69曲目
第2部、開始!
鐘撞大祭のライブが終わった後、一緒にライブ会場から着いて来たケンは1度自分の家に帰り"アコギを持って来てくれ"と言った俺の言いつけ通り、アコースティックギターメーカーの中では有名な"Martin"を持って来て俺の日本家屋である家に転がり込んだ。
そして共にアコギで双奏をしながら今手掛けているオリジナルのテーマや歌詞、それにコード進行やバッキングやアルペジオなどの考察をし、その場で浮かんだ言葉のアイディアを取り入れては新たな作詞作曲とバンドで演奏するとき用のコードなども考えながら楽器と歌練習も兼ねてる最中、大事なことを思い出しあぐらをかいて床に座っていた俺はおもむろに立ち上がると、自室の壁に掛けてあるカレンダーのもとへと向かう。
そんな俺を不思議に思っているケンは少し黙って様子をうかがう。
「こうして、こうで……うん、これでよし」
剥がしたカレンダーの裏側を有効的に使って書いた、バンドとして活動するにあたってのスケジュール表を、必ず自分の視界に映ってベストポジションとなる部屋の壁に貼り付けた。
よし、これがこれからの夏やるべき俺の予定であり方針だ。
圧倒的差を魅せ付けられて、あんな苦渋を味わうのはもうゴメンだ。
精と熱意を出す俺はリベンジに向けて、夏のバンド計画を練り直した。
路上ライブやスタジオ練習にパート別の個人練習の量、洋楽から邦楽などのアルバムを片っ端から聴いてアイディアを奪い自分のモノにするための耳コピなどの計画を立てて、そして真夏の0から始まるソルズロックバンド生活の最終目標を夏休みの最後にあるイベントに狙いを定めた。
最終目標となったライブイベントは出場するバンドを学生バンド(コピー、オリジナルなんでもOK)のみに絞り、コンテスト形式でバンドとしての演奏と楽器や歌の力量に将来性などを考慮して採点を行い、この音楽が反映し栄えている"白神郷"でもっとも熱く本格的に音楽に向き合っている人が多い地域でのナンバーワン学生バンドを決めるというコンセプトである。
今では街中だけじゃなく『楽器店』『CDショップ』『スタジオ』ともちろん各所にある『ライブハウス』にもそのビックなライブイベント開催を知らせるポスターが張ってあったり、ネット上などで調べたらすぐに検索に引っかかるほどに人気があり、かなり歴史もあるそうだ。
イベントでのライブ採点は、数名の審査員と観客の評価で決まる。
審査員は有名な音楽事務所や今をトキメク音楽界のプロばかり集まる。
時期と内容なだけに、毎年フェスのように盛り上がれるライブイベントだ。
出演するバンドの面々はみんな本気と決意を持って参加する猛者ばかりだ。
絶望の崖下から生き抜こうと必死になる人みたくなる理由は、ちゃんとある。
うん、それもそのはずだ。
このライブイベントで見事勝つと、約3ヶ月ほどそのバンドの名が有名になる。
それよりも後もバンドが有名でいられるかは、カバー曲だけじゃなくオリジナル楽曲製作にも精を出したり怒涛の練習や地域にあるライブハウスに頻繁に顔を出してはライブをする意気込みと、やはりバンドをしていきたいと願う本人たちの実力と曲がらない意志次第なわけだが。
なんにしろ、俺たちの作るバンドの名を売るには絶好のチャンスなんだ。
夏休みはバンバン活動をし、最終日にはこれに参加して、勝ちたかった。
それに俺自身がこのライブイベントに出たい理由はもう1つある。
鐘撞大祭でのライブでは最高峰の歓声とバンドの一体感を創り上げた、二時世代音芸部バンドが毎年このライブイベントに出演することになっているのも好都合だし、なにより熱い魂が燃え上がる最高のシチュエーションだ。
連中はいつも優勝候補に挙がってくるし、年々演奏も力量向上してる。
去年はおしいとこで優勝を逃したから、今年は期する志があるらしい。
そのときは天才少女である奏音がいなかったからかもしれないが、鐘撞大祭のライブでは観客全員を笑顔にしては大合唱にも思える歓声とバンドとしての必要なモノを全てクリアし、非の打ち所がまったくなかったあの二時世代音芸部バンドが優勝を逃すほどなのだ。
新部長となった結理がバンドを仕切ってるはずだから、相当本気で挑むはずだ。
部屋の中でイベントポスターとスケジュール表を交互に見た俺はそのまま部屋の天井を仰ぐと、なんともない部屋の天井なのに俺の視界にはさらなる進化を遂げた二時世代音芸部バンドと本気で挑む猛者となるバンドの面々の姿が目に浮かび、開かれた両手に思わず力が宿っては強く握って闘志を燃やす。
俺は並みいる強豪となるバンドが相手でもその先に行かなきゃならない。
自分の志となり、決意の塊になれるであろう音楽界の新たなジャンル……。
熱く輝く、自由を象徴する『ソルズロック』があるはずだから。
ご愛読まことにありがとうございます!




