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欠陥製品の幻想入り  作者: カゲロウ
3章
47/49

復帰と失踪

この章での最終話。久しぶりの投稿。

では本編。

「それで、君はどうするのかしら?」

不意にサイギョウジさんにそう問われた。

「え…そうですね…どうにかして記憶を取り戻せたら良いかなって思ってます」

「そんな気楽で大丈夫なんですか?」

「妖夢ちゃん、お顔が怖いわよ〜」

確かに、じっと見ることは出来ない顔をしています。

「…そういえば、ここって桜の木があるんですね」

敢えて話題を逸らすためにそんなことを言った。

「えぇ、あれは『西行妖(さいぎょうあやかし)』。人の精気を吸って成長した桜よ〜」

「人の…精気を…」

俺にはなんだか、あの桜が綺麗なものに見えた。咲いていないのに、それでも美しいと思えた。それに…

あの桜には、俺の失くしたものがある気がした。

「…」

「ちょっと、カゲロウくん!?」

気付けば俺は、西行妖に近付いていた。その桜に触れようとしても、何かに阻まれて触れられない。

「…!もしかして、この間の男の人の目的って!」

「この桜に細工すること、だったんでしょうね。理由は分からないけど」

でも関係ない。俺は…見えない障壁を押し破って桜に触れた。そして…

「〜〜〜っ!!!!!」

酷い頭痛がして手を離してしまったけど、少しだけ、少しだけ記憶が戻った。

「…!!」

今度は離れない。強い意志を持って俺はさらに西行妖に触れた。

(…凄く辛い…でも…可能な限り、思い出すんだ…!!!!)

そしてその覚悟は数秒も持たずに、今度は意識を手放すことになった。


「っ!!!」

どれくらいの時が立ったのだろうか。俺は勢いよく跳ね起きた。起きたのは白玉楼ではなく、見慣れたいつもの家だった。

「お、カゲロウ!起きたか!」

「…なんで…どうして…?」

「妖夢が永遠亭に運んで来たんだよ。急にぶっ倒れたんだとさ。俺はそん時に永遠亭にいたからここまで運びなおしたんだ。割と軽いのな、お前」

「…そっか。ごめんね。()()()()()も心配してたよね…」

「おう…おう!?カゲロウ、その呼び方!記憶戻ったのか!?」

「…一応、ね」

その事にルインはすごく喜んでいた。アリスさんやアルタイル達も大声で呼ぶほどに。

「アリスー、アルタイルー!!カゲロウの記憶戻ったぞー!!」

「う、うるさいよっ!」

すぐにアリスさんとアルタイルは駆けて来た。

「ルイン、それ本当なの!?」

「真実なんだろうね?」

「本当ですよ。心配かけてごめんなさい、アリスさん、アルタイル」

「っ!!」

なんでか知らないけど、アリスさんが急に泣き出しちゃった。

「うぇ!?あ、アリスさん!?」

「ルイン、私達はおいとましようか」

「だな。あとはお二人で〜」

「ちょっと!?」

なんで部屋から出ていくの!?何か怖いんだけど!!

「…カゲロウ…」

「は、はいっ!!」

「私…凄く心配だったのよ…?記憶が戻らないんじゃないかって…それに、勝手に居なくなるし…」

「…ごめんなさい…」

俺にもなんで白玉楼に行けたのか分からないんですけどね…

「本当に…心配だったんだからね…」

「…はい…」

「…分かったなら良いのよ」

まだ少し泣き腫らした顔でアリスさんは部屋から出ていった。

「………今は、夜だよね…」

俺は、アリスさんにバレないように窓から外に出た。

暫く森の中を進んで、俺は手頃な木にもたれかかった。

「ルイン、着いてきてるんでしょ」

「…バレてたか」

「当然。まぁちょうど良かったよ。君に聞きたいことがあるんだ」

「何だ、改まって。ま、なんとなく予想はしてっけどな」

「白玉楼の西行妖に触れた時に、俺は記憶を幾分か取り戻したんだ。その時に知ったんだよね。()()()()()()()()()()()()。ルイン、知ってたよね」

「…まーな。言っとくがお前に偽りを植え付けたのはニーズヘッグだからな。『子供には残酷過ぎる現実だから』ってよ」

だとしても、人の記憶に障るのは良くないと思うよ。

「…てことはさ…ルイン、俺の…俺達の故郷が外じゃない可能性もあるんだよね」

そう…それは記憶が戻って、この事実を知った時に初めに考えた事だ。はたてさんに見せられたあの写真、あれは数年前の物らしい。つまり、数年前から俺を知る人が幻想郷にいるってことだから。

「ま、深く考えなくても良いんじゃねぇのか?」

「考えるさ。だってこれは、俺に深く関わることだから」

俺とルインがそう言い合っていると、久しぶりに会うパルスィさんがやってきた。

「あら、カゲロウじゃない。ちょうど良かったわ。あなたに話があるの」

「カゲロウに話…?何なんだ?」

「…あんたに聞かれるのは妬ましいけど、良いわ。冥界の門番を代行している茨木華扇から報告があったのよ。冥界に、アリスそっくりの女の子がいるって」

「…!! それって!」

「十中八九、あいつだろ…!」

「えぇ、きっとそうよ」

…なんで…どうして…幻想郷の冥界に、アリィがいるのさ…!?


カゲロウが記憶を取り戻した次の日、私はカゲロウの部屋を訪れた。

「カゲロウ、起きているかい?朝になっているのだが…」

返事がなかった。私は、扉を開けて入ってみた。そこに、カゲロウの姿は無かった。

カゲロウは、姿を消してしまった。

次回より新章。そして物語は終へと向かいます。まぁつまり、次の次の章でこの物語は終わります。気長によろしくお願いします。

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