突然の悲劇
本編37話にして3章開幕話。
ちょっとした悲劇のある回。
それでは本編、どうぞ。
「…ただいま戻りました…」
「おかえり、ルーツ。今回は残念だったね」
「…次こそは…必ず」
「大丈夫さ、もう手は打ってある」
「は…?」
(ルーツのおかげで目覚めさせることは出来た。次は、記憶だ。ふふふ、少しでも僕と彼のことを思い出して欲しいね、シャリス…)
そしてこれは、永遠亭で今後の事を考えていたある日のこと…
「アリスさーん!鈴仙さーん!」
「あら、あれって…はたてよね?」
「はたてさんが来るなんて珍しいですね。何かあったんでしょうか」
空から声をかけてきた人は、はたてさんと言うらしい。あの人も探すのを手伝ってくれてるんだろうか…って当然か、霊夢さんはこの幻想郷に必要な人らしいし。
「これ見てください!過去の写真を漁ってたら…って貴方!」
「へ…お、俺ですか?」
「そうですよ!貴方、最近幻想入りしたばかりですよね?」
「え…そうですけど…」
「なら、これは一体なんですか?」
そう言ってはたてさんが見せてきたのは、人里で笑顔を見せる俺の写真だった。
「…知りません、こんなの。俺は人里に行ったことなんて一度もないんですよ?」
「そもそもカゲロウは人間嫌いだからな、人間相手にこんな笑顔見せるわきゃねぇよ」
「…そうですか…ってそんなことは重要じゃないんですよ」
「はたて、どうゆうこと?」
「いやですね、この写真…撮られたのが4年前なんですよ」
「…えっ?」
この写真が4年前のもの?有り得ない。その頃、俺は中学生だった。そして、俺は外の世界で生活していた。そんなことを考えていた時、またあの頭痛がした。
[オレカラ逃ゲルナ、思イ出セ。目ヲ逸ラスナ、ヨク見ロ。ソノ事実ヲ、コノ現実ヲ視ロ。ソシテ絶望シロ!オレニソノ身体ヲ返セ!!]
「う…ぐ…ぐ…ぁ…」
「カゲロウさん…どうかしたんですか?」
心配そうにする鈴仙さんに応えることはできなかった。それどころでは無かったのだ。
「ぐ…あぁぁぁぁァぁァぁァぁァぁァァァァァァァ!!!!!」
想像を絶する痛み…不滅でなければ死んでいたとさえ思うほどの激痛に、俺は意識を失ってしまった。
「…永琳、カゲロウは大丈夫なのか?」
「えぇ…落ち着いてはいるけど、まだ目は覚まさないわ」
「そうか…」
急に発狂してカゲロウが倒れたあと、俺達は急いでカゲロウを永琳の所まで運んだ(もちろん、はたてとかいう野郎にも手伝わせた)。そしてそれから2時間が経っているが、カゲロウが目覚める気配はないらしい。
「…あいつ、とことん不幸体質なのか…?」
「そんなこと言ってる場合なの?もしカゲロウに何かあったんだとしたら…」
「十中八九、あのよく分かんねぇ野郎だな」
「…よね…」
俺達は確信していた。カゲロウに潜む謎の存在、あいつがまた何かやったに決まっている。
「…そーいや、あのはたてって野郎は一体なんなんだ?」
「彼女は姫海棠はたて、天狗の記者よ。もう1人、射命丸文ってのもいるけど、能力は違うわね」
「ふぅん、どんな能力なんだ?」
「文は風を操る能力、はたては念写よ」
「念写…大方それでカゲロウの写真を見つけたのか」
「でしょうね。でも…」
「あぁ…あいつが4年前に幻想郷にいる訳がねぇんだよな…」
俺達には、4年前のカゲロウの写真が幻想郷にある理由が分からなかった。
そして、さらに数時間が経った頃…
「ルインさん、アリスさん!カゲロウさんが!」
「目ぇ覚ましたのか!兎っ子!」
「は、はい!」
俺達は急いでカゲロウの所へ行った。
「カゲロウ、大丈夫か!」
「目が覚めて良かったです!」
「どこか変なところはない?大丈夫?」
「…………」
カゲロウは何故かしばらく黙り込んで、その一言を口にした。
「えっと……その……君達は、一体誰ですか?」
「…はっ?」
俺達は絶句し、恐る恐る尋ねた。
「なぁ…寝惚けてんのか…?それとも、ふざけてんのか…?」
「カゲロウ…さん…?」
「ねぇ…嘘よね…カゲロウ?」
「何を言っているのか…よくわからないです。ここは…どこなんですか?」
間違いない、間違えようもないくらいに綺麗に、カゲロウはすべての記憶を失っていた。
カゲロウの記憶が飛びました。はてさて、どうなることやら




