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LIFE A LIVE  作者: D・A・M
Second:Track I’m Truth Sols Rock” N” Roller
180/271

179曲目

 敵陣に突っ込んで来たバンドと結理に向けてノリツッコミを入れた直後。

 怒り狂い気味の俺の隣に近寄ったアッキーがキョトンとした感じで問う。


「おい陽ちゃん、なにいきなり怒ってるんだ? 可愛い子が来てくれたのに」


 コイツは本当に危機感と言うのを知っているのだろうか?

 相手が女だと本当に脇が甘くなりやがるから仕方がないヤツだ。


「え”っ? 今、なんて? 陽、ちゃんって、言ったの?」


 結理が絶句する。

 しかも体も硬直するコンボへと続く。


「別にいいじゃん、こんなむさ苦しい男どもだけってより、こんな可愛い女の子がいた方が華やかで楽しくなるって。オレは断然やる気のボルテージも上がるし根性のゲージもフルカンストできちまうけど」

「だってよアッキー! その気持ちはわかる、稔がここに来てくれたことは個人的には嬉しい、嬉しいんだ。だがコイツらは最大のライバルであり越えなきゃいけないそり立つ壁なんだぜ! 俺たちに待ち受けている最終日のバンドコンテストに出演してくる優勝候補なんだからな! バンドとしての危機だ。そんな実力派なヤツらと仲良しこよしで、1つ屋根の下でバンド合宿なんてできるか!」


 俺とアッキーはそう良いか悪いかで激しく言い合いをする。

 そんな中で二時世代音芸部(にじせだいおとげいぶ)のメンバーはただただ困惑する。


「ねえ、熱川君が暁幸君にアッキーだって。双子なのにあだ名で呼んでる」

「わぁ、熱川さんが"陽ちゃん"で暁幸さんが"アッキー"って……」


 稔と奏音がそう困ったようにつぶやく。

 ま、あだ名で呼び合うのはバンド内でしか話してないから驚くのも当然か。

 するとなにやらオドオドとし目も動揺で泳いでいる結理が重々しい口を開く。


「ちょ、ちょっとアンタたち、バンドの強化としてお寺に泊まっているからって……さっそく若衆(わかしゅ)道に走ったわけじゃないでしょうね? もしそうだってバカなこと言うんだったら呆れるわよ。ねえ陽太、アンタは稔一筋じゃないの?」


 なにか汚い物を見るような目で結理は俺たちに伝える。

 唐突に自分のことを出された稔は一瞬だけ頬を赤らめるがすぐ戻った。

 きっと結理の言ってるなんたらの道という意味がわかってないのだろう。


 安心しろ、大丈夫だ、稔。

 言われている俺も意味がわからないから。


「ねえ結理ちゃん。わかしゅのみち、ってなに?」


 稔はわずかに疑い深そうな顔で意味を聞く。

 するとすぐさまその意味の答えが返ってくる。


「知らないの稔ちゃん、ホモのことよ!」

「あらあらまあまあ……随分と、お楽しみのようで」


 満面の笑みで、力強く、柳園寺が面白そうに意味をさらけ出す。

 そして隣でこの光景を嬉しそうに見てる南桐は目を閉じて頬を赤らめる。

 いや、マジでホモと納得しないで欲しい、俺らは至ってノーマルなんだ。


 つかさっきからなんだ、ホモだとか、同性愛者だとか。

 なにやら不穏な囁き声がどこからともなく聞こえてくる。

 BがLだとかバラだとか、女ってのは本当にそういう話が好きだな。

 俺とアッキーは別にBとLがどうにかなったわけではないから、安心してくれ。


「ちょっと待てよオールバック金髪女の柳園寺さんよぉ~っ? 誰がホモだよ。そんなわけないだろうが。たかが上半身裸だからって腐り切った妄想を膨らませてんじゃねえよ。ただ俺たちはこのクソ暑い中で服着てると暑いから脱いで練習してただけだ。それなのに人の気持ちも知らずにずけずけとしてきやがって、だから女はイヤなんだ」


 俺はそう否定をしては男女差別まがいなことを言ってしまう。

 そりゃそうだ、いきなり人のことをホモ扱いされりゃ不機嫌になるわ。


「まあいいじゃねえか陽ちゃん。そういう妄想をするのも女子の特権なんだよ。別に俺たちがそういった性癖が無いだけでいいだろうが、なのにそうムキになると逆に怪しいぞ?」

「自由と女と彼女が好きで、その中でも断トツに自分好きのお前が言うなよ」


 俺の肩に手をおいて諭すアッキーに俺は反論する。

 言われたアッキーは女の子がいるためかいつもの調子で言葉を(かわ)す。

 やはり周りに女がいると存在も活性化するけど、調子も活性化しやがるな。


 ああ、まったく、調子が狂わされちまうぜ。

 さっきまでハイテンションでノリノリでセッションしたり、ギターフレーズが生まれては形にできる最高の瞬間だったのに、思わぬ展開と言動でいきなりテンションが駄々下がりでつまらなくなっちまったじゃねえか。


 バンドとしての絆と団結力に亀裂が入りそうで恐怖だ。

 ここは心を鬼にしてコイツらをこの場から退散させなければ……。


「まあいい、ともかくお前らなんてさっさと帰れ帰れ! ここでバンドの合宿だなんて、俺の目の黒いうちは許さんぞ! もしそれでもバンド練習がしたいってんなら、さっさとスタジオなりなんなり行って練習してりゃあいいじゃねえか」


 俺がそう怪訝そうな態度でシッシとすると噛みつくのは当然コイツだ。

 両手の拳を腰元付近に当ててわずかに右斜め下を向いて目を閉じ反論する。


「は~っ? ちょっとなによエラそうに。というかここはアンタの家じゃないじゃないのよ。家主じゃないアンタに言われる筋合いは無いと思うんだけどなぁ~?」


 あー言えばこう言う、まさに犬猿の仲と言えるほどの険悪さ。

 前世では俺が犬で結理が猿だったのかもしれないと思えるほどだ。

 本堂のボルテージと気温が上昇しているのは、俺らのせいかもしれないな。




ご愛読まことにありがとうございます!

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