幕間〜ルインと依姫〜
2章幕間。
書いてみたかったルインと依姫の絡み。そこまで多くないけどね。
それでは本編、どうぞ。
これは、カゲロウが休んでいる間に、ルインが1人で永遠亭に行った時のこと…
「お、依姫じゃん」
「貴方は…ルイン、でしたっけ」
俺は暇潰しに訪れた永遠亭で依姫と話していた。
「カゲロウはどうしていますか?」
「あー…カゲロウならまたボロボロにな…」
そこまで言って、俺は完全に失敗したと思った。何故なら…
「ボロボロに?それはどういう事ですか?」
怒気を含む声で依姫にそう問い詰められたからだ。
「あー……まぁこれは俺が悪いか…はぁ…」
もはや癖になりつつある溜息をつきつつ、俺は事の一部始終、そしてカゲロウの動きがどこかぎこちなかったことを依姫に話すことにした。
全て話し終えた時、依姫は呟いた。
「それは…私の修行不足でしたね…」
「…って言うと?」
「恐らく、カゲロウは剣術が上達していたわけではなかったんです。いえ、上達していたことにはしていたんでしょうが、私…
綿月依姫という1人の剣士の癖を見切っていたに過ぎなかったんです」
俺は依姫が言わんとすることを理解した。
「つまり…対綿月依姫に特化した剣だったからカゲロウは他のやつに対応できなかった…ってことか?」
「えぇ…そうです。1人の剣術への対応に特化していれば、他の攻撃には対応しにくい。鎌で木が切れないのと同じことです」
例えがどうかと思ったが(物によるが、鎌でも木は切れる)それはそれで大問題だった。何せ、あの1週間がほぼ無駄だったのだから。
「…お姉様に許可を頂かなければ…」
「許可…?なんのだ?」
「ここへの滞在です。しばらくは、彼を鍛え直さなければならないようですし」
「…ふぅん…」
そう言う依姫の顔は少し笑っていて、どことなく嬉しそうだった。
(あー…展開が何となく読めたわ…)
その後、依姫は豊姫から許可を得て、もうしばらく永遠亭に滞在することになった。ただ…
「だから違いますってば!!」
「あら、何が違うのかしら?豊姫も言ってたじゃない、ようやく貴女にも春が来たって。帰るまでずっと嬉しそうに言ってたわよ」
依姫がどう頼み込んだかは知らないが、豊姫と永琳は依姫がカゲロウに惚れていると思っているらしい。全てを知っている俺としてはあまり歓迎出来ないが、まぁ予想通りの展開だ。
「何度も言っているじゃありませんか!私はただ彼を鍛えるためにですね…」
「でも貴女、カゲロウと居る時って凄く嬉しそうよ?」
「〜!!!」
一方的に言われている依姫だが、誰の目から見ても確かに嬉しそうにしている。依姫は新たな弟子ができて嬉しいのだと俺は知っているが、永琳は多分わかっていじっている。豊姫が分かっているかは知らないが。
「…ま、あいつに惚れても叶わぬ恋、ってやつだがな」
「何か言いましたか?」
「イエ、ナンデモナイデス」
ふざけて片言で答えた俺を依姫は睨んでいた。
(ま、なるようになるだろ)
俺は現状をそう楽観視していたのだった。
豊姫さん帰っちゃったので出番もうないです。




