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LIFE A LIVE  作者: D・A・M
Second:Track I’m Truth Sols Rock” N” Roller
83/271

82曲目

 俺と暁幸の熱意の燃えあがる闘争心と躍動感。

 ケンも宗介もその勢いのまま、4人はスタジオへと移動した。

 別に移動しなくても宗介は自分のドラムセットとスティックを持っているし、その場で練習したり音合わせもする話でまとまりかけたのだが、なんでも親父さんが今日その本堂で大事な用事が入ってしまい使用するとのことのことで、別の練習場所が必要となったのだ。


 そこですぐに暁幸と宗介から1つの提案が出された。

 なんでも宗介の寺と暁幸が俺のお袋と共に住んでいるアパートから、徒歩10分ぐらいで着けるスタジオがあるとのことだったが、1分1秒でも速く音合わせをしたいという俺と暁幸の身勝手な思いを汲んでくれたかどうかはわからないが、本堂に立ち寄った宗介の親父さんがご厚意で自転車を貸してくれたのだ。


 宗介のお袋さんが女将として経営する旅館の私物(でいいのか?)らしく、バスなどで遠くの方から1休みや泊まりに来てくれた人々にもっと"白神郷(しらがごう)"の住みやすさと素晴らしさを知ってもらおうと、多くの自転車を知り合いのお店から安く買い取ったそうだ。


 白神郷はけっこう自然豊かなとこだ。

 住宅街は東京などにあるファーストフード店やゲームセンターにカラオケや生活用品や食品などを入荷しているスーパーなどはもちろんのこと、音楽が繫栄し栄えている街でもあるためライブハウスにCDショップに楽器店やスタジオなどもあり、全国各地から発生され知らされる音楽やらライブ情報などもいち早くチャッキしバンドマンやシンガーソングライターに知らせてくれるのだ。


 他にも気の利いた安い価格の定食屋に、最近流行のパフェを出してくれるレストランに暑い夏を乗り切るアイスクリーム屋やら、アニメやゲームなどのグッズやら何やらを売っている男も女も皆、幸せを提供してくれるお店とかも住宅街から商店街に入れば1発で視界に入ってくる。


 そうなると『おい、白神郷の自然ってどこだよ』ってなるよな。

 俺も今のような憧憬と説明だけだったなら、実にそう思うんだ。


 さっき俺ら4人が自転車で爆走してきたとこは田んぼと木々が続く郷の道。

 木々にいる蝉の唄うような鳴き声、自然の恵みである川から清流のせせらぎ、木に燦々と太陽の日を浴びて育った木の葉が澄み渡る心地よい風と共に鳴り響くメロディの中で夕方になればひぐらしのやかましく、それでいて季節を夏を感じさせてくれる甲高い歌声も届くのだ。


 4人の漕ぐそれぞれの自転車は電車傍の道も通った。

 少し軽い気持ちで漕いでいると横から真っすぐ駅まで走る車両がレールの切れ目にストンストンと落ちる連続で出される機械音、勢いよく走り出される機械の鉄箱が通り過ぎる時に踏み切りの警鐘が力強く鳴って段々と静かに音が鳴り、また連続の機械音が流れている。


 ここは、まさに大自然と都会が混ざった場所とも言える。

 こんな近代化が進みTVゲームやらソーシャルゲームやらとネットでなんでも解決できるようになった時代なのに郷に住む人との交流も頻繁に行われるし、祭りごとや郷の復興行事などで音楽活動もしばしばあったりと、ここはなにかと怠惰めいた思いをさせてはくれない。


 それとこれはスタジオに向かう前に起こった出来事なんだが、実は寺にいるときに俺のズボンポケットから着信入り確認すると『稔』からだったのですかさず出ると、すぐに電話越しから天使のように甘く安らぎ与えてくれる声が俺の耳に届く。


 電話での内容はこうだった。


『もしもし、熱川君? 今ね、ウチのお店で二時世代音芸部(にじせだいおとげいぶ)のみんなで集まって楽曲の練習をしてるんだ~っ。それでね? ウチのスタジオも他のバンドさんで使っちゃったりしているけど今ちょうど1室空いてるし、もしよかったら、新しく作られたスタジオで一緒に練習しない? 私たちも使ってるんだけど、どうかな?』


 このような内容だった。

 それに結理も生意気なことを言ってたらしいが、やはり鐘撞大祭(しょうどうだいさい)のライブステージではあまりにも俺らしくなかったとかでヤツなりに心配し、相談に乗ったりセッションもして腕を上げてやるなども言ってたと稔の口から伝えられた。


 ああ、ありがてぇ、ありがてぇぜ!

 そこまで心配してくれてるとは、涙が出る。

 さすがは俺の女神、もう『M(稔)・M(マジ)・M(女神)』だぜ。


 しかし俺は苦渋の決断をし、鋼の精神を保ってその提案を断った。


 今、アイツらの好意に甘えたら色々ダメになる気がする。

 それに二時世代音芸部(にじせだいおとげいぶ)は俺らにとってよき理解者であり、最大のライバルだ。

 圧倒的な差を魅せ付けたバンドの音を聴くだなんて、まるで盗み聴きみたいだ。

 それが俺にとって、いや、俺たちのバンドにとってあまりよくないと思える。


 俺たちにできること、俺たちにしかできないことをするべきだ。

 先駆者やバンド慣れしているヤツらから情報を訊くのはそれからでも遅くない。

 今はただ、訳ありでもこうメンバーが揃ったことに感謝し、全力でやるのみだ。


 熱情と劣情があっちこっち行き交う中、今現在ってわけだ。




ご愛読まことにありがとうございます!

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