表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LIFE A LIVE  作者: D・A・M
Second:Track I’m Truth Sols Rock” N” Roller
208/271

207曲目

恋心をテーマにした曲。

それを文化祭のライブで披露する。

ものすごーく甘酸っぱい青春だな〜…。

 初となるバンドオリジナルの歌詞と歌メロが決まらない。

 歌メロはメインボーカルとして歌う俺がどうにかするで話は落ち着いた。

 しかし当然歌詞の方はバンド内でも会議になったが、精神と音楽の修行の成果によって皆演奏は出来るが歌詞を作詞となるとお門違いなようで、蜘蛛の子を散らすようにまったく意見が噛み合わずにまとまりを成さない。


 そのときに浮かんだのは、難航フラグという言葉。

 そしてこれはヒドイ、そういうしかない意見ばかりだった。

 俺は会議で出された単語を脳裏に思い出して、苦笑してしまう。


「いいか陽ちゃん。歌詞の中に必ず『世界中の女はすべて俺の物』ってのと『自由と快楽こそが未来の懸け橋』的な感じの単語を入れろ。そこだけは俺が歌うぜ」


 アッキーがそう煩悩だらけなことを言い出したり……。


「自由もいいけどやっぱ平和っていいんじゃないかな? どっちも『Free(フリー)』って付くじゃない。英語に直すと自由は"Freedam(フリーダム)"でドイツ語に直すと平和は"Frieden(フリーデン)"と言うんだし、僕たちのオリジナルに入れるべきじゃないかな」


 ケンが平和と自由を象徴させ人は皆幸せに満ちていると言ったり……。


「禅門答にて論破させる関係もいいのではないか? これを什麼生説破(そもさんせっぱ)と言うのだが、これは常識を打ち破れることにも適しているのだ。自分という枠組みや固定観念を捨てて、世の無常、仏の教えを文字と頭ではなく心で悟るのが禅というものであり、論理や自分という存在に囚われた思考をしていてはいけない。そしてこれに気づかしてくれ想像力を育むことこそが禅問答であり……」


 ソウがまた小難しい仏教話に入りそうになるのを止めたり、と。

 なんだかこのクソッタレな腐敗に満ちた世界に熱くて面白くてカッコいい"ソルズロック"の生み出すことも出来そうになく、そもそもロックンロールに程遠い万物の産物に成り変わりそうなので、結局のところ作詞作曲とシンガーソングライター歴として経験がある俺が歌詞を書いて歌メロを考えるという両方をしなくちゃならないことになった。

 どうしてこうなった、と俺は肩をすくめてため息を漏らしてしまう。


「なぁ、稔達の作詞作曲した曲の歌詞っていったい誰が書いてんだ?」

「えっ? んっとね。まずは思いついた歌詞をそれぞれみんなで持ち寄って、私がまとめてるよ。最終的にはその歌詞のままみんなで合わせてみて、ギターを弾いて歌う私が調整する感じかな」


 おお、なんだソレ。

 中々いい感じの構成で曲を作り出すんだな、すごいぞおい。

 あ、もしかして初代の人たちもこんな感じでしてたのかな?


 とはいえお世辞じゃなく、本当にすごいと感じてしまう。

 それで文化祭本番のときにあの出来か、それもうなづける。


「そうか。俺たちみたいな厳かなやり方じゃなくちゃんとしたやり方で作詞作曲しているんだな。それじゃ納得できるぜ……だってこの間の鐘撞大祭(しょうどうだいさい)の時に()った曲、かっこよかったぜ。そらもう、体も心もビンビンにハジケれたからな」

「えっ? ほ、本当? そ、そうなんだ。えへへ。ありがとね熱川君。わぁ~、シンガーソングライターとして活躍してた人から褒められるってのもいいなぁ。私もあれ結構気に入ってるんだ」

「よしてくれ、昔の話だ。それより演奏した曲はなんて曲名なんだ?」


 俺の問いに少し考えるように夜空を見上げ、すぐに俺の方に向き直る。


「あの曲は、『You're My LovinForever!』って曲名だね」


 なるほど、永遠となる私の愛ってあなたのためにあるって意味か。

 なんだか甘酸っぱい感じなのにどこかズンとくる音と歌だったな。


「へぇ~そうなんか。その曲名にどんな意味があるんだ?」

「んっ? えーっとね、どうしよっかな~……うふふ、やっぱりダメ。曲名の意味は内緒にしとくね! 知りたいんだったら、ちゃーんと意味を考えてみるのもいいんじゃないかな?」


 稔はまるでハロウィンの子供みたいに悪戯な笑みを零す。

 しかも俺の方に振り向いては小さく舌を出してるのもキュートだ。

 だけどそれじゃ腑に落ちないと思え、俺は見てわかるほどに慌てる。


「えへへ~、ダメだよん。歌詞の意味はな・い・しょ・です! でもそんなに知りたいんだったら、今度のバンドコンテストまでのお楽しみって事で待っててよ」


 稔は自分の口元に人差し指を付けてから前に突き出す。

 なんか諭されたみたいで納得いかないが、ここは一歩引く。


「ちぇ~」


 俺はそうワザとらしく言って腕を頭の後ろにやって不貞腐れる。

 その子供じみた行為を見て稔はその先を察したのか、不安そうな顔を見せる。


「ねえ熱川君、もしかして歌メロも歌詞も上手くいってないの?」

「それはある。だけど別に上手くいってるとかいってないとか、そういった事じゃない気がする。ソロとバンドでの歌詞はやっぱ違うって思い知らされてるみたいでさ。つーかどうやって書いていいのか今まではわかってたのに、まるで暗闇にいるみたいで全然わかんねえんだ」


 俺はそこで一度言葉を切り夜空にある空気を掴むように手を伸ばす。

 そして掴むと当たり前だがなにも無く、虚しく空を切るだけに終わる。


「こんな感じでさ。言いたい事や成したい事も、思ってる事ややりたい事は両手から零れるほどにありふれてるんだけど、いざバンドの曲にして手掛けて歌うってなると上手くまとまらなくてな」


 ソロで手掛けてきて生きてる死んでるも合わせれば軽く100は越えてる。

 それなのにこうも、まるで策士策に溺れるみたいに空虚な気持ちにさせられる。

 それがなんだが悔しいのに、辛いのに、どこか望んでいる自分がいるみたいだ。




ご愛読まことにありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ