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LIFE A LIVE  作者: D・A・M
Second:Track I’m Truth Sols Rock” N” Roller
79/271

78曲目

 俺は思わず自分の耳を疑った。

 絶対に入らないと言うであろう暁幸が、バンド加入を了承した。

 今言われた言葉を理解するのに約数秒の時間を要したが、すぐ把握する。


「マ、マジかよっ! あ、ありがてぇ!」


 俺が新たなる音楽の第一歩を踏めると確信した、そのときだった。


「えーっ!?」


 ヤツの周りに沸いた取り巻きの女共が一斉に騒ぎ出す。

 それぞれの声色からの感情からして、納得出来ないという声々(こえ)だ。

 ただその中で1人、暁幸の彼女である芽愛(めい)だけは、なにも言わない。


 そして取り巻きの女共はヤツに縋るように、言い分をつらつらと出す。


「ダメっ! そんなのダメだよ。アッキーは、そんな楽しくなさそうなのにわざわざ参加しなくてもいいよっ! だってバンドだってよ? バンドだなんて今時流行ってないし、カッコ悪いよ~!」

「そうそう。いくらアッキーが人に優しいからってそれはさすがにやりすぎ~。私知ってるんだよ。いくらアッキーの双子の弟だからって、この陽太って人! 音楽バカで口も態度も悪いし変人で女も男からも嫌われてるんだから!」

「うんうん、それわかる~っ! それにもしアッキーがバンドで参加するって言うんだったら、もっとアッキーと上手いベースとルックスにつりあうような人たちと組んでやった方がいいよ~」


 姦しい。

 まさにこの女取り巻き共はそんな不埒な言葉がよく似合う。

 あのとき田所先輩のとこにいた女共と照らし合わせてしまう。


「あっ!? なんだとゴラッ、この構造物ズラで谷底スタイル共がっ!」


 怒涛の否定で盛り上がる女どもに我慢できず威嚇し咆哮する。

 すると暁幸の近くにたむろっては小動物の闘争本能が働き身を寄せ合う女どもは、とても女という性別からでは思えないようなものすごい勢いで睨み返したりギャーギャー喚き立てる。

 動物園にいる猿か? とも俺は思ってしまうが言わないことにした。


「なっ……構造物ってなによ!? 谷底スタイルってなんだし、マジチョー意味分かんない。そんなトゲトフゲしたウニみたいな真っ赤で気味の悪い頭しているおバカっちょに言われたくないわよ!」

「あ、あんたみたいなロクでなしのちんちくりんには、女心ってのはわからないでしょうけどねっ~。アッキーは大事な彼女もいるのに、あたしたちのこともすっごく可愛いとか美人とかいって褒めてくれるんだからね」

「そーよそーよっ!」


 女どもの怒りが有頂天まで達しててもはや収集が付きそうにない。

 だが俺はそんな女どもの気持ちなんかこれっぽっちも知ったこっちゃない。

 むしろ火に油を注いでその脂肪を燃焼させてやったほうがいいと思えてしまう。


「ハッ! んなの心の底から信じてるとかバカじゃねーのっ!? いいか、人生の中でこういった優しくてキザッたらしい男は言葉巧みに上手いからな。言うことをそのまま鵜呑みにしてんじゃねーっ!」

「な、なんですってぇっ!?」


 とうとう我慢できなくなった女どもが立ち上がり、俺も負けじと立ち上がる。

 そんな様子を呆然と見ている暁幸と芽愛、宗介は経本のページをサッと開く。

 親友が少し話の席から立ったのを見て、暁幸も彼女である芽愛と話をする。


 火花を散らしにらみ合う俺と女たちの間に、ケンが済まなさそうに割って入る。


「ちょ、ちょっと! どっちも止めてってば~っ。それに陽ちゃん、僕たちはここに頼みごとをしに来たんでしょ。それなのに暴言を言ってはケンカにさせてどうするのさ?」

「……あ、そうだそうだ。思わず我を忘れてたぜ」


 つい言動の激しさから熱が入ってしまい忘れていた。

 こんな面白みも無い女どもに熱くなるとはカッコ悪い話だ。

 もう少しスーパーにある牛乳とかを摂取したほうがいいかもな。


「むっ? 話は終わったか。ハッハッハ、しかしおかしなヤツだな!」


 経本をパタンと閉じて俺らの方を見る宗介は愉快そうに笑う。

 けっこう笑ったりする感情の激しい人だと思えば、普段は基本的に表情の変わらない能面のような顔でずっと黙っているかと思っていたが、そんなふうに高らかに笑っては人を評価するとは意外だな。


 それにしてもさっきのセリフのときといい今の笑い方からの評価といい、暁幸のベースとこの人のドラムでデュエット形式でやってるときもヤツがメインヴォーカル&ベースでやってたと思うが、この人がボーカルをやってもそこそこ良い線までイケそうなしっかりと腹から出てよく通る声だよな。


 彼の言葉を聞いて暁幸と芽愛も宗介の方を向き、また話に参加する。

 そして暁幸も俺の顔を覗いたとき"可笑しなヤツ"と思わせる顔色を出す。

 俺がそのことに反論しようとした瞬間、ソレを察知したケンが静止する。


「えっと、その、みなさん本当にごめんなさい! 陽ちゃんは……ちょっとバカで音楽やロックのことになると猪突猛進というか一心不乱というか、残念なとこはあるかもしれませんが、悪気はないですし自分の夢に一生懸命頑張るとする素直な人なんです」


 おい、お前は俺のお母さんかなにかかよ?

 普段は女みたくお淑やかなくせにこう言ったときは威勢がいい。

 というか親友だったらもっとちゃんとした単語を出して言ってくれよ。


「あん? お前、こんなときになにどさくさに紛れて言ってるわけ? 誰がバカで猪突猛進で一心不乱なバカってなんだおい! ケン、いきなりなに言ってくれやがんだ!」

「もう、陽ちゃんうっさい! 少しは目先のことも視野に入れて考えて行動して。それに今は謝ってるんだから話を混ぜっ返さないでってば! しかもバカって2回言っちゃってるけどよくないよ! とりあえず、今は、黙っててっ!」


 ケンが珍しく怒った顔つきで怒鳴る。

 それに踏まえて俺の言葉を訂正させる。

 あまり見せない剣幕にすごまれ、思わず仰け反る。


「だ、だってさ……あークソッ!」


 さすがに今のは俺が悪いと思って黙る。

 しかし今のでかなりのフラストレーションが溜まってしまった。

 ああなんでこう、なにもかも物事ってスマートかつクールに行かないんだ?


 僅かばかりにカヤの外となった俺は、その場に座り込み、天井を仰ぐ。

 本当に、人生と言うのはこうも面白く進まない獣道みたいなモノだよな……。


 俺はケンの謝罪が終わるまで本堂の中を眺めて、イライラを消す作業に入る。




ご愛読まことにありがとうございます!

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