表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LIFE A LIVE  作者: D・A・M
First:Track Rock Today Wake Up Tomorrow
61/271

60曲目

文化祭当日のお話

 そして、ついにバンドライブの本番が訪れた。


 進行役の人が控え室に来て、俺たちと共演者は説明を受けた。

 ライブの出番は事前にくじで決めて、俺たちは3番目だった。

 俺は何事も1番が好きだったが、実を言うと3番も好きなのだ。


 好きな理由(わけ)はものすごくシンプルだ。

 考え方が駄洒落でつまらないが、太陽と言う意味の"Sun"だからだ。

 まあ、今この状況下でそう考えられるのも、落ち着いている証拠だ。


 どこで練習してきたのかは知らないけれど、トップバッターのアコースティックギター2本の男性デュオとセカンドバッターの女性ボーカルとバックでアコースティックギターにコンガの弾き語りはなかなかに上手く、それなりに観客にいるうちの学生や他学生に商店街の人やらから拍手を受けながら特設ライブステージの上から降りて来た。

 まだ外からは口笛や拍手、それに歓声が聞こえる。


 よし、次はいよいよ俺たちの出番だ。

 ソロじゃなくバンドとしてステージに立てる、第一歩なんだ。

 一瞬だけ体が強張り緊張するが、すぐにリラックスして万全の準備に入る。


「陽ちゃん、ライブ頑張ってね」

「おうっ! この俺に任せとけっ!」

「うん……って陽ちゃん、手っ。手と足が一緒に出てるよ? それに顔も少し強張っているし……やっぱ控え室で弾き語りをした疲れが抜けきってないのかな。大丈夫なの?」

「おうよっ! 万事バッチグーだぜっ!」


 どうやら俺の体はリラックスして万全の準備に整ってなかったようだ。

 頭ではわかっているのだが、なぜか俺の体も手と足も思考とは違う動作をしてきて、まるで自分の体の至るところに糸で繋がれて世界の外側からピエロみたいな道楽者が操り人に就いて演じられているみたいだ。


 俺は今まで路上ライブや喫茶店ライブなどをしょっちゅうしてた。

 人に見られるのも慣れてるし、冷めた視線を受けてもどんとこいだ。

 だからライブをすることに恐怖や緊張しているってわけじゃない。

 気合いが入りすぎて、体に無駄な力が抜けず入りすぎているのだ。


「熱川、リラックスリラックス。無駄な力が入りすぎてちゃよくないぞ?」


 三岳部長が俺の背中を軽く叩き、そう伝えてくれる。


「ういッス、バッチグーっすよ」


 さっきから俺の脳裏に"バッチグー"という単語しか浮かばない。

 リラックスと言われて、ますます熱気のこもった気合いが入ってしまう。

 自分でも強張った体と心にリラックスとわかるが、体中に力が漲っている。

 早く特設ライブステージの上に立ち、ギターと共に爆発させたくてたまらない。


「ええ、次の演奏者は、鐘撞学園男子軽音部(しょうどうがくえんだんしけいおんぶ)でーす!」


 来た、メイン俺らの出番来た!

 文化祭ライブ進行役のアナウンスが中庭の会場に響き渡ると、散発的な拍手と軽めの歓声が俺たち男子軽音部バンドの登場を出迎えた。


 今回の文化祭ライブにて男子軽音部ボーカル&ギターを受け持たされた俺は、"鐘撞"と言う意味で"Ring A Bell"を凝縮した"RABFES"と言う立て看板が飾られた下の特設ライブステージ中央にあるマイクスタンドのもとへと進み出る。


 俺がステージ上にテレキャスターのギターストラップを肩掛けして荒々しく現れると、中庭に形成されてる大勢の人がいる客席から『おい見ろよ、あのギラギラして闘争心丸出しの目と髪』『真っ赤なツンツン頭だ』『え、あれ熱川じゃん』『真っ赤な髪でテレキャスターはアイツしか居ない』などと言う、ひそひそとしたささやき声が聞こえてきた。

 わりと俺の名前は学園中に他学園、それに商店街でも知られているらしい。


 だけど客席の中には、『えー、熱川?』『うっわ、アイツが歌うの?』『頭バカなのに歌詞ちゃんと覚えてるの?』なんていう、女子の声も聞こえる。

 何割の女子に、騒動を確実に起こす俺はものすごく嫌われているのだ。


 ライブ会場の客席は、七割強八割弱で埋まっていた。

 確かに文化祭ライブでこれだけ埋め尽くされるのは大したものだ。

 けれど、それは俺や男子軽音部に他の共演者の力は一割程度だろう。

 おそらく、七割強八割弱で埋め尽くした客の大部分は俺たちの後である4番目に登場する二時世代音芸部(にじせだいおとげいぶ)バンドを見に聴きに足を運んだのだろう。


 悔しいがそれが現実であり、差と言える。

 最高にファッ〇ンでイカれてるのにカッコよさを演出する二時世代音芸部(にじせだいおとげいぶ)バンドの演奏は、文化祭ライブイベントだけじゃなく、もはや鐘撞大祭(しょうどうだいさい)そのもののメインイベントとなっている。


 あんまし1度こう脳裏でごちゃごちゃと考え出すと、アウェイ感マッハな中での初となるバンド演奏だというのを強く実感する。

 よっしゃ望むところだぜっ! その方が熱く滾って燃える展開だっ!


 俺は肩掛けしてたギターストラップをちゃんとかけ直し、俺の手元近くに相棒となるテレキャスターの確かな存在を確かめてから、また目の前に広がる人並みへと視線を向けマイクスタンドの傍に近寄り言葉を乗せる。




ご愛読まことにありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ