……に!
夏休み……黒しかない空間……戦闘中……。
『どのような手段を用いても、お前は俺を倒せない』
「はぁ? なんでそう言い切れるんだよ!」
『それは……俺がお前だからだ』
「何? どういう意味だ」
黒い体と赤い瞳が特徴的な俺は、攻撃をやめると五属性の力を身に纏っている俺にこう言った。
『白と黒……光と闇……正義と悪……。世の中は相反するもので溢れている。そして、今の俺とお前もそれの同類だ』
「つまり、俺とお前は表裏一体だと言いたいのか?」
『まあ、そういうことだ』
「そうか……。けど、それは俺がお前を倒せない理由にはならないんじゃないか?」
『本当にそうか? よく考えてみろ。もし、相反するものの内、どちらか片方でもこの世に存在しないとしたら、どうなる?』
「それは……残ったもう片方が自分の居場所を広げようとするんじゃないか?」
『まあ、それも一つの答えだな。しかし、俺の考えはこうだ。どちらか片方がこの世から消えた瞬間、もう片方もこの世から消える』
「おいおい、それはいくらなんでもあり得な……」
その時、俺の頭の中にバランスを崩してしまった天秤が思い浮かんだ。
「ちょ……ちょっと待て……。それじゃあ、俺がお前を倒したとしても、俺もお前と一緒に死ぬってことか?」
『ああ、そうだ。だから、お前は俺を倒せない』
「そんなのって……そんなのってありかよ!」
『どちらかが死ねば、どちらとも死ぬ。よくある話だろ?』
「いや、だとしても、俺はそんな結末にはさせない……というか、させてたまるか!」
『ほう、なら、いったいどうするというのだ? この空間から出るには、どちらかが倒されなければ出られないのだぞ?』
「そんなことわかってる! けど、このままじゃ、嫌なんだよ!」
『ほう……ならば、お前の考えがまとまるまで一時休戦としよう』
「ああ、そうだな。こんな状態で決着をつけたら、後味が悪くなるからな……」
しかし、黒い俺は、俺に攻撃を仕掛けてきた。
「な、何すんだよ! さっき一時休戦って言ったじゃねえか!」
『ほう、俺がそんなことを言ったのか。しかし、残念だったな。俺は敵を倒すためなら、手段を選ばない主義なんだよ』
「へえ、そうかよ。けど、今ので思いついたよ。俺とお前のどちらともが助かる方法をな」
『ふん、そんなものあるわけないだろう。もしあったとしても、お前がそれを実行するには、あと十年はかかる』
「おいおい、勝手に人を分析するんじゃねえよ。けど、お前のそういうところ、昔の俺みたいで少し懐かしいよ」
『ふん、何を呑気なことを言ってるのだ。もうすぐ死ぬのだぞ?』
「さぁて……それは……どうかな?」
黒くない方の彼がそう言うと、黒い方の彼がものすごいスピードで彼に接近し、心臓を貫いた……かのように思えた……。
『な……に!』
彼は、五属性の力で心臓を貫こうした彼の右手を体内で固定した。
「わかってたよ。お前が俺にとどめを刺すなら、ここを攻撃してくるだろうって……。だから、俺はあえてお前の攻撃を受けたんだよ」
『なぜだ! お前は俺を倒すのではなかったのか!』
「そうだな……。最初の方はそう思ってたよ。けど、お前を倒しちまったら、今までの俺を否定するみたいで嫌になったんだよ。だから、俺はお前を倒さない」
『な、何をバカなことを言っているのだ! お前には、五人もいる義理の妹と使い魔とその他もろもろの存在がいるのだぞ! それに魔王を倒すこともできなくなるのだぞ!』
「ああ、そうだな。けど、俺は一度もお前と一緒に死ぬなんて言ってないぞ?」
『何? では、これからどうするというのだ?』
「そんなの決まってるだろ……」
黒くない方の彼は、黒い彼をギュッと抱きしめた。
『は、離せ! こんな形で終わるのはごめんだ!』
「ああ、俺だってごめんさ。だから、こうするんだよ!」
その時、黒くない方の彼の心臓に突き刺さっていた右手が黒くない方の彼の体に吸収され始めた。
『ま、まさかお前……!』
「ああ、そうだ。俺はお前と一つになる。そうすれば、どっちも生き残れるだろう?」
『……だ、だが、それでは俺という存在が消えてしまうではないか!』
「いや、お前は消えないさ。なぜなら、お前は俺でお前は俺だからだ」
『そ、それはつまり……!』
「ああ、そうだ。お前は俺のもう一つの人格として、俺の中に居座れるってことだ」
『……そうか。よし、わかった。では、共にさらなる高みを目指そうではないか!』
「ああ、約束だ……」
こうして、俺は全ての試練をこなしたのであった……。




