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池袋ボーイズ(大嘘)  作者: 亦塗☆さくらんぼ
第一部
3/4

その3

その3




「熱中症~♪ 熱中症~♪ オリ~ンピックで学生ボランディアをいっぱい殺すよ~♪」


 ペリ浜が塩飴なめながら歌っていると、空から女の子が振ってきました。


「うおわっ!? 何だこいつ!」


 ペリ浜と一緒に歩いていた夜死子が驚いちゃいます。

 見てみると、女の子には天使の翼とか輪っかとかついてます。


「これ、もしかして天使とかじゃない?」


 二人の後ろをついてきていたりんごちゃんが、冷静に状況を分析します。


「確かに……輪っかついてるし天使だなこりゃ」

「うふふ♡ 輪っかも二つに折ればただのゴミなんだよ♡」


 ペリ浜は言うや否や、目にも留まらぬ速さで天使っぽい女の子の輪っかを二つに折ります。


「へ~、やるじゃんペリ浜!」

「お菓子にもなるんだよ♡」


 ペリ浜ちゃんは天使の輪っかだったものをポリポリ齧ります。


「それ、美味しいの?」


 りんごちゃんは眉を顰めて訊きます。


「サクサクのスルメって感じの味がするんだよ♡」

「へぇ~、アタシスルメ好きだよ。あとサクサク食感って日本人好きなやつじゃん。ぜったい美味いよ」

「いや微妙そうでしょ……」


 ペリ浜の評価を聞いて興味を持った夜死子を、無慈悲にりんごちゃんは否定します。


「あの~」


 そんな三人の足元から、声がかかります。

 なんと、天使っぽい女の子が倒れたまま話しかけてきました。


「よかったら、輪っかの方たべるのやめてもらえます?」


 ちょっと遠慮気味なお願いでした。


「嫌なんだよ♡」


 ペリ浜はツバ吐いちゃいます。

 べちゃっと顔を汚された天使っぽい女の子は、ちょっと嫌そうな顔してすぐにまたお願いします。


「そこをなんとか」

「じゃあエッフェル塔作ってよ! 今ここで!」

「え、それどれぐらいの規模なら許されます?」

「本物と同じスケールに決まってるんだよ!!」

「あ、じゃあ無理です」

「だったら死ぬまでその腐れポンチな脳みその詰まったドタマを地面に擦り付けてろ、なんだよ♡」


 ペリ浜は笑顔で女の子の頭を何度も踏みつけました。痛そうですね。


「ねえペリ浜。許してあげたほうがいいんじゃない?」


 りんごちゃんが注意します。


「りんごちゃんが言うなら許してあげるんだよ♡」


 ペリ浜は踏むのやめます。


「で、話を戻しますけど。貴女もしかして天使とかだったりします?」

「え、いや。違いますけど」


 りんごちゃんが訊くと、なんと天使っぽい女の子は否定しました。


「じゃあテメー何なんだよっ!!」

「ヒッ!?」


 突然キレた夜死子に、天使っぽい女の子は怯えちゃいました。


「み、見れば分かるじゃないですか! どう見ても天使っぽい女の子ですよ! 姿見て分かりませんか!?」


 女の子も怯えながらキレます。

 収集つかなくなる前に、りんごちゃんが話をまとめにかかります。


「えっと、つまり貴女は天使じゃなくて天使っぽい女の子ってことでいいのね?」

「はい。そのとおりです」

「じゃあ、どうして空から落ちてきたのかしら?」

「実は熱中症になっちゃって……」

「熱中症だからって普通は空から落ちてこないわよ」

「え、そうなんですか? 天界だとわりとよくあるんですけどね~」

「……ちょっとまって。天界ってどういうこと?」


 りんごちゃんが、聞き捨てならないワードを耳にして話を止めます。


「天界は、天界のことですけど?」

「えっと、天界って言うとあの、天使とか神様とかいるとこよね?」

「は? そんなのいるわけないでしょ。天界には天使っぽい女の子と偉そうな態度でかいおっさんしかいませんよ。あんた、バカですか?」


 ムカついたりんごちゃんは、無敵バリアを拳に乗せて殴っちゃおうかと思いました。

 でもここはぐっとこらえます。


「……つまり話をまとめると、貴女は天界という場所にいた天使っぽい女の子の一人で、熱中症になったから地上まで落ちてきてしまった、ということね?」

「はい。そうなんですよ~」


 天使っぽい女の子は困ったように言います。


「なんで、そろそろ仕事に戻らないとヤバイんで、輪っかの方かえしてもらえます? それ無いと勤怠の記録つかないんで……」

「もう全部たべちゃったんだよ♡」


 輪っかは既にペリ浜の胃の中でした。


「マジすか……はぁ……今日実質タダ働きですよ。おっさんが打ち水と28度の冷房だけで夏の暑さ対策完璧なつもりになっちゃって、熱くて苦しい環境下で仕事してたのに、勤務時間は記録上ゼロとか。ほんとやってらんないです……」


 天使っぽい女の子は、翼をはためかせ、空に登っていきました。

 取り残されたりんごちゃんたち3人は、静かに天使っぽい女の子のスカートの中を見上げながら話をします。


「熱中症、私たちも気をつけないとね。ペリ浜、夜死子も。ちゃんと注意しなきゃダメよ?」

「あ? アタシは大丈夫だっての! 水飲んでるし!」

「あら夜死子。水を飲むだけではダメよ。それでは熱中症を防げないわ」

「は? 脱水症状なんだから水飲めばオッケーだろ!?」

「何を言っているの? 脱水症状は熱中症の症状の内の一つにすぎないわ。水を飲んだからって熱中症を完全に防げるわけじゃないのよ?」

「へ? マジ?」

「マジよ。ちゃんと涼しい場所で休憩をとって、水だけじゃなくて塩分を取って、栄養のあるものを食べて身体が弱らないよう注意しないとダメよ。夏だからってざるそばばっかり食べてると倒れちゃうんだからね?」

「ざるそばよりひやむぎ派なんだよ♡」


 会話に割り込んできたペリ浜は、いつの間にか冷やしうどんを食べていました。

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