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LIFE A LIVE  作者: D・A・M
Third:Track To Chain To Feather To Sun To Chasers
229/271

228曲目

 毎度毎度、投稿遅くなり申し訳ありません。

 リアルの仕事が、もうね……忙しすぎる(泣)

 バンドのために夏休みの合宿からずっと体調が優れない様子の親友。

 昔から振り回し接しても決して裏切らず、俺の音楽を共に歩んだケン。

 そんな彼が咳き込んでも、言葉が途切れ途切れになっても、決意を抱いた。


「ゲホッ……もう、陽ちゃん、本当に大丈夫だからさ。心配するのは、僕の専売特許なんだから、陽ちゃんはいつも通り前向きで太陽のように居ればいいんだよ。それに僕、明日は、絶対に優勝したいんだ」


 立ち振る舞いも言葉の力も弱いのに、覚悟を感じさせる意思だ。

 珍しく、勝負事の嫌いなケンが勝敗に対するこだわりを口にした。

 俺がびっくりしたのも当然のことであり、ケンは本来、勝負事など優劣を決めるようなことにはあまりこだわりもなければ話にすら出てこないタイプなのだ。

 コイツは本当に性格と人柄がほんと優しすぎるんだよな。

 それなのに、明日のコンテストでは絶対に勝ちたいと意思を込めて言う。

 ああ、ここまで俺好みで嬉しい手の平返しってのも悪くはないもんだ。

 最高の演奏をかまして優勝も手にするって一挙両得と洒落込むべきだな。


「へぇ~、ケンがそんな勝負事に出る言い方するなんて珍しいな?」

「え、そうかな? 普通、だよ。だって、明日のコンテストではどうしても僕は勝ちたいんだ。バンドコンテストでバンド名を世に売り出すってのもあるけど、もっと大切な、目には見えない大事なことがあるから勝ちたいんだ。みんなだってそうだよね?」


 様子がおかしくても意思を曲げないケンに問われ、アッキーとソウが頷き返す。

 太陽の象徴となり得るメンバー3人とも、優勝以外は何も考えてないって顔だ。

 そうだ、勝負に出る俺だってもちろん同じ気持ちだし、全く負ける気がしない。

 この熱くて楽しくてカッコいい演奏ができるメンバーで、伝説を築き上げたバンドから楽曲と名を引き継いだ【二時世代音芸部(にじせだいおとげいぶ)】を下して優勝し、笹上さん率いる【New(ニュー):Energie(エネルギー):Ours(アウアーズ)】をも勝負事で打ち倒して天下を取る――そのためだけに、この高校2年生に置ける素晴らしい夏の全てを捧げてきたんだからな。


「ああ、もちろんだぜ! バンドに関してド素人だったヤツらが最高の舞台に立てるんだ。最大限に楽しめる演奏を出して観客を盛り上げられるんだから、俺たちには優勝しかあり得ないだろ! 明日のコンテスト本番では絶対、世界中に名を轟かすソルズロックバンド――"Sol(ソル) Down(ダウン) Rockers(ロッカーズ)"が優勝をもぎ取ってやるんだ!」


 俺は力ある限りサムズアップしてからガッツポーズを決める。

 必ず優勝するんだという意志を肌で感じた3人も同調し拳を握り上げる。

 勝利、太陽みたいに熱い魂を持つ4人の考えることはまったく同じだった。


「うん! 絶対僕たちの演奏で盛り上げて、優勝しようね!」


 ケンもその熱さに当てられて咳も震えも止まっていた。

 そこにはもう軟弱で気弱な親友の顔つきではなかった。

 彼の自信に満ち溢れた顔を見て俺もつられて笑ってしまう。


「ハッハ、なんだ元気じゃねえか。ならもう心配なんてしてやらないからな? ちょっとぐらい足から崩れて捻挫して痛くったって、咳き込んで熱が出たからって、アルコール依存症みたいに手の震えや滑舌がおかしくなったって、明日だけは気合いと根性でなんとかしろよな!」

「あはは、うん、こっちだって望むところだよ」


 ケンはコンテストに勝利することが絶対だと気合いを込めて言う。

 ケンのいつもよりも爽やかでカッコいい笑顔は、今さっきなにも無いとこでみっともなく転んで痛がってたとは到底思えないほど、頼もしいものに変わっていた。

 元から楽器の上手さに定評があったアッキーやソウが今回の合宿で底上げされて腕前が上手くなったのもそうだが、音楽の才能がからっきしな俺はもちろん、呑気でとちるのが当たり前だったケンも見違えるほどにギターが上手くなったし作詞作曲という才能も開花されたんだ。

 それだけで、3人に俺の背中を預けられる安心感がある。

 なんだ、やっぱり俺の心配はただの杞憂で終わったようだ。

 小学高学年にてソロシンガーソングライター時代からどうも、なんでも言うことを聞いて後ろに付いて来るケンに対しては親戚か実の兄貴みたいな気持ちになっちまって、必要以上に過保護になっていけないな。

 昔の好奇心からイジメていた罪滅ぼしの気持ちなのかもしれないが、正式には同年代のイジメっ子からケンの前に立っては身を(てい)して守りながらも拳で会話してたってのが妥当なのだが、そんなのもうだいぶ昔のことだってのにな。

 そう考えるとホントに真面目で律儀だよな。

 まあいい、とにかく明日の本番は全力で挑むのみだ!


 無言のまま俺が両手を広げると一瞬にして理解した3人が同じように両手を広げ、それぞれの肩に手を置いては指で掴み、運動部が試合前にする円陣のように組み出した。

 大きく深呼吸してから1呼吸置き、一気に空気を吸い力を込める。


「よし、お前ら! 明日は絶対に俺たちが優勝するぞ!」

「「「おおう!」」」


 終了3分前のスタジオ内で雄々しく高らかな声が響き渡る。

 コンテストに参加するバンドと最高の対バンをする最後の音合わせ、隠れ家的なスタジオ使用終了1分前には4人とも室内から出れそのまま会計の方へと進み、割り勘で集めたお金を支払ってからスタジオの外に出て歩道に歩みを進めて、俺が肩を貸して歩くケンが元気になったのを確認してから、宣言通りに道なりにあるラーメン屋に立ち寄って大盛を食してそれぞれ帰路に着いた。




ご愛読まことにありがとうございます!

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