表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LIFE A LIVE  作者: D・A・M
Second:Track I’m Truth Sols Rock” N” Roller
80/271

79曲目

 ケンによる取り巻きの女どもによる謝罪は滞りなく終わった。

 そして暁幸に芽愛、宗介にも俺の態度の悪いことを丁寧に謝る。

 それを"別に気にしてない"と軽く言い、不貞腐れた俺の方を見る。


「くっくっく、いやはや、しかしなんだな。あれから全然接点のない暮らしをお互いしていたのに、あのときからまったく変わらずに面白いヤツだし、やっぱりからかい甲斐があって良いわ。お前はさっ……なあ、そう思わねぇか? 芽愛」


 面白そうに笑う暁幸は隣にいる芽愛に賛同させるように言う。

 彼女は彼に微笑みかけ、"うん"と言葉には出さず首だけ下に振る。

 あんま喋らないし、まるで完成度が高くて美しい人形みたいだな。


「そうだね。でもあっくん、あんまり実の弟をイジメちゃダメだよ?」

「はいはい、わかっているよ。はあ~ったく、芽愛は優しいよなぁ……」


 小さくて、それでいて声優みたいな声色の問いかけにヤツは頷く。


 前言撤回、人形じゃなくてちゃんと生きている美しい女性だ。

 アイツにはもったいないほどに綺麗で物わかりのいい人だな。

 まあ、俺には天使であり女神である稔がいるから悔しくねーし。


 暁幸は気を悪くした様子もなく、ニヤニヤとしている。

 確かに俺からの誠意として土下座をして"兄貴"だなんてもう言いたくもない呼び名を言われて、それからはまたいつも通りの暴言を取り巻きの女どもに牙を向けたり、また俺から兄弟の上下関係関係なくあんなこと言われてもニヤニヤしてられるとは、俺からすればコイツこそ変なヤツだ。


 楽器を弾くヤツは大体変人が多くて上手いと風の噂で聞く。

 俺も女どもの感想は変人扱いでコイツも俺から変人扱いされている。

 コイツは先天的な鬼才を持ってて変人ってことは、俺もワンチャンあるのか?


「あんなことまで言ってお前の楽しい楽しい即興ベースプレイの邪魔をして、可愛い彼女とのランデブーに釘を刺したりしちまった俺が言うのもなんだが、本当に俺たちと0からバンド活動をやってくれるのか?」


 暁幸は、世の中に出回っているイケメンにありがちな、なぜか根拠も理由も無いのに自信たっぷりな笑みで軽くうなづく。


「ああ、やってやる。俺の大事な子猫ちゃんや大切な彼女にも、もっと良いステージで俺の輝かしい姿を魅せられるからな。それに俺も、最近少し考えていたんだ。原点こそお前から音楽の存在を知ってベースを初めて、こうしてみんなと楽しく音楽と向き合って楽しくやっているのも、もちろん悪くはない。だけど、俺のこのハリウッドスター同等のルックスと先天的に授けられた鬼才で女の子にモテるのは、至極当たり前過ぎることじゃないか」


 えっ、ナニそれ?

 俺は今コイツからものすごく暴論ともたとえられる自論を口に出して言っていると思えたのだが、おそろしいことに、取り巻きの女どもは『その通り!』と言わんばかりにうんうんと頷いて納得している。

 しかし中でも芽愛と言われる子はキョトンとして、口をはさむ。


「あれっ? でもあっくん。私と付き合おうとしたときはそういった鬼才とか一切しないで、"ハナミズキ"の花束を渡してくれて告白してくれたじゃない? あれを他の人からしたらベタだなって思われるけど、私、すっごく嬉しかったな~」


 瞬間、暁幸の体は氷のように固まり取り巻き共も芽愛の方を見る。

 そんなとき近くまで寄って来た宗介が、親友の意外な一面を訊き驚く。


「むっ? そうだったのかい芽愛さん。なんだ、意外に純粋なんだな」

「うんうん、そうなんだよ~っ? いつもは自信満々で俺に着いて来いって感じで男らしいんだけど、あのときはなんかこう、小さい男の子みたいな可愛い感じだったな~……あ、それで私は次の日に告白のオッケーを出したんだけどね。そのときに渡したのが"向日葵"だったんだよ」


 刹那、宗介の驚き声と女どもの黄色い歓声が本堂内に飛び交う。

 きっと"ハナミズキ"と"向日葵"の花言葉を理解してのことだろう。

 お淑やかで物静かな芽愛と言う人は両手を頬に当てて、照れてる。


 そんな状況を見たケンと俺は、もう1度暁幸の方を唖然とした表情で見る。


「芽愛、確かにあのときの出会い話は俺もすごーっく大事だし今でも思い出の宝物だ。だけどな? 今、この場で言うことじゃないだろう。わかったら、その真っ白い天使のような口をチャックして俺の話を訊いててくれな?」


 暁幸は芽愛の頭をポンポンとし、そのまま優しい手つきで撫でる。

 彼女は自分の愛する彼氏にそうされて、思わず子猫のようになる。

 大事な彼女のことになるとセンチメンタルになったりするんだな、意外だ。


「んっんんっ……でだ、陽太。俺がモテるのは自然の摂理であり、理であり、道理その物なんだ。ぬるま湯で過ごすのは、いくら入ってて気持ちが安らぎ居心地がよくても、次第に退屈へと変わるものさ。そろそろ頃合いだと思うし、音楽のロックを愛した女神様もこのオレを愛するのかどうか、ベースとルックスを最大限に生かしたバンドの演奏で、試してみたいと、そう思ってたんだ」


 なるほど、それがバンド加入了承の隠図(いと)ということか。

 まさしくコイツらしい意見であり、曲がらない意志といったとこだ。

 あれからまったくそこだけは変わらないとこを見ると、筋金入りだな。


 俺はコイツのバンド加入の隠図(いと)を訊いて、苦笑する。





ご愛読まことにありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ