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LIFE A LIVE  作者: D・A・M
First:Track Rock Today Wake Up Tomorrow
49/271

48曲目

 俺の手元にあるギターネックの内側にある弦に触れ、コードを弾き鳴る。

 その音を確かめ、音作りでの音色を耳で聞き取り、練習へと静を出し励む。

 それを何度も何度も繰り返し、すでに時間の感覚もわからなくなった頃だ。


「ま、こんなとこか」


 俺はギターのネックから手をはずし、アンプの電源をOFFにする。

 そしてギターアンプに差し込んでいたシールドと同じくギターに差し込まれていたシールドを抜き、部屋の床に枕を置いて、その上にギターヘッドが置けるようにしソッと置く。


 うん、中々のいい出来で仕上がった。

 度重なる練習で痛んだ弦をニッパーで切りそのままはずす。

 今まで文化祭で演奏するカバー曲の練習として使用していたテレキャスターのボディと指板をクロスで丁寧に磨き、白いボトルを手に取ってギター専用のワックスをかけてからまたクロスで丁寧に拭く。

 そして部屋の中に無造作に置いてあった張替え用の弦である"D'ADDARIO"の箱を開けて弦を新しいものに1本1本慎重に張替え、ギターヘッド先に出た余分の弦をニッパーで6本とも切り、今では耳で聴きとれるようになったため軽くチューニングを済ませる。

 明日の文化祭ライブステージ本番に向けての激戦準備は万全だ。


「明日は全力で頑張ろうぜ。相棒」


 一気にリフレッシュした最高の気分で、慣れ親しんだギターを掻き鳴らす。

 この数週間バカの1つ覚えのように何度も何度も繰り返し、血となり肉となり骨となって体中に染み付いたフレーズをもう1度最終確認もかねておさらいする。


 別に威張って自慢することじゃないが、この数週間、俺はとにかく練習した。

 寝ている以外の限られた時間には、面白みもない授業中でも教科書を机に立たせてその陰で弁当やコンビニで買ったパンなどを食っていても、文化祭ライブで演奏()るカバー曲を口ずさみ、指は自分の腕や授業に関係が無い教科書を机の中から引っ張り出して指版代わりにしてコードを押さえていた。


 学園でも、男子軽音部所属の先輩たちと練習をした。

 俺は気に食わなかったが頭を下げ、練習に付き合ってくれと頼んだ。

 ケン以外の先輩や同級生がそれを見て唖然とし、馬鹿馬鹿しいとほざいた。

 けれど三岳部長を筆頭にその行動を見て動いてくれた人もいて、嬉しかった。

 部活動ができる時間一杯まで練習し、三岳部長や先輩たちが塾や予備校があると帰り同級生たちもその流れに身を任せて帰っても、ケンに付き合ってもらって部室の音楽室で何度も何度もカバー曲を練習した。


 学校終わりだったり休みの日は、小学高学年の頃からずっと慣れ親しんだ路上ライブ場所までアコギの入ったギターケースを背中に背負い、朝昼夜と関係なく道行く人目も気にせずに俺の仕上げたオリジナルと共にオープンコードに変換したカバー曲を弾き語りした。

 人々の反響はやはり十人十色な感じで、聴く人もいればバカにする人もいた。

 ある程度時間が経つとケンを筆頭に稔と結理が路上ライブをしている俺のもとへと来て、俺の近くにいては俺の歌う姿をバカにしたりただただ静かに聴いたりして、曲が1つ終わる度に甘口から辛口までありとあらゆる感想を述べてもらったりアドバイスもくれたりもした。

 稔の店まで行ってそこで客の前で弾き語りしたこともあったっけな。

 そのときはお店に来る人々から拍手ももらったが、それは俺だけの力じゃない。


 独りで音楽と向き合ってた頃には、絶対に気付けれない大事なことを知った。


 ああ、そうだ。

 必死に練習に励んで頑張っていたのはなにも俺だけじゃない。


 男子軽音部での部活動に顔を出しては練習し時間が終わっても無理を言って遅くまで1人でカバー曲を練習した帰り、廊下を歩いてそのまま女子軽音部の部室の前を通りかかると、稔たちの練習する音と歌が聞こえてくることが多々あった。

 そんな完成度の高い演奏を耳にした俺は慌ててきびすを返しては部室に舞い戻って、稔たちの怒涛で緻密な練習が終わるまでひたすら練習をし歌詞を何度も見直してはまた練習と明け暮れた。

 努力しないとダメな俺が練習量でも負けたらそれこそ話にならない。


 あの日以来、休みの日には必ず路上ライブをする俺のマイベストポジションにアコギケースを背負って行けば、そこには"Gibson"のアコースティックギターを抱えて人前で歌う稔と"Guild"のアコースティックベースを抱えてバッチリな低音を刻む結理が陣取っており、苦渋の決断を強いられた俺が遅れて来たケンと共に立ち止まる人々と彼女たちの演奏を聴いてたこともあった。


 まあ、すぐに申し立てて場所を譲ってもらい俺とケンが演奏したんだが……。

 俺らの演奏と彼女らの演奏での集客レベルは天と地ほどの差を見せつけられた。

 悔しい、そんな気持ちも生まれたがそれよりも"凄い"という感想で(いろど)ったのだ。


 だからこそ俺は心の底から思えた。

 負けられない、大好きで俺の人生を変えた音楽だけでは絶対に。


 そんな焦燥感に駆られて、また時間を忘れてはひたすら練習に励んだ。

 ギターと弾き語り漬けな日々はまさに光陰矢の如し、刹那として過ぎていった。




ご愛読まことにありがとうございます!

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