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LIFE A LIVE  作者: D・A・M
Second:Track I’m Truth Sols Rock” N” Roller
209/271

208曲目

常識だけではプロにはなれない。

努力と熱意、そして経験が物を言う。

だからこそ、決して折れない心が大事。

 この世には2種類の人間がいる、と俺は思う。

 ソレは現実的に考えて生きる軟弱者と夢を追い求め賭けに出る熱狂者。

 もしかしたら現実的に生きるのは軟弱じゃなく戦士や勇気ある行動だと思えるが、俺にとっては音楽で世界を変えられると考えているからどちらにせよつまらない生き方にはなんら変わらない。


 バカげているけどバカとは言えず、見えるけど見えないモノを追い求める。

 愚行だと虚像と思えてもひたすら走り続けるのがバンドマンかもしれない。

 俺は静かなる夜空を片思いを寄せる彼女とともに、1歩また1歩と進める。


 歌詞も歌メロも上手く決めれずに、焦燥感に苛まれる音楽人の構図。

 答えも真実もパンドラの箱にしまわれた、ゴールの無い航海をする者の末路。

 そんな虚しい俺に解答じゃないけど、コツを教えようとする稔の気配がした。


「熱川君、そんなに焦ることはないんじゃないかな? だって私も最初はそうだったよ。【二時世代音芸部(にじせだいおとげいぶ)】として正式に加入して作ったオリジナルもまだ5曲ぐらいしかないけど、一番最初の曲を作詞や作曲をするときなんて物凄い悩んだもん。それもたくさんの時間をかけてもまったく噛み合わなかったことも多かったよ」


 そう言葉を風に乗せ届ける稔はまた夜空を見上げる。

 柔く可愛らしい声に風の道が形成され、そのままどこかへ飛ぶ。

 その声がきっと、世界中のどこかにいる誰かに届くかもしれないな。


「でもね、音楽って世間の常識に縛られるようなものじゃないでしょ。そう教えてくれたのは誰でもない、熱川君だったんだもん。だから好きな物の事を好きなように書いたり、ギターを構えて弾いて、マイクを通して歌ったりしてたら自然に歌になってたんだ。それから作詞作曲や歌い方のコツが段々わかってきた感じかな?」


 また夜空を仰ぐ視線を戻して俺の方を覗き込むように見る。

 だから安心してよ、と、そう言ってくれるような顔色と表情だった。


「好きな物の事を自分の好きなように……書いて歌って、か」


 ああ、忘れていたのか俺、バカだよな。

 ずっと心の中で俺が俺であるためにって言ってたのに、いい歌詞ができないとか最高な歌メロが浮かばないとか、そんなクソッタレな心情に負けてしんみりしやがって……なにが俺が俺であるためにだ、ぜんぜん俺らしくねーじゃねえか。

 それを、盲目だった女の子に言われるなら、尚更俺らしくない。


「だからそこまで気にすることも……あれ、熱川君?」


 稔が俺の変わった表情と考え込むのに指摘して聞き返す。

 だけど今の俺は思い(ふけ)って答え合わせをするみたく、呟く。


「好きな物を、好きな事をただガムシャラに……歌って()れば」


 ブツブツと呟き、自分の信じれる声道を試行錯誤する。

 まったく話を聞いてくれない俺に稔の顔つきも少し険しくなる。

 俺の元に近づき履いてるホットパンツの後ろで両手を組み、前屈みになっては胸元にある規格外の爆乳が重力に逆らえず真下に向いて垂れ下がってもお構いなしに、上目遣いながらもジト目に近い視線を出してもう1度俺に言葉を返す。


「おーい、熱川君ってば!」


 痺れを切らして大きくなった稔の声が静寂と化した世界に響き渡る。

 瞬間、バラバラの歯車が噛み合って動き出したように、心が爆発し体が(はじ)けた。


「そっか、わかったーっ、いよっしゃーいっ!! ああ、そうだ、すげぇよ稔! 例え俺から影響されて音楽を始めたって言っても、やっぱお前はすげぇ! まさに音楽の女神様だ。お前の言ってくれたコツとやらを聞いて、なんか見えた気がしたぞ! つまり俺には人生においてこれしかないって物や事を俺なりに書いて歌えばいいのか! ソロのときにあった熱気をそのままバンドにも通じてやればよかっただけのことか……こりゃ気づくわけねーわな!」


 我を貫き通して作り出す歌と曲で行け、そのまんまの解答だ。

 バンドだから、人と人で思いが違うからって考えがまず間違いだったんだ。

 思わず隣で前屈み気味から跳ねるように飛び上がった稔の体に抱きついて、その豊満を通り越して神乳となる大きな双丘に顔を埋めてみたいという欲求と衝動に駆られたけど、人として踏み外しちゃいけないなにかが俺を咎めてくれて頑張って我慢した。すごいぞ、偉かったぞ、踏みとどまった俺よ。


「そうだよ! なに頭ごなしに悩んでいたんだ、バカじゃねえのか俺! 作詞作曲能力とか楽器の腕どうのこうのなんて意味を成さねえ。だってシンガーソングライターとして活動した瞬間から、音楽とロックしか無い俺に、あのときの出会いから稔の存在を知ったお前しか俺にはなんも無いんだ! だったらソレについて歌詞を書いて、歌メロを作って、ドカンと()ってやればいいだけのことじゃねえか! やっべえ! 見つけたぞ! 俺には今はっきりとその先が見えたんだ!」

「はぁ……そ、そだね。うん」


 勢い任せで口にする俺を稔はただ茫然と賛同するだけだ。

 それでもいい、何故ならただ、やるべきことが定まったから。

 片思い中の自分と片思いを寄せる相手、これが本当なら恋人同士でいれるならもっとよかったがどこか可能性に秘めて、それこそ世界中に甘酸っぱい青春として自慢できる姿で過ごしていたのだった。




ご愛読まことにありがとうございます!

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