崩落
本編32話。
前回の問はわかった人の方が多いと思う今日この頃。
それでは本編、どうぞ。
「……ん…?」
「斬られて…ない?」
その凶刃が俺達を捉えることは無く、首筋で止まっていた。
「グ…クソ…紛イ物ノクセニ…邪魔シヤガッテェェェ!!!」
そう叫び、膝をついた。そして両手の剣は消え…
「う…ぐぅ…」
次の時には、聞きなれたカゲロウの声色になっていた。
「カゲロウ…だよな?」
「ルイン…俺は…何を……ぐっ…」
「だ、大丈夫か…?」
「がはっ…」
カゲロウは何かを吐き出した。それは…とてつもなく赤かった。
「な…血ぃ!?」
「おい!大丈夫か!?まさか、毒なのか!?」
「毒…じゃない…もう消えてるし…多分、内側から酷く損傷してるのかも…」
それで俺と妹紅は察した。
「それは…もしかしたらよ…」
「スペルカードを使ったせいなのかもしれない…」
「い…いつ…?」
「それは…うぅん…」
妹紅はどう説明したものかと唸っていたが、そんな無駄話をしている余裕はなさそうだった。不意にさっきより大きな地鳴りがした。
「うおっ…マジか、崩れるんじゃねぇのか?」
「そうなる前に早く出なきゃな」
「だね…って、そう言えば、あの子は?」
「「あ、それなら後ろ」」
「…へっ?」
俺達の言葉に、カゲロウは後ろを振り返り、そして…
「お…落ちちゃうよ!?早く助けてあげなきゃ!」
と言って駆け寄って行った。
「…なんつーか…まぁ…」
「お人好しというか…なんというか…」
カゲロウの行動に、俺達は完全に呆れ返っていた。
「う…くぅ…」
「大丈夫?ほら、掴まって」
「誰が…あんたなんかに!」
ルーツはそう言って一向に俺の手を掴もうとしなかった。
「そんなこと言ってる場合?建物だって壊れて危ないし…何よりこのままだと落ちるよ?」
「あんたに助けられるよりマシ!」
そんなことを言われても、助けると言った以上助けるし、何より身体が治りきっていない(そもそも新たな傷を負ったばかりなのだ)のだから、早くして欲しい。
「早く…してよっ!」
「嫌って言ったら嫌なの!」
〔子供だね、彼女は〕
(ホントにそうだね!!)
半ばキレ気味に答えてしまった。そんな時だった。
「う、うわっ!!」
一際大きな揺れが来て、辛うじて残っていた壁が崩壊した。そして…
「う…うわぁぁぁぁ!!!」
「きゃあぁぁぁ!!」
その崩壊につられたかのように、俺とルーツのいた場所も崩れ落ちた。
「カゲロウっ!!」
落ちる直前、俺の名前を叫んでこちらに来ようとするルインと、その後を追ってくる妹紅さんの姿が、視界の端に一瞬だけ見えた。
そろそろ他のキャラの視点で書くのもありかと思う。




