その三
久しぶりに母親に呼び出され、夕方遅くに帰ってきたフリットは酷く機嫌が悪かった。
フリットは母が嫌いだ。
ついでに伯父も、父のいないところで父の悪口を言うから大嫌いだ。
祖父が存命の時には、母の実家へ行くのはそれほど嫌ではなかった。しかし今はお腹がきりきり痛くなるほど嫌だ。
母はやたらと浮かれていて、大嫌いなサディル・ヘーベルトがもうすぐフリットの義父になるのだ、などと平気で口にしていた。
「絶対なりません。母上だけ勝手に嫁にいけばいいでしょう? 僕はフリット・ドゥ・ガレットです。」
「何を言っているの? 成人前の子どもが、母親の意向に逆らえるとでも思っているのかしら?」
ロレッタは顔をしかめて、フリットの言葉を鼻で笑った。
だからフリットも鼻で笑い返してやった。
「母親? 母親らしいことなんか一度もしたことがないのに? じゃ、ぼくの誕生日言えますか? 侍女に聞かないと覚えていないんでしょ?」
それ以上はばかばかしかったから、さっさと一人で帰ってきた。
子どもだからってバカにするな、とこの上ないほど腹が立っている。
十一歳の子どもだって、未亡人は一年は喪に服すものだと知っている。まして行方不明なだけで死んだと決まったわけでもないのに、再婚話に浮かれているなんて。
なぜあんな最低女が母なのだろう、とフリットは運命を呪った。
歩いて屋敷に帰ってきたら、今度は喪装の準備を派手にしている光景が目に飛びこんできた。
黒いリボンや花飾りの注文を受けにきた業者が、見本を持って応接間を陣取っていて、待たせているマリアルド王女は、豪奢な黒いドレスとヴェールの見本を嬉々として眺めている。
まだ十日しか経っていないというのに、父が戻る期限までは二十日もあるのに。
腹立たしさは増すばかりだ。
そして子ども部屋に入ると―――ミーシアがしょんぼりと泣いていて、グレーテが青い顔で背中をさすっていた。
フリットに気づいたグレーテが、たいへんなの、と叫んでフリットに抱きついてくる。
「どうした? まさかまたルーシエか?」
ミーシアは首を横に力なく振った。
「兄さまじゃないの! それならわたしがフリットの代わりにぶっとばせるんだけど! ミーシアのお母さまから手紙が来たのよ‥!」
グレーテはフリットの胸に顔を埋めて泣いている。
「まさかミーシアも‥この屋敷を出て、こっちへ来いって話か?」
「え? フリットもそう言われたの?」
グレーテは顔を上げ、不安げに顔を歪めて叫んだ。
ミーシアはゆっくりと振り向いて、うなずくフリットをじっと見る。そして震える声で絞り出すように続けた。
「‥‥縁談があるって言うの。ここを出ろというのは一緒だけど、わたしは母さまの屋敷じゃなくて‥成人するまで婚約相手の屋敷にお世話になるようにって‥。」
「縁談‥? はあ、何だよ、それ? 意味解んねえ!」
びっくりしすぎて、つい砕けた物言いになってしまった。
「それだけじゃないわ、フリット! その縁談の相手って、何人も奥さんがいる、うーんと年上の人なんだって! 父さまがいてくれたら、許すわけないのに!」
グレーテは悔しそうに唇を噛んだ。
そこでとうとうフリットの、あまり長いとは言えない堪忍袋の緒がブチ切れた。
「どいつもこいつも‥最低のクズ女ばっかりだ! よし、決めた! ミーシア、明日この屋敷を出よう。」
「え? 出てどうするの‥?」
「俺たちで父上を探しに行くんだよ! 父上が死ぬもんか‥きっと何か、帰ってこられない事情があるんだよ。‥‥おかしいと思わないか? こんなに誰も彼もが死んだっていいはるなんてさ? 父上は何か卑怯な罠にはめられたんだ。それはきっと、俺たちの母親たちも絡んでいるに違いないよ‥。何が貴族だ! 平民出身だって、父上は誰よりも高潔で立派だった! あんな腐った連中、貴族じゃなくて外族だ!」
「ゲ‥ゾク?」
グレーテが首を傾げる。
「外族って‥何かヘンだけど、言いたいことは解るわ。‥‥フリット、わたし、ついていくわ! あんな人たちにいいように使われて、父さまの悪口を聞かされ続けるなんて耐えられないもの。それくらいなら死んだほうがまし。」
ミーシアの青ざめた頬に血の色がうっすらと戻った。
「わたしも! わたしもついてくからね、置いていくなんて言わないで、フリット!」
グレーテが兄の首にぶら下がって、必死な顔で頼み込んでくる。
本音を言えば、王都の外へ出られるのか、更に妹二人を守れるかどうかフリットにも自信はまったくなかった。だがそれでも、この屋敷に置いていけばもっと危険だと彼の直感が警告している。
「よし。じゃあ明日、三人で出発しよう。貴族を捨てて、昔の父さまみたいに魔獣ハンターになろう。そして父さまを探す。‥まずは準備だ。」
三人は真剣な顔でうなずき合い、額をつき合わせて作戦を練ることにした。
翌日の朝食後、三人の少年少女は難なく屋敷を抜け出た。
屋敷を出る時は、出入りする商人たちの横にくっついて、一人ずつ堂々とした顔で出る。そしていちばん近くの広場の噴水前で無事に落ち合う。
こんな大雑把な計画にも関わらず、なぜかすんなりうまくいった。
関心を持たれずいつも放っておかれているだけあって、特に専属の侍女も護衛もいないし、今までも夕食時にいればたいてい叱られることもなかったので、まだ気づかれる心配もない。何が幸いするか解らないものである。
服も同様に、女の子たちはいつも抜け出る時に身につける、なるべく地味な外出着にケープ。それから肩掛け鞄という出で立ちだ。
フリットは乗馬服の上下に、剣の練習用のブーツと、祖父から貰った大事な剣を背中に担いだ。
荷物は肩に掛けた背嚢に、貯めておいた小遣いと母の部屋から持ち出した宝石類をいくつか入れた。あとは着替えがひと組。
女の子たちはそれぞれ肩掛け鞄にやはり少しばかりの小遣い金、ハンカチ、下着の替え。それからミーシアが魔術教本と地図、グレーテが魔道具にした水晶玉のペンダントとお気に入りの『勇者』と『賢者』の物語絵本だ。
そして三人の指にはお揃いの、父から貰った大切な加護の指輪が填っている。
三人は子どもばかりで目立っているのも気づかず、まずは王都の東門から出発する乗合馬車の停留所へ向かった。
しかし東門から出る馬車は早朝のうちに出てしまって、明日にならないと出ないという。
フリットは少しの間考えていたが、よし、と元気よく歩き出した。
妹二人は兄のあとを急いで追いかける。たまりかねてグレーテが訊ねた。
「どうするの、フリット?」
「西門から出る十時の馬車に乗っていこう。まだ十分間に合うし、ついでに西の広場で揚げパンでも買うか。」
「でもっ、父さまがヒュドラと戦ったのは東よ?」
グレーテは声をひそめて疑問を口にする。ミーシアもうなずいている。
フリットは歩きながら、やはり小さな声で答えた。
「うん。でも考えたんだけど、父上は東にはいないよ、たぶん。いるならとっくにサディルたちに探し出されているはずだ。」
フリットは兄の言葉を思い出していた。
『そんな化け物と僕たちの父上はさ、たった一人で援護もなしで戦わされたんだからさ‥。すぐに戻れないほど重傷を負って動けないか、ご自分の意志で姿を消したのか。』
あの時は頭にきていて冷静になれなかったけれど、騎士団を実質仕切っているのがサディル・ヘーベルトならば、たぶん見つけ次第殺すつもりなのだろうと今ならば解る。
昨日の母親の、あのはしゃぎよう。思い出せば吐き気がするが、あれで解った。
たぶん父はヒュドラと相打ちで死ぬ予定にされていたのだ。でもうまくいかなかった。
当然だ、あんな卑怯者どもに真の『勇者』たる父が殺られるわけがない。
でも帰ってこられない理由がある。それはきっと黒幕がサディル個人ではなくて、もっと大物で、父は国や騎士団から今は逃げているところなのだ。
父には転移の術がある。
だから捜索される危険のある、東の村近辺ではなく、遠い場所へ行っただろう。
そしてフリットの直感、ルーシエ言うところの野生の勘は、西へ向かえと告げていた。
しかしフリットは、自分の推測を詳しく妹たちに説明するつもりはなかった。
妹たちは、ミーシアの最低な縁談話で『勇者』の娘というモノがどう扱われるかを知り、ひどく落ちこんでいる。そんな中で父がどうやら国に命を狙われているなどと知れば、もっと衝撃を受けるだろう。
「父上は重傷を負って、転移の術できっとヒュドラから遠く離れた場所へ飛んだんだよ。騎士団はきっと信用できなかったんだ。ルーシエが言ってただろう? 腰抜けばかりだって。」
「だから‥東の反対の西へ行くの?」
そうだ、とフリットはグレーテの頭を撫でながらうなずく。
「俺の直感では父上は西にいると思う。西の街道沿いに今日中に行けるところまで行って、そこで魔獣ハンター組合に行こう。登録して、お金を手に入れなくちゃ行けないし‥。父上が生きていればきっと、何かしら噂になっているはずだ。」
フリットの落ち着いた説明に、妹二人は目を輝かせた。
長兄にはすぐにバカバカ言われるけれど、全然そんなことはない。まるで大人みたいにしっかり考えているのだな、と二人は次兄を尊敬の目で見上げる。
何だかすごく頼もしい。旅もこれなら大丈夫だという安堵感が胸いっぱいにあふれてきて、すっかり安心した気持ちになった。
しかし二人はもちろん、フリットもまだ知らなかった。
魔獣ハンター組合に正登録できるのは十二歳以上であり、十一歳二人と八歳の子ども三人では、ハンター登録はできないということ。それどころか子どもだけでは、宿屋でも宿泊拒否されるかもしれない、という世の中の常識を。
それは無情にも夜になると判明するのだった。
とっぷり日暮れた頃、乗合馬車は目的地ペンスに到着した。
ペンスは西部の最大領、ルシュデール伯爵領の領都である。王都には及ばないが、たくさんの人が行きかう大きな街だ。
そこで三人は、子どもだけでは宿泊できない事実を知り、途方に暮れた。
説明してくれたのは乗合馬車の馭者で、初老の真面目そうな男だった。彼はなぜ子どもだけでこんな遠くへ来たんだ、と訊ねてきた。
それにはグレーテがうるうると涙を溜めた瞳で、説明した。
「あたしたち、父さまのところへ行くのよ。父さまは仕事で遠くに行っていて、怪我をして動けないみたいなの‥。」
母親はどうした、身なりがいいのだから召使いがいるだろう、としごくまともな質問をしてきた馭者に、グレーテは両手で顔を覆い、わっと泣き出した。
「わたしたち、お母さまはいないの‥。使用人たちには見捨てられて‥‥。父さまだけが頼りなの、それに心配で心配で‥。」
すっかり泣き落とされた親切な馭者は、自分がいつも泊まる安宿に連れて行ってくれた。
行商人や農民、一般のハンターなどあまりお金を持っていない平民が利用する宿で、借りられたのはベッド二つの、剥きだしの薄い板壁が目につく粗末な狭い部屋が一つ。
それでも三人は野宿にならなくて良かった、と心の底から安堵する。
馭者の男は更に、自分は明日にはまた乗合馬車を馭して王都へ戻らなければならないからと、宿の女主人に三人の事を頼みこんでくれた。
「明日は早朝の出発だからな‥。ここでお別れだが、三人とも気をつけて行くんだよ。ハンター組合には胡散臭い連中もいるから、油断しないように。」
「おじさん、ほんとうにありがとう! おじさんが親切にしてくれたこと、絶対忘れないわ!」
グレーテの天使のような頬笑みに、馭者の男は相好を崩した。それから手を振って部屋の前で別れた。
部屋に落ち着くとさっそく、三人は会議を始めた。
「明日も街道のもっと先へ行く馬車へ乗るの?」
「そうしたいんだけど‥。乗合馬車は出ていないんだ。都合良くそっちへ行く商人とかいればいいんだけど‥。」
それなら、とミーシアが手を打ち合わせた。
「この街のハンター組合に行けば、きっと父さまの噂も一緒に探せるし、そちら方面へ行く人の情報も集まるかもしれないわ。」
「なるほど!」
翌日の予定が決まったところで、今度は夕食をどうしようかという話になった。
馬車に乗る前に揚げパンを買っておいたおかげで、そこまで深刻ではないが、空腹ではある。
そこで宿の受付に戻り、女主人に夕食をどこで食べられるかと訊いてみた。
「‥‥一人あたり銅貨一枚。部屋で待っていれば持っていってあげるよ。」
女主人はちらりと三人を見遣ると、少し躊躇った後でそう答えた。
部屋で食べられるのは助かる、とフリットはほっとした。妹たちを連れてこんな夜更けに外へ出なければならないのは少し困ると考えていたからだ。
柄の悪い連中に絡まれたら返り討ちにする自信はあるけれど―――口の上手い輩にころりと瞞される自信も同じくらいある。
フリットはすぐに銅貨三枚を出すと、お願いします、と頭を下げ、妹たちを連れて部屋へ戻った。
「揚げパン買ったおつりの銅貨がもうなくなった‥。銀貨で払うとイヤな顔されるし。どこかで銅貨に換えられないかな?」
部屋で所持金を確認しながら、フリットがぶつぶつ言うと、ミーシアが自分の鞄の中を探って銅貨三枚を取り出した。
「わたしも三枚しかないけど‥。使って。」
グレーテが心配そうに兄姉の顔を覗きこむ。
「お金、足りないの? わたしも少しはあるよ。」
取り出そうとした末妹をとどめて、フリットは説明した。
「大丈夫、お金はまだ十分だ。思ったよりいろいろ安いし‥。そうじゃなくて、銅貨、小銭が少ないんだよ。」
フリットは妹たちにお金の説明をする。
銅貨一枚で一シル。屋台の揚げパンなら五個入りがひと袋買える。
今夜の夕食一人分も一シル。ちなみにこれは宿泊客だからで、食事だけなら二シルになる事実はフリットも知らない。
宿代は一部屋なので五シル。
銅貨十枚、十シルは銀貨一枚にあたる。
更に銀貨十枚で小金貨一枚。単位が換わって一ギリオン。
小金貨二十枚で大金貨一枚、二十ギリオン。
その上には見たことがないが、白金貨というのがあって、これは百ギリオンだそうだ。
今日使ったのは、屋台の揚げパン二袋、宿代、夕食代でちょうど銀貨一枚分。
あと水を詰めた革袋、一つ四シルで二つ買った。これはまた詰めれば水筒代わりに使えるので奮発した。水筒は一つしかないが、水は一人ずつ持っていた方がいいからだ。
最後に馬車の乗車賃が、子どもなので三人で大人二人分、銀貨二枚。乗り心地は激しく悪かったけれど、安い。
フリットの持ち出した所持金は小金貨五枚、銀貨十五枚。
今日一日でざっくり銀貨四枚分だが、この分ならすぐにハンターの仕事にありつけなくても、何日かの猶予はある。
宿に泊まれば一人あたり小金貨一枚くらいかかるのでは、と考えていたフリットにとっては、嬉しい誤算だった。
「明日、ハンター組合に行って、銀貨を銅貨に交換して貰えないか訊いてみよう。」
そこへ女主人が食事を持って来てくれた。
「はいはい、坊ちゃん方。そこのテーブルを広げて。」
テーブルなどどこにあるのかと思えば、窓際に立てかけてある折りたたみ式の台のことらしい。
ぎこちない手つきでフリットが何とか広げると、彼女は右手に持っていたお盆をどんと置いた。それから左手の籠をお盆の隣に置く。お盆には肉と野菜のたっぷり入ったスープのお皿が三つ、籠には薄く切った黒パンが六切れ盛られていた。
「食事が終わったら、部屋の外へ出しといておくれ。自分で下へ持ってこなくていいからね。‥‥いいかい、あたし以外の誰かが入ってこようとしたら断るんだよ? 無理に入ってくるヤツがいたら大声出しな。解ったね? 解ったら返事!」
特に大柄でもない普通の女性なのに、やけに迫力がある。
勢いにはあっけなく気圧されて、三人は神妙な顔ではい、と返事する。
すると彼女はにっこり微笑んで、いい子だ、とうなずいて出ていった。
「えっと‥何だろう?」
ぽかんとしたフリットにミーシアが微笑んだ。
「心配してくれたのだと思うわ‥。いい人ね。」
「でも、つまり、誰かが入ってくるかもしれないってことかな?」
「そういうことになるわね。」
眉をひそめた姉の顔をじっと見ていたグレーテのお腹が、ぐう、と盛大に鳴った。
三人は思わず吹きだし、誰からともなくいただきます、と手を合わせ、スプーンを手に取った。
その晩。
三人がぐっすり眠っていると、いかにも胡乱な風体の二人の男たちが部屋の前にやってきた。
「子どもだけで旅してるとは、不用心なこった。」
「上等な服を着てるし品がいいから、貴族か金持ちの子どもに違いねェ。行方不明の父親を探してるとかってェ話だから、攫ったところで文句も出ないだろうよ。へへ。」
二人はにんまりと下卑た笑いを浮かべると、ドアの隙間に針金を突っこんで、慣れた手つきで閂を外し、静かにドアを開けた。
ぐっすりと眠っている子どもたちの方へと足を進めた途端、いきなり何かに襟首を掴まえられ、すごい力で二人は窓から放り出された。
部屋は三階。当然ながら無事ですむわけもなく。死ななかったのが儲けものくらいの怪我を負い、結局朝になって衛兵に尋問され、捕縛された。
その晩は同じような目に遭った連中が三組八人いたという。
彼等は知る由もなかったが、彼等を窓から放出したのはグレーテの召喚した守護ゴーレムである。
「ノックなしで入ってくるヤツは放り出しちゃえ!」と命令されていた。
むろん普通は八歳児が呼び出せる類のものではなく、更には術者が寝ているのに動けるとかなどあり得ない。グレーテの魔力量が半端なく甚大であるからこそ可能なのだが、そんな世間の常識にはまったく疎い三兄姉妹だった。
翌日、宿で三人で一シルの朝食をすませ、朝食代を払うついでにとりあえずもう一泊を前払い予約した。今夜の夕食と明日の朝食まで含めて、ちょうど銀貨一枚である。
「毎度あり。」
銀貨を受け取りにっこり笑った女主人にハンター組合の場所を訊ねると、彼女はちょうど出立しようとしていた若い男を呼びとめ、案内を頼んでくれた。
頼まれた男は二十を過ぎたばかりだろうか。腰に剣をぶら下げて革の鎧を身につけている。女主人が言うには、そこそこ実績のあるハンターだそうだ。
最初は子どもばかりが組合に何の用だと言わんばかりに、面倒臭そうな顔をしていたけれど、例によってグレーテのうる目付き『お願い』で、三人が行方不明の父親を探していると解ってからは親身な態度に変わった。
「そうか‥。この稼業じゃよくある話だが、運が良ければきっとどこかにいるだろう。ちなみにおまえらの父さんの名前は?」
イズペリと名乗った彼に訊ねられて、グレーテが『ソ』と言いかけたところをフリットが慌てて口を塞いだ。
「ええと‥。名前はちょっと‥。言えないんですけど。」
ミーシアが困った顔で正直に言うと、少し驚いた様子でイズペリは声をひそめた。
「‥‥訳ありか?」
「はい‥。ほんとに親切にしていただいているのに、ごめんなさい‥。名前を言うと父さまが危ない目に‥。」
「ああ‥。なんか解った。前受金かなんかで揉めてるんだな、よくある話だ。そっかそっか‥それで逃げてきたわけだ、なるほど‥。」
何だかわからないがイズペリの脳内では新たな物語が出来上がったらしい。
痛ましそうな顔でミーシアを見ると、彼女の頭をぽんぽんと撫でた。
「こんな可愛い顔しているんだもんな‥。売りとばされそうなのも無理はない。うん、よく逃げてきたな、おまえら! 偉いぞ!」
『売りとばされそう』『逃げてきた』という単語が、ミーシアに自分の切羽詰まった事情を思い出させた。
そうだ、自分は母に売られたのに違いない。しみじみと実感がこみあげると同時に、もしも父を見つけられず、連れ戻されたら、と思い至って、ぞっとした。
「父さまに会えなければ‥わたし、連れ戻されて‥‥うう。」
涙がぽろぽろこぼれてくる。
「泣かないで、ミーシア‥!」
ぎょっとしたイズペリの前で、今度はグレーテが泣き出した。
「おい‥泣くなって! 父上‥じゃなかった父さんは絶対生きてるから!」
慌てて妹たちを宥めようとするフリットも、少し泣きそうだ。
「おいおい、頼むよ。まいったな‥。解った、俺がおまえらの父さんを一緒に探してやるから、泣くなって!」
お人好しのイズペリ。
実は陰でそんな二つ名を囁かれている彼は、子どもの涙に慌て、つい見通しのない約束をしてしまった。
内心で厄介な事になったと深い溜息をつく。
しかしまさかこの縁が、国家的大事に発展するとは今はまだ露も知らないイズペリだった。
ハンターの仕事は、ピンからキリまである。
キリは薬草採集や食肉の確保など常時買い取りが決まっているような仕事、それから増えすぎた獣や魔獣の間引きなど日常生活で頻繁に発生するような仕事だ。難易度によって初心者ハンターから中堅ハンターまでが請け負っている。
ピンは村落や領主からの依頼で、人命や経済活動に多大な損害をもたらす強力な魔獣や盗賊を退治するような派手な仕事。
むろん危険なので、危険度と請け負うハンターの実力や実績のバランスが考慮される。複数のハンターでチームを編成するのが普通だから、メンバー構成なども審査対象だ。
また討伐だけではなく事前調査のみの依頼もあるらしく、いずれにしても成功すれば高報酬はまちがいないそうだ。
「だがそれはランク持ち以上の話で、一般のハンターには関係ない。」
ランクとはS、A、Bの三種類で、ランク持ちとなるにはそれぞれの階級レベルの依頼を十回以上こなし、他に攻撃能力、防御能力、知識と判断力などの実地試験に受からなければ授与されないらしい。残りはすべて一般ハンターとなる。
ランク持ちハンター、いわゆるランカーになるには、まずはB級依頼―――日常的な仕事の中で少し難度の高いもの―――を安定してこなせるようにならなければいけない。
規定件数のB級依頼を達成すると、Bランク受験資格がもらえる。そして次はA級依頼を安定してこなせるようになると、Aランクの受験資格が取得できる、というふうな段階方式になっているらしかった。
特別な能力がなくても、時間をかけて努力すればAランクまでは何とかいける。だが、Sとなると他人にない特別な能力持ちでなければ実際には無理なのだ、とイズペリは説明した。
領主の依頼だとかになれば最初からランカーにしか声はかからないと言う。
「更にその上の、街や領国が壊滅するような天災級の魔獣はめったに出ないし、出たとしてもこの国ではハンターに討伐依頼は来ない。『勇者』さまのお仕事だから。」
三人は『勇者』の言葉になんとなくもじもじした。
「天災級って‥たとえば、どんなの?」
フリットがおずおずと訊ねる。
「そうだな‥。ついこないだは、東のログランド伯爵領でヒュドラが湧いたって聞いたな‥。ヒュドラなんて天災級を通りこして伝説級だけどな。」
「伝説級!」
三人の声が揃ったのを受けて、イズペリはハハっと笑った。
「心配しなくても、湧いて二日で『勇者』さまと騎士団がきっちり斃したそうだぜ?」
騎士団も戦ったことになっているのか、とフリットは驚いた。ルーシエの話じゃ、奴らはいつも見ているだけのはずだ。
―――騎士団って‥! 無能、腰抜けのくせに、手柄だけは横取りかよ! 最低だ!
声に出さずに騎士団にしきりに悪態をついているフリットの心中など、もちろん知らないイズペリは、ちょっとはにかんだような笑みを浮かべた。
「『勇者』さまかぁ‥。一度でいいから戦っているところを、この目で見てみたいよな。‥なあ、知っているか? 『勇者』と『賢者』はこのルシュデール領の出身なんだそうだぜ? 」
え、とミーシアは首を傾げた。
「中央のリュドミラ領出身ではないのですか‥?」
リュドミラ領はミーシアの母アンシアの出身地だ。出身領の領主の娘だから嫁入りしたとミーシアは聞いていた。
「リュドミラは、ハンターとしての本拠地で、ほんとうの出身地はこっちなんだって。もっとも正確にはルシュデール領内から外れた、更に西の辺境の村の出身だそうだけど。」
「そ、それって、どこですか!」
また三人の声が揃った。
「え? いや‥名前までは知らないけど?」
はああ、と三人揃って大きく溜息をついている子どもたちを見て、イズペリは不思議そうな顔をした。
「えっと、おまえら。父ちゃん探してるんだよな? 『勇者』の出身地が関係あるのか?」
ハッと気づいて、目を見合わせ、フリットが大きくうなずいた。
「そ、そうなんだ‥。父さんが‥‥そのう、そう、今度行くのは『勇者』に‥関係がある場所だって言っていたから‥‥。」
苦し紛れの言い訳だが、イズペリはあっさり信じた。
「なるほどな‥。だからはっきり場所が判らなかったんだな、うんうん。」
―――いい人だ。
三人の声は、心の中でまたもきっちり揃った。
ハンター組合の建物に入ると、イズペリは三人を連れて案内係のカウンターヘとまっすぐ向かった。
「ほら、ここが案内係だから。おまえらが聞きたいことはこのお姉さんに聞きな。」
「イズペリさんは?」
グレーテが見上げると、イズペリはグレーテの頭を撫でて、
「俺は自分の用をすませに、ちょっと二階へ行ってくるから。おまえらは用が済んだら、あそこの椅子に座って待ってろ。自分たちだけで無茶すんじゃねえぞ、な?」
と、言い聞かせた。
グレーテはすっかり懐いたようで、兄姉の返事を待たず、はーい、と元気よく答えた。
フリットとミーシアは顔を見合わせ、どちらからともなくうなずき合う。
行ってらっしゃーい、と大きく手を振るグレーテに、まんざらでもなさそうなイズペリは手を振り返して軽快に階段を上っていった。
「それでご用件は何かな、君たち?」
案内嬢のお姉さん―――イズペリがお姉さんって言ったので、お姉さんなのだろうが、一見、彼等の母親くらいの年齢に見える。
そのお姉さんの言葉に、フリットは真面目な顔で訊ねた。
「あの。俺たち、ハンターに登録したいんですけど‥。」
「ハンターになって、父さまを探したいの!」
背伸びして横から顔を出したグレーテが、口をはさむ。
まあ、と驚いた顔をしたお姉さんは、すぐに冷静になって、ハンター資格条件を説明してくれた。
「十二歳以上‥。じゃ、駄目なのか。」
「あら。お兄ちゃんも十二歳になっていないの? 十三、四くらいかと思ったわ。」
「!!」
しまったと思いながらフリットは、しぶしぶ十一だと答えた。
「十歳から十一歳は、実力があると認定されて、成人ハンターの後見付きでのみ、活動を許されるのよ。」
「後見付き? それって何?」
「保護者よ。たとえば親が子どもを連れていく場合とかね。責任を持ってくれる大人が同行するならいいってこと。」
お姉さんは丁寧に説明してくれた。そして続ける。
「でも聞いた限りでは、そういった知り合いはいないのよね‥。ごめんね、登録は無理だわ。」
がっくり落ちこんだフリットに、妹たちが心配そうな目を向ける。
フリットは五秒ほど黙って俯いていたが、すぐに気持ちを切り替えたらしく、顔を上げた。
「決まりじゃあ仕方ない。諦めよう。‥えっとお姉さん。別の相談なんだけど。」
「あら。何かしら?」
お姉さんと呼ばれて、案内嬢の笑顔はいっそう優しくきらきら輝きだした。
「ここより更に西の辺境の村に行くには、どうしたらいいかな? 乗合馬車は通ってないんだよね?」
「西の辺境の村? ‥‥うーん、どこかしら?」
「『勇者』‥さま、の出身地だと言われている村です。」
今度はミーシアが体を乗りだした。
案内嬢はぽん、と手を打った。
「ああ! コツォンね! 一応町なんだけど。」
「町? 村じゃないの?」
するとお姉さんは説明してくれた。
コツォンという町の周辺地域はそこから国境砦まで、ルシュデール領内ではなく、一応国の直轄領に当たること。なのでコツォンには、規模は小さいけれど、辺境統括役場なる役所が置かれているので、村ではなく町と呼ばれていること。周辺にはいくつかの集落が存在していて、そのうちのどれか一つがどうやら『勇者』の出身村であると噂されていること。
「あなたたちがコツォンに行くには、物資を届けに行く商会の馬車に乗せて貰う必要があるわね‥。ここからだと馬車で四日か五日はかかるけど。」
三人は顔を見合わせる。
「それって‥頼んだら乗せてくれるの?」
「そうね。荷物同等の運び賃は取られるけど。後は交渉次第かな? でもコツォンへ行く定期便は月に二、三回しかないはずよ。ちょうど良く出るのがあればいいけど‥。」
お姉さんは少しあたりを見渡して、それからカウンターから出てくると、ついていらっしゃい、と手招きした。
「どこへ行くの? あと、あすこにいなくていいの?」
「ん。案内係って朝は暇なのよ。あっちには商会の人たちが依頼を出しに来るカウンターがあるの、コツォン行きの便があるかどうか聞いてみましょう。」
三人はまた顔を見合わせ、すぐに声を揃えて「ありがとう、お姉さん!」と笑顔で礼を言った。
「ほんと、素直でいい子たちね‥!」
お姉さんは非常にご機嫌だ。
鼻歌でも歌い出しそうな笑顔で先に立って歩く。
一方でこどもたちは、『いい人の知り合いはやっぱりいい人』と単純に感心していた。
実はイズペリとお姉さんは単なる組合内の顔見知りで、特に知り合いと呼べるほどの間柄でもないのだが、彼等のちょっとした誤解は正される機会を持たないまま、この先もずっと続くのだった。
商会の集まるカウンター付近では、何だか人が興奮気味に叫んでいた。
何の騒ぎだろう、と興味津々でじろじろ見る三人の子どもなど、誰も気に留めていない。
「いったい、何の騒ぎなの?」
お姉さんがカウンターの職員らしい女性に訊ねた。
「三つ首の竜ですよ、ほら半月くらい前に討伐されたらしいって連絡が来てましたでしょ? あれの討伐証明として収められた首がですね、到着しまして。欲しいという商会が殺到しているんです。すごいですよ、わたしも見ましたけど、何しろ保存状態がいいんです! 三つの首がまたきれいに並んでまして、全部一刀両断だったんですって‥‥」
女性職員の話では、三つ首の竜はここ一年ほど、翼を駆使して西の街道やルシュデール領内のかなりの広範囲を荒らし回っていた害魔獣で、居場所すら特定できず、何度も組まれた討伐隊も返り討ちにされたり逃げられたりと散々だったらしい。
それをどうやらたまたま遭遇した辺境の一ハンターが、単独で退治し、コツォンの組合出張所に持ちこんだという。しかも三つの首がきれいに刎ねられている以外、大きな体の他の部位にはまったく傷が見られなかったそうだ。
三つ首の竜を一刀両断。
フリットは妹たちを振り返り、目を見合わせてうなずいた。そんな技ができるなんて、『勇者』以外にいるわけがない、と拳を握る。
まちがいない、父ソレイユはこの先にいる。
興奮気味に語る女性職員の言葉をさえぎって、お姉さんは問いかけた。
「じゃあ、コツォンからの便が帰ってきたばかりなのね‥。しばらくコツォンへは誰も行かないってこと?」
「さあ、それはどうでしょう? 首を運んできたのは商会ではなくて、たまたま居合わせた別のハンターさんだそうですから。商会の方々はむしろ、こぞって便を出すのでは? あちらにまだ竜の尻尾があるらしいですし‥。」
「よし、わかったわ、ありがとうね!」
「いえいえ‥。」
それからフリットたちがよく解らないうちに、お姉さんは、喧噪の中から眼鏡を掛けた若い男を引っぱってきた。
「この子たちよ、どう? 乗せてってくれる?」
「はあ‥。まあいいですけどね‥。でも結構危ないですよ? 三つ首の竜が退治されたとはいえ、あの街道はそこそこ魔獣が出ますからね。いざという時は逃げるくらいはできないと‥。」
男は溜息をついている。だが嫌がっているというより、困っているという雰囲気だ。
フリットはこんにちは、ととりあえず礼儀正しい挨拶をした。
「おや。こちらこそ、こんにちは。」
若い商人は驚いた顔で目を瞠り、そして細い眼を更に細めて笑みらしきものを返した。
フリットはまっすぐ目を見返し、丁寧に頼んだ。
「あの、俺たちは訳があって、コツォンに急いで行きたいんです。子どもですけど、自分と妹たちの身くらいは守れます、ご迷惑はかけません。乗せていただけませんか?」
「はあ‥。守れるってねえ‥。その剣で?」
「え? ああ、剣も必要なら使いますけど‥。防御だけなら別に剣は使わなくても大丈夫でしょ?」
「え?」
フリットの言葉に、お姉さんと商人の二人ともが怪訝な視線を返した。
それには兄姉妹三人ともに、「え?」と返す。
商人の男はぐっと眼を細め、フリットをあらためて検分するかのように見た。
「もしかして‥君たち、魔法が使えるの?」
三人は戸惑って顔を見合わせた。何て答えたらいいのかよく解らなかったからだ。
そこへ、背後から大きな声が割りこんだ。
「おい。ちょっと待てよ、ユベール。その子たちに何の用だ?」
振り向くと、走ってきたみたいなイズペリが立っていた。別人みたいに険しい顔だ。
ユベールと呼ばれた商人の男は、苦笑いを浮かべた。
「おやまあ‥。おまえからわたしに声をかけてくるとは、何と珍しい。夏なのに雪でも降るのでは?」
フリットはイズペリから無茶するなと言われていたのを思いだし、商人との交渉は無茶に当たるのかどうか真剣に悩み始める。
ミーシアが慌てて、イズペリに駆けよった。
「イズペリさん、違うの。あの人はコツォンへ行く商人の人で、わたしたちが同乗させてくださいって頼んでいるところだったの‥。」
ミーシア、とイズペリは少し頬を緩める。そして三人を背にかばうように前へ出た。
「それだけなら何でそんな顔してる? まるで商品を品定めするみたいに。」
ユベールはふふっと微笑った。
「言いがかりだよ、イズペリ。わたしはいつもこんな顔だし。怖がらせたならごめんよ、お嬢さん。」
案内嬢のお姉さんは戸惑った表情を浮かべて唖然としていたが、何となく察した感じで、イズペリに会釈をすると、じゃあわたしはこれで、と立ち去っていった。
「お姉さん! いっぱいありがとう。元気でね!」
その背中にグレーテが手を振る。ミーシアも同様に手を振った。
するとお姉さんは振り向いて、手を振り返してくれた。
やっと現実に戻ってきたフリットも慌てて頭を下げる。お姉さんは嬉しそうだった。
一方でイズペリとユベールのにらみ合いは続いていた。
女の子たちは二人の顔を困った様子で窺っている。
そこで膠着した空気にまったく気づいていなかったフリットが、いきなり発言した。
「あのさ、イズペリさん。魔法が使えるって何か問題なの?」
「は?」
「今さ、それを聞かれてたんだ。俺たちはどうしてもコツォンに行きたい‥。魔法が使えるのと使えないのと、どっちなら連れて行って貰えると思う?」
イズペリは頭を抱えた。
ついでに妹たちもだ。長兄の言葉もあながち悪口だけではないのかも、と少し思った。
ユベールも苦笑している。
「ああ‥ええと、坊ちゃん。それは使おうと思えば使えると思っていいのかな?」
「悪いけど、ちょっと待ってくれませんか? あなたへの返事を相談しているので。」
フリットはにこっと微笑む。
ユベールは細い眼を見開いた。
「ほう、なるほど。つまり、君はわたしたちと同行したいが、イズペリが止めるなら従うと言いたいわけだ?」
「その答も保留でお願いします。」
「ふふっ、ずいぶんと信用されたものだねえ、イズペリ? じゃあわたしからも提案だ。Aランカーのイズペリ・レリージュが、わたしユベール・レリージュの率いるカロド商会の護衛を引き受けてくれるなら、この子どもたちを客分扱いで連れて行っても構わないよ。」
「ぐぅ‥。いいだろう、解った。」
驚いたのは三人だ。
「え! そんなの駄目だよ、イズペリさんに迷惑かけるじゃん!」と叫んだのはフリット。
「え! 二人って家族だったの!」と叫んだのは妹二人。
イズペリはどちらに先に返答すればいいかでちょっと悩んだ。
ユベールはすました顔で、「兄ですよ、よろしく、お嬢さんたち。」と会釈する。
「!! ‥似てない。」
三人のつぶやきにイズペリは顔を思い切りしかめ、ユベールは苦笑した。
「で? 明日の早朝出発予定なのだがね、支度は間に合うのかい?」
「‥‥何とかするよ。」
イズペリは溜息混じりに肩を竦めた。