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LIFE A LIVE  作者: D・A・M
Third:Track To Chain To Feather To Sun To Chasers
248/271

247曲目

 ガムシャラに弾き、叩き、歌い奏でる爆音で吹き荒ぶ嵐。

 螺旋のように描く観客たちの鼓動を身心に刻み音を出し続ける。

 アッキーもソウもリズムが全くブレず、ケンも命の灯を燃やし尽くす。


 そうだ。きっとそうに違いない。

 例えこのまま、キラキラに輝く最高のステージの上でくたばったとしたって、それならそれで本望じゃないか。

 いや、できればこのまま命が尽きてくたばってしまいたいぐらいだ。


 ハイスピードで流れゆく景色が熱気と勇気に彩られて清々しい。

 笑顔の華が咲き乱れ、掛け声となる鳥みたいな歌声が合わさる。

 こんな日こそ俺たちや観客、稔たちや笹上さんたちには――


 ――太陽の業火に焼かれるほどに狂おしい音楽に酔いしれよう。


 FからGへとコード進行が進みサビへと突入する。

 曲のサビに入るのもオリジナルとはいえ、テンプレート染みた進行だったので観客も直感的に『サビに入るぞ!』って感じで大盛り上がりで拳を上げたり発狂に近い歓声を上げ続けた。


 腐り切ったしがらみに、1つを捨ててまた手にして。

 不条理なるこの世界に、中指立ててRebellion(リベリオン)The()World(ワールド)

 1つの音でもいいのさ、1つの声でもいいのさ、だから。

 俺の中でなにかが歌う、陽照りのあるストーリーを……。


 サビを聞いた瞬間に沸騰するが如く血が滾りアドレナリンが爆発する。

 熱い、熱い、熱い、体中に流れる血がマグマのように熱く演奏に没頭する。

 大爆発のような爆音の演奏に同じく没頭し観客を巻き込み渦巻くほどの力強いベースプレイとドラミングを奏でるアッキーとソウを尻目に、体力がもう限界に近いだろうケンの方を見てみる。


 まったく同じだ。

 誰よりも音楽を楽しむことを、ケンにしかできないことをしている。

 真っ暗な夜空に輝く一番星のように病気なんてどこ吹く風に見える。


 まあ、力尽きてぶっ倒れても安心しろよ……。

 くたばったらくたばったでそのときの話だし、そんなことが起こったときは俺がしっかり骨を拾ってやるからな。

 後のことは全部ひっくるめて太陽になる俺に任せておけよ。


 しかしケンよ。今日のステージ上でギターを構えて弾いてるお前の姿が本当に輝いているな。今のお前は世界中にいるどんなに優れているヤツよりも、いや、俺なんかよりずっとずっと太陽みたいじゃないかよ。

 ライブ衣装も黒字のTシャツに背中に白文字で太陽と書かれた俺と同じ服を着ているってのに、スポットライトの光をも吸収してライブハウス全体にキラキラの煌きを放ってやがるんだもんな。


 今こうして最高のステージの上で歌と楽器で演奏する俺たちは、ギターをカッコよく構えて弾いてるお前の持つ命の灯を最大限に引き出した輝きに照らされて、こうして輝いているみたいなもんだもんな。

 くそう、ちょっとばかり悔しい気持ちだぜ。


 いや、俺だってお前の輝きに負けるもんか。

 お前が命にある熱い魂を燃やして力強く輝くなら、(つい)なる俺はもっとたくさんの大事なものを太陽の業火で燃やして輝いてやるんだ。

 当たり前だ、俺たちはこの瞬間を待っていたんだから……。

 そのためなら、なにを犠牲にしたってかまわない。

 今この瞬間、コイツらと演奏できる一瞬があればいい。

 そのぐらい、今がかけがえのないものだって俺にはわかる。

 熱く、速く、観客のすべてを包み込む光さす道のとなるんだ。


 ああ、ケンが虚空な俺に言っていたのはこういうことか。

 アイツはやっぱり俺が考える枠に収まらない、最高の親友だ。


「そうだよ。今この瞬間は僕たちの、かけがえのないものなんだ」


 上手でギターを弾くケンが一瞬だけそう答えたような気がした。

 いや、実際には言葉を交わしたわけじゃないし伝わることもない。

 だが、ケンの手によってゴキゲンに奏でるギターがそう言っている。


 正確無比かつ阿吽の呼吸で土台を刻み続けるリズム隊の2人に力を借り、マイクに向けて観客に熱く楽しんでほしいという願いと覚悟を秘めた歌を唄い、ケンとともに最高のギタープレイを感覚で合わせ互いのロック系テクニックを弾き、観客たちのアドレナリンもボルテージも最大限に引き上げていく。


 今の俺たちに言葉も意思もいらず、感情と決意だけでいい。

 いつもの日常的な言葉でなんか交わさなくても、こうして一緒に肩を並べてサイコーのステージに立って相棒を抱えて演奏していれば、ケンがなにを考えてなにを俺たちに伝えたいのかなんて手に取るようにわかるんだ。


 残り僅かな火を最大限に燃やし、命懸けでステージに挑んで優勝へと掴みに行こうとしているケンだけじゃない。それこそともに絆を深め合い実力もプロ級まで駆け上がったアッキーだってソウだって、"Sol(ソル) Down(ダウン) Rockers(ロッカーズ)"としてソルズロックを体感するみんなの気持ちが音と一緒に俺の中に流れ込み熱く滾らせ続ける。

 みんな同じ気持ちで今この場にいるってことが手に取るようにわかる。


 まあそんなのは、今この瞬間だけのものなのかもしれないけどな。

 こんな気持ちで演奏できるなんて奇跡に近いことなのかもしれない。

 でも、小難しいことはこの際抜きにして、それでもいいじゃないかよ。

 ずっと願ってた【今この瞬間】がサイコーに熱く輝いてるなら、キラキラでギラギラの入り混じった光に包まれて演奏ができるなら、それでいいじゃないかよ。


 後サビに入る前に()るそれぞれの楽器ソロへと突入する。

 リズムもビートも崩れることなく自分たちの色を出せるテクを魅せつける。

 観客も審査員席も稔たちも釘つけにするプレイをし終わり、爆音に導いてく。


 思った通り、俺たちはどのバンドよりも熱くてサイコーだったな。

 バンドを組むためにお前らを選んだ俺の目に狂いはなかっただろ。

 ド素人だったのに努力と経験を経てどんな光よりも輝けるんだぜ。


 ありがとうな、凡人で孤立してた俺に離れず一緒にいてくれてさ。

 ああ、俺たちはどんなヤツよりも熱くて楽しくてカッコいいぜ。

 サイコーだ、俺たち陽没の熱演者はロックの有頂天に達する出来だぜ。


 しかしケン、今日のお前は本当に誰よりも輝いてやがる。

 命を、太陽の業火に燃やして出し切ってるのは伊達じゃないな。

 悔しいけど仕方がねぇな、今日だけは俺も完敗だ。

 だけど、お前に負けとくのはこれが最初で最後にさせてもらうぜ。

 理由は簡単だ。俺はこれからの未来でもっともっと輝いていくんだからな。


 世界中に熱く輝かせる太陽の光で、俺の演奏で出す色で塗り尽くす。

 それがこの先に続く絶対条件であり、必ず起こる未来なんだから……。


 デタラメでダサいノイズでも、0は1に変えれるぜ。

 この世に無理も無駄もねぇ、あるのはただ己の弱さ。

 熱き魂燃やし出せ、零未来(ノーフューチャー)をぶち壊せ。

 あの日の夢叶えるために、Go(ゴー) For(フォー) It(イット)! Hard(ハード) Air(エアー) Drive(ドライブ)!!


 サビが終わり最後となる佳境へと突入する。

 俺たちはもう汗だくで立っていられないほどの体力が消耗してる。

 だけど決して崩れ落ちず、最後の最後まで鼓動を鳴らし続けていく。

 もうオリジナル曲が終わりに近づく中、もう1度ケンの方を見る。


 いいか、ケン。

 お前はこの先の人生で動かなくなるのは必然だ。

 だったらお前の代わりに想いを背負い込んで音とともに進んでやっから、お前はゆっくり休んで俺のことをずっと見ていろ。


 たとえ長ったらしい不治の病に体を侵食されて歩けなくなったって、指先1本も動かなくなったって、まともに喋れなくなったって、ずっとお前の願いを背負って進んでいくから俺のことを見ていろよ。

 親友の俺はいつでもどこまでもお前のそばにいるからな。

 どこにいたって、太陽を奏でる音楽とともにお前のそばにいるから。

 それだけは決して忘れるな、いや、忘れないでくれ。


 俺の中でお前が生き続けているなら、お前も生き続けるんだ。

 だから俺のことも忘れなければ、俺はいつでもお前のそばにいる。

 必ずこのクソッタレた世界に太陽の爆音を轟かせるから、忘れるなよ。


 熱いライブハウス内で観客を味方に出来た俺たちは、とうとう逆境を覆した。




 ご愛読誠にありがとうございます!

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