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欠陥製品の幻想入り  作者: カゲロウ
3章
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カゲロウ医務記録

本編39話。

今回は鈴仙目線。

それでは本編、どうぞ。

「カゲロウさん、入りますね」

「はい、どうぞ」

私は、お昼を乗せた盆を持って、カゲロウさんのいる部屋に来た。実は、記憶を失ったカゲロウさんに会うのは初めてだったりする。

「わざわざすいません。その…」

「あ、私は鈴仙です。鈴仙・優曇華院・イナバ」

「…えっと…ウドンゲイン…さん…?」

なんとも妙なところを選ぶ人だ。昔は、こんな感じだったのだろうか…

「他の人は、鈴仙とか、うどんげとか、そんな風に呼びますよ」

「はぁ…けど、俺はそこまで…」

親しくない、と続くのだろうか。昔のこの人はこんな風に遠慮がちだったんでしょうかね…

「カゲロウ、入るわよ」

「あ、はい。どうぞ」

そんな時に、アリスさんがやってきた。彼女は、彼が記憶を失ってからは毎日ここに来ている。

「あ、鈴仙もいたのね」

「はい。お昼を持ってきたんです。お師匠様から、カゲロウさんを動かさない方がいいと言われましたので」

「病人扱いよね…」

多分、お師匠様は遊び半分でやっていると思うのだけれど、黙っておくことにしましょう。

「マーガトロイドさんは、今日も暇なんですか?」

「毎度毎度失礼よね!?」

カゲロウさんは記憶を失ってから、アリスさんのことを『マーガトロイドさん』と呼ぶようになった。きっと、苗字で呼ぶ癖があったのだろう(基本的に記憶喪失では、知識が消えることは滅多にないので、アメリカなどのファミリーネームが、日本では苗字であることを知っていても何ら違和感はない)。

「せっかく時間を作って来てるっていうのに…」

「す、すみません…」

子供みたいに縮こまるカゲロウさんはどこか新鮮で、少し可愛かった。


「カゲロウ、入りますよ」

次にやってきたのは依姫様。依姫様も、カゲロウさんの所に顔を出すのは初めてです。

「………」

カゲロウさんは絶句していました。まぁそうでしょうね。何せ、刀を持ったまま入ってこられたのですから。

「あぁ、すまない。不用心だったな」

そう言って依姫様は後ろ手に襖を閉めましたが、そこでは無いと私は思いました。きっと、カゲロウさんも思っていることでしょう。

「…その…貴女は…」

「忘れてしまったのでしたね…私は綿月依姫といいます」

「えっと…ワタツキノ…さん?」

「『の』は要りませんよ」

「『の』は付けなくて構いません」

私と依姫様が同時に同じことを言って、カゲロウさんは少し困惑していました。こんなカゲロウさんは滅多に見られないと思います。

「えっと…じゃあ…ワタツキさん…」

「なんですか?」

「その…刀を、下ろしてくれませんか…?」

その時の依姫様の惚けた顔は忘れられませんね。


カゲロウさんに会い始めてから数日。私は今、お師匠様と話していました。

「カゲロウはどう?何か思い出しそう?」

永遠亭(ここ)に篭っているのに、思い出すも何もないと思うんですが…」

「時間経過で思い出す場合もあるでしょう?」

「外に連れ出した方が良いと思いますけど」

「貴女が行くの?」

「それは…」

正直に言ってしまうと、私は外に出るのは無理だ。この耳を見られたくない。

「なんなら、アリスに頼む?」

「…そうしましょう。ユナさんに頼んでも、栞さんに頼んでも、何だかダメな気がしますし…」

何となく気が進みませんが、アリスさんに頼むことにしました。


「と、いうわけなんですが」

「いいわよ。それがカゲロウの為になるならやるわ」

私は一も二もなく同意した。カゲロウを連れ出すことがカゲロウのためになるのならば、私はなんでもする。

「じゃあ明日からよろしくお願いしますね」

「えぇ、任せて」

そうして、カゲロウと共に外に出かけることが決まった。


あれ、よく考えたら…それってデートなんじゃ…?

仮にも永遠亭が舞台なので、依姫さんも登場させてみたりした。

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