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欠陥製品の幻想入り  作者: カゲロウ
1章
18/49

過去話

18話。

カゲロウアリス回。

それでは本編、どうぞ。

気が付くと私はカゲロウの所にいた。理由なんて考えなくても分かる。ルインから聞いた(盗み聞きした)()()()のせいだ。多分、カゲロウに話を聞こうと思って来たのだろう。

「あ、アリスさん」

「お疲れ様、鈴仙。カゲロウはどう?」

「随分良くなってますよ。あ、ここ任せてもいいですか?少しお腹がすいたので…」

「6時間も頑張ったものね。いいわよ」

「ありがとうございますっ」

そう言って鈴仙は立ち去った。

(そりゃ…まだ起きてないわよね…)

私は…どうすればいいのだろうか…


「…?」

目を開けていの一番に写った光景は今にも泣きだしそうなアリスさんの顔だった。

「…!?」

わかりやすく慌て、混乱した。こんな状況は経験したことがない。

「えっ…あっ…ええっ?」

そんな俺に気が付かないはずもなく

「…えっ?…あっ…」

「あ…アリスさん…?どうかしました…?」

「いっ、いえ!その、ルインから…」

「ルイン…?」

なぜここでルインの名前が出るのだろうか?俺は少し考えてみて、直ぐに答えに気がついた。

「も…もしかして…アリィのこと…」

アリスさんは気まずそうに頷いた。

「っ…そう…ですか…」

「ねぇ…その…アリィさんのこと…教えてくれないかしら?」

俺は返答に詰まった。その事は極力話したくなかったから。

「どうしても…ですか?」

「…嫌ならいいのよ」

…そう言われると断りづらい。

「分かりました…話しますよ」

そう言って俺は、アリスさんの返答も聞かず、自分に言い聞かせるように話し始めた。

「アリィは…アリス・アルカーディアは、とても優しかったんです。この眼のことで虐められていた俺なんかに、親しく、優しく接してくれました。日本に来たばかりで、カタコトの(つたな)い日本語で必死に話しかけてくれました。自己紹介の時はそう言わなかったんですけど、俺と話す時は、家族と同じようにアリィと呼んでって、言われました。あの時は、ホントに嬉しかったんです」

アリスさんは無言で聞いていた。だから俺は話し続けた。

「でも、俺に関わるからって、それだけで俺より酷い虐めを受けていました。俺は、必死に庇ってました。アリィは関係ないって。アリィじゃなくて俺にしろって。それでも、虐めは止まなかった。それで、アリィは…」

「…どうなったの?」

「…学校の屋上から飛び降りて自殺しました。まだ、9歳かそこらだったのに…俺は、その瞬間に立ち会っていたんです。目の前でアリィが落ちていくのに、俺は…足がすくんで何も出来なかった。ショックでその日から数日は引きこもっていました…アリィの両親も何度も慰めてくれたけど、目の奥に、嫌な感じがして…余計に引きこもっていました。今ならわかります。あれは、責められていると感じたんです」

「責められている…?」

「はい…近くにいたのに助けられなかったことを、責められている…恨まれている、そうかんじていたんです」

「…そんなこと…」

「…ないとは言えないでしょう?…そして、引き込もって数日後に、親に引きずり出されて学校に行かされました。そして…絶望しました」

「ど…どうして…?」

「周りは、何も変わっていなかった…それどころか、アリィが死んで何日も経つのに、未だに「人が死んだ」って非日常にお祭り状態でした。そんな光景を見せつけられていた時、担任が笑顔で言ってきたんです。アリスさんがいなくなって良かったね…って。そこで気づいたんです。担任も、虐めに加担していた…それどころか、その担任が黒幕だったんですよ…それ以来、俺は人を嫌い、自分を嫌うようになりました。『(アリィ)が死んで喜ぶような人間達を許さない』、『アリィを守れなかった自分を許さない』…ずっと、その気持ちしかないんです」

「…辛かったのね…」

アリスさんの表情から、俺はいつの間にか泣いていたのだと気付かされた。

「え…あれ…」

「泣きたい時は、泣いていいのよ」

そう言い、アリスさんは俺の頭を自分の胸に引き寄せていた。この状況でその言葉に抗えるほど、強靭な精神力をもちあわせていなかった。俺は、アリスさんの胸に顔を埋めて、子供みたいに泣いた。

ルインが語った真実の、カゲロウ目線です。

そして次回で1章終わりの予定

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