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その44・まだまだ甘えんぼ

「また太ったね」

「にー」

「わたしは太ったんじゃないよ、背が伸びたの」

「にー、にー」


 両腕にずっしりと、みぃちゃんの温かさが伝わります。それとぶよぶよのぜい肉も。


 私が肉をつまみながら揺らすと、おばあちゃんが言いました。

「おじいちゃんが隠れてごはんあげとるからなあ」

「おばあちゃんがあげるのやめたらいいのに」

「みぃちゃんにごはんあげるのは私の役目や」

「そのおじいちゃんは?」

「近所のヨガ教室に行っとるわ」

「ヨガ!」


 知らなかった。こんな田舎にそんな教室が出来てたなんて。

「みぃちゃんも通えばいいのに」

 そう言いながらまたみぃちゃんの肉をつまんで、やっぱり落ち着く畳の部屋に行きました。

 みぃちゃんが畳をバリバリ引っかいた部屋です。

 さすがにもう落ち着いてきたし、そんなこともみたいだけど。


「障子が」

「いや、やったんはおじいちゃんや」

 掃き出し窓の、真っ白な障子がひとつ破れていました。

 ぽっかりと空いた穴は、ガラス越しに畳を明るくしています。

「おじいちゃんがヨガのポーズでよろけてん」

 みぃちゃんは「にー」と「わたしじゃないよ」と言ってるみたいでした。


「みぃちゃんはいい子にしとるで」

「にー」

 私は嬉しくて顔をくしゃくしゃにしてみぃちゃんに近づけると、みぃちゃんも鼻をくっつけてきました。


「ところで、なんでみぃちゃんなん?」

「え?」

「にーにー言うから、にぃちゃんて、みんな言ってはるわ」

「あー、何でだったけ。忘れた」


 困った。確か、お父さんの好きな『猫耳ミク』から取ったんだっけ。


 私はお父さんから渡されたお土産を開けて、おじいちゃんを待つことにしました。

 お土産は『祈祷戦士カミダノム』のザクザクまんじゅうでした。

 イベントで大量に買ったって言ってたっけ。


 ザクザクして美味しいけど、チョコチップなのでみぃちゃんにはあげれません。

 欲しがっているみぃちゃんの顔を手で覆いながら食べていると、おじいちゃんが帰ってきました。まっさきに気づいたのはみぃちゃんでした。


「ただいまみぃちゃん」

 おじいちゃんはみぃちゃんに「にーにー」言われて、頭をなでました。

「何や、来とったんか」

「来てたよ、おじいちゃん」

 みぃちゃんは「ごはんちょうだい」とおじいちゃんにすり寄ります。

「さっきあげたからもうあげんといて!」

 おばあちゃんに咎められて、おじいちゃんは寂しそうな顔をしました。


「いつまでおれるの?」

「二週間くらいかな」

「よかったわ、いつも寂しそうにするからな」


 ときどきおじいちゃんの家には来るけど、みぃちゃんは私が帰ったあと、ずっと外を眺めているそうです。

 私を待っているみたいに、探しているみたいに、しばらくの間は寂しそうに静かになるんだとか。

「みぃちゃんはまだまだ甘えんぼだもんね」

「にー」


 私は、会えないぶんも込めてみぃちゃんの背中をゆっくりなでました。

 みぃちゃんは私の膝の中にすっぽりと収まって丸くなっています。


 背中からしっぽまでつるんとなでると、気持ちよさそうに目を細めて、ころんとひっくり返りました。ちっちゃかったときと全然変わらない。重さ以外は。


 私はおじいちゃんの家の匂いと、みぃちゃんの匂いを胸いっぱい吸い込みました。


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