35曲目
勝負事で初バンドライブにて伝説の時世代音芸部との対バン。
燃える展開、しかしいきなり初のバンドライブステージで対バンなのか……。
まあこちらとしては別に負けてやるつもりも、手を抜くつもりも……んっ?
「あ、そうだ。なあ結理、一つ俺に面白い提案があるんだが」
「んっ、なによ? どうせロクでもないことでしょ?」
「まあそう邪険にせず聞けって、俺が今回の文化祭ライブで観客を大盛り上がりにし実質上勝ったら、音楽の先輩でもある俺の弟子になるかこれから先は俺のことをバカとかアホとか抜かさず『熱川様』と愛情を込めて呼ぶ。どっちかを選ばせてやる。俺はそういったとこは謙虚だからな」
「はぁっ!? イ・ヤ・よ。なんであたしがアンタなんかにそんなバカげたことをさせられなきゃならないのよ。まず第一に、アンタら男子軽音部にアタシと稔と奏音ちゃんが入った時世代音芸部が負けるわけがないでしょ? なに陽太、アンタもしかして底知れぬバカなの?」
結理はそうツンとソッポを向きまったく提案に乗ってこなかった。
まったく、面白みもなければそれに輪をかけて言葉を足してきやがる。
こういったアメリカンジョークも笑ってツッコむのが当たり前なんじゃないの?
「まあ待て、今のは冗談だ。猪突猛進ガールのお前なら乗ってくると思ってな」
「……ねえ陽太。口はともかく、あんま舐めた態度取ってると噛み付くからね?」
冗談を聞かされた結理はギラリと睨みつけて、俺は思わず後ずさる。
万物の生物の中にある危機感知能力が無意識に働いたのだろうか?
いや、確か俺にはこの後ずさった理由はちゃんとあった。
そういや結理は小学生のときの得意技は噛み付きに突進に睨みつけるにばくおんぱとかいう、某不思議な生き物が生息する世界の中それらをゲットし扱う人間の魔物同然の技構成を持っていたし、俺も"行けっ結理〇ング!"とか言って手痛い目にあわされてひどくやられたことを思い出したな。
今の結理からはソレとまったく同じ気配を漂わせており、地雷を踏んだかも。
「結理、そんなに怒るなって。ただの友達と会話する中で出てくる冗談にすぎないんだ。笑って許してくれや。俺の冗談はともかくとして……あのとき交わした約束はもちろん覚えているよな?」
「約束? ……なによソレ?」
俺はその言葉を訊き思わず目を見開き、マジかと心の中で呟く。
それと同じ瞬間、俺の中には不平不満と嘘だろという感情と言葉が入り混じる。
おいおい、まさかあのとき交わした約束を忘れてるわけないだろうな?
「ほらっ、2から3メートルは近づけず体も触れないっていう稔との規則での約束だ。あんときは感情の赴くままにやっちまって俺だって反省はしているけど、稔が俺のことを認めて本気で好きになったらその規則は無効って約束をしてくれただろう? ちゃんと覚えているよな、忘れてたら俺はお前の頭にパチキを食らわす」
俺は自慢の真っ赤な髪がある頭を思いっきり前後に振り威嚇する。
その姿が凶暴な水飲み人形を想像させてくれるほどに怖くて不気味だ。
結理はその頭突きをする動作を見て顔が引きつり、ヤバいと思った。
それもそのはずだ、結理が噛み付きなら俺は頭突きで牽制してたからだ。
俺の怒りが有頂天を越え最高潮まで高まったとき、男女関係なくかましてた。
激怒した俺の掛け声はなんだったか、確か『熱血!』とかいってパチキしたな。
それを受けた当時のいじめっ子や友達の結理とかは謝罪はしたが止めなかった。
知らないのか? 怒りが有頂天越えをした俺はしばらく留まることを知らない。
ああ、確かに男女差別関係無しでやるが、片思い中の稔にはしたことがない。
当たり前だ、あんな天使で可憐な美少女に手を上げる輩がいれば万死に値する。
「ちょ、ちょっと陽太。やめなさいよ! アンタのその頭突き、すんごく痛いんだから……というかアレでしょ? あのとき稔との規則を作ったときと同時に交わした約束のことでしょ。心配しなくとも、もちろんちゃんと覚えているわよ」
目が見えたことに感謝した後すぐに新たな悩みごとを与えられた稔が救世主であり破滅敵にもなった俺のことを好きになるか、生まれたときから短い生命という運命を右ストレートでぶち壊して普通の女の子として暮らせる人生の中で完全に男性恐怖症を克服できたとき、自動的にこの規則はなくなる。
これは、元凶である俺の方から稔のもとに近づけないのは百歩譲って納得できるが、男性恐怖症とはいえ稔の方からも俺のもとに近づけないという強制的な規則をさせるのはいかがなものかという話をしたときに、数分間考えて認めてもらった恩恵の特例である。
俺は結理からその約束を覚えていることに思わずガッツポーズを出す。
「鬼の形相して凄んで来てる癖に、まさに鬼の目にも涙のように目元に涙浮かべて頼まれたもんだから、さすがに私も稔の気持ちを動かして人生を変えてくれた恩人に言い過ぎたかなって思っただけよ。ああでも、アンタには一生懸けても無理だと思うわよ。おとぎ話とかに出て来る白馬の王子様みたいなカッコいい人が、白雪姫の稔にかけられた魔法を解いてくれたほうがお話としては美しいし最高にいいシーンだと思うのよね。アンタどうみてもそんなキャラじゃないし、むしろ悪役に匹敵って感じの見た目で顔つきじゃない」
いきなり白雪姫と評された稔は思わず顔を赤らめ手で顔を覆い体を揺さぶる。
なんだあの超絶に可愛くて思わず吸い込まれそうになりそうな体つきの生物は。
直視してしまうとまた発作が起こりそうなのでチラ見だけに留めるが、歯痒い。
というか、俺を村人どころか敵対する悪役に仕立て上げるとはどういう了見だ。
いや、ここは発想を逆転して考えてみよう。
世の中には悪には悪の英雄や救世主が必要だとか、なんかの漫画で読んだな。
つまり悪役とは1つの主人公で主人公とは白馬の王子様にも匹敵するわけだ。
それに最高の主人公もいるんなら、最高の悪役だっていてもおかしくはない。
うんなるほど、今そう考えた俺自身もよくわからない状況になってしまった。
「結理。お前が言ったことは確かに的を射てると思うが、ここは気持ちをクールにして思考も冷静に考えてみろよ。もし今こんな近代未来化が進んでる世界の中である目の前に、おとぎ話では主役であろう本物の白馬の王子様が音もなく現れたとしたら、おまえだって絶対に絶句して引くぞ? いいか、馬ってのは遠くから見るとそうでもないが、いざ近くで見ると相当デカいもんだしな。カッコいいはともかくそんな美しいとか言っていられないと思うぞ俺は」
「あのね、今そういう話をしているんじゃないでしょうが。このバカ陽太!」
「一々人の名前にバカとか付けるんじゃねえ! とにかく、そういう絵空事や夢物語なんてもんは抜きにしてだ。稔が俺のことを本気で好きになったら、2から3メートルは近づけず体も触れないとかいう件の話は無効だからな。……稔もそれでいいんだよな?」
「えっ? う、うん。そうだね、好きになったらそうなっちゃうよね」
稔はさっきと同様に頬を赤らめ恥ずかしい気持ちの照れ隠しに髪を弄る。
その仕草が俺の心にくすぐり、自分の中に眠る魔物を押さえるのに精一杯だ。
「だったらなんだって言うのよ?」
結理が訝し気に俺を眺めて興味無さそうに言う。
照れる稔も興味薄い結理も話を聞くケンも少しだけ黙る。
俺は大きく深呼吸をし肩の力も一切抜いて、一気に目を見開き宣言する。
「今年の鐘撞学園文化祭、俺は熱くて楽しくてカッコいい……最高峰で最高潮に魂を高ぶらせる演奏をしてやる。そこで必ず、あの伝説の時世代音芸部の意志と楽曲を受け継いだ――二時世代音芸部バンドに勝つ」
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