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LIFE A LIVE  作者: D・A・M
Second:Track I’m Truth Sols Rock” N” Roller
98/271

97曲目

もし、これを読んでいる貴方。

10代、20代前半の場合は……。

やりたい事があれば、今すぐ実行するべき。

そんな刹那とも言える青春の日々な感じ。

 話がいざこざと空回りし、原因不明になる前に、俺は稔たちに説明した。

 中には言葉で伝えきれないとこもあり度々ジェスチャーすることもあったが。

 その姿はまるで言葉が通じない原始人にも、自分ながら思えてしまうほどだ。


「え? 熱川君たち、組んだばっかのバンドなのに、もうライブに出演するの?」


 よかった、どうやら俺のハチャメチャが押し寄せる漢説明でも通じた様だ。

 なんとか事情を説明すると、稔も結理もものすごく驚き言葉にできてない。

 おお、なんとなくだが得意な気分だな。


「まぁな。今度行われるライブハウスでのライブで急に入っていたバンドがキャンセルしてな、それで空きができたんで俺たちのバンドを予約しといたんだよ。いやー、早く俺の立ち上げたバンドでライブしてみたいぜ!」

「へー、そうなんだ? この前メンバーが集まってバンドが結成したばっかりなのに、もうライブハウスでライブをするなんてすごいね! 度胸があるというかなんというか、やっぱ熱川君らしいっていうか、なんかすごい!」


 稔は驚きの中になぜか喜びも出しながらそう言う。

 ほめられているのはわかるが、イマイチすごさが伝わらない。

 しかし稔が向日葵のように微笑んで嬉しそうだから、それでいい。


「ふーん、夏休みに入って、いきなりライブハウスでライブねぇ……ちょっと無策すぎるっていうか、無謀すぎるんじゃない? 確かに夏休みに入る前でバンドを結成できたってのはすごい方だけどさ。その分アンタたち、練習でだって、まだそれほど回数を多く合わせたわけじゃないだろうし、バンド内から出るそれぞれの音も理解してないんじゃないの?」


 ほら、一気に熱い展開に急な冷たい横やりが突き刺さる。

 素直で健気に組んだバンドでライブすることをほめてくれた稔と違って、結理は現実的でネガティブなことを空気を読まずに言いやがる。

 少しは稔との甘い幻想めいた雰囲気を楽しんでもいいじゃねえか。


 そんな現実的で夢見の無い結理の発言に加勢する輩がいるわけだ。

 言うまでもない、女のことになると射止めもつけずに出しゃばるヤツだ。


「ねぇ? やっぱり結理っちもそう思うでしょ? あまりにも先を見てないで猪突猛進すぎてね、まったく話にならなくて困ってるのよ。実際、オレらもそう言ってるんだけど、コイツぜんぜん訊く耳も持たないし聞きわかりもないしで……手を焼いているわけよ」

「はいっ? 結理……っち?」


 結理の顔つきが氷河期に入ったかのように凍り付く。

 暁幸がなんか知り合いみたいに馴れ馴れしくアイツに話しかけているが、たしか暁幸と結理って、この前のスタジオでのロビー内で初顔合わせで、そのまま知り合ったばっかりでそんなに時間が経ってないよな?


「あれ、結理っち……ああ、呼び名だとわかり辛いかな? たしか君、結理ちゃんでよかったよね? いい名前だ、結びつく理ねぇ。うん、まさしく君みたいな子にはピッタシな名前だ。あ、オレ、熱川暁幸(ねつかわあきよし)。これでもこの真っ赤なバカ頭、陽太と双子の兄なんだ。ま、今はわけあって別々のとこに住んでるんだけどね? それより今度俺のベースを聴かせてあげるよ。オレさ、こう見えても超絶技巧で即興ベースプレイが得意なんだよね~っ」


 僅かに引き気味な結理を前にしても暁幸は自分のスタイルを崩さない。

 自分の長く手入れの行き届いた髪をかき上げて、目を見てカッコよく微笑む。


 まったく、イケメンというのは自意識過剰で図々しいものなんだな。

 そんな態度をあらわにして、結理が呆気にとられてその場に固まってる。

 あの性格ひねくれ女の結理を(ほう)けさせるとはたいした根性と腕だ。

 たとえ結理から怪訝で引き気味に見られても、平然としてるのはすごい。


 だがしかし、暁幸は重大なミスを犯している。

 だって、結理は"榎本(えのもと)ちゃん"とか、"結理ちゃん"や"結理っち"だなんて言われて喜ぶようなキャラじゃないと思うぞ暁幸。

 だいいちそう呼ばれて喜ぶ結理も、言う暁幸も、正直気持ち悪いぞ。


 いきなり馴れ馴れしくあだ名で呼ばれた結理はすこぶる機嫌が悪そうだ。


「あのね、ベースならあたしも演奏()ってるし、あんまし得意じゃないけど自分でフレーズも作って即興とかできるから。間に合ってるんでけっこうです。だいいち、バンドを初めてから聴く専よりも演奏()る専なんで」

「あ、本当に? 結理っちもベースをやってるんだ~っ。それは奇遇だな~。やっぱり楽器をやるんならベースに限ると思わない? バンドってたしか、あの伝説の逸話を創り出した初代時世代音芸部(しょだいじせだいおとげいぶ)を引き継いだっていう二時世代音芸部(にじせだいおとげいぶ)なんだって? それはすごいね~。そんな伝説的なパンクバンドのベーシストだって言うんだから、きっとベースも上手いんだろうね」

「別に、それほどでもないし、まだまだ未熟なとこもあるんですけど」

「未熟なとこがあるのが可愛いじゃない。よかったら俺が教えてあげるよ?」


 あだ名を付けられ嫌がる結理と食い下がらない暁幸。

 こう見てると、なんか、だんだんと妙な空気になっているよな。

 なんだって暁幸のヤツ、急に結理なんかにあんな話しかけているんだ?

 実際、今すごく嫌そうな顔を浮かべて視線を逸らされてるのに、動じてないし。


「ああ、あれは暁幸の持病であり列記とした病気だ。気にするな」


 宗介が我関せずと言った感じで静観する毅然で、泰然(たいぜん)としている。

 そして暁幸の行動を見ては僅かにため息をついて、ソッと両目を閉じる。

 どうやらあの不可思議でおかしな現象はいつものことで慣れっこって感じだ。


「もしかして暁幸君、彼女さんがいるのに結理ちゃんのことが好きなのかな?」

「え、ええ? そ、そうなの? 彼女さんがいるのに、それっていいの?」


 いや、彼女がいるのに浮気はよくねぇだろ。

 ケンも的外れなことを言うし稔も天然気味に()ける。

 心も考えも純粋で、こういう話にうとい2人が言っては驚く。

 それを見ていると一種の夫婦漫才で、なんか、悔しいんだが。


「ケンが言うような、そういう高尚(こうしょう)でもないし。ましてや稔が言うように大事な彼女がいるのに平然と浮気をするのもよくないし。あれは本気じゃない中くらいの力量で口説いてる感じだな。言うなれば、アイツのやってることはただのナンパだろ? やれやれ、それが漢としてこの世に生まれたモノがするべき行いかよ?」

「ああ、そうだ。ナンパしてる暁幸には芽愛(めい)さんという大事な彼女がいるんだが。まあ、アイツはあんな性格なのでな。現に暁幸は、ただ婦女子(ふじょし)に自分の見た目や持ってる才を振りまいてキャーキャーと黄色い声援と歓声を言われるのが人一倍好きなんだ」


 なるほど、全国各地に生息し、イケメンなどが発病する一種の病気なんだな。

 俺もけっこうなワイルドで名の通るイケメンだが、そういった病気もないし。

 そう考えると、アイツは顔も整って背も高いクセに病気に気づかないとはな。


 まったく、ナンパしてるときが幸せそうでいるのがマジで不憫に見える。

 宗介は静観し、未だにケンと稔はなんか本気か嘘かもわからずに見ている。

 俺は見当違いなことを心の中で呟きながら、奇妙な光景をジッと眺めてた。




ご愛読まことにありがとうございます!

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