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LIFE A LIVE  作者: D・A・M
First:Track Rock Today Wake Up Tomorrow
15/271

14曲目

 次の日、今日も今日で清々しい太陽が燦々と空に浮かび照らし続ける。

 朝から昼、昼から夕方前までの時間になってもソイツはそこにいた。


 あのバンドの騙しと友人の相談を行ってから時間は経った。

 とうとうゴールデンウィークが終わりを告げ、学校が始まったのだ。


 学生にとっては幕行となるその初日の放課後である。

 初日から、俺は"とある理由(わけ)"を突きつけられ職員室にいたのだ。

 職員室にいる先生も用事があった生徒も俺の方を訝し気に眺めている。


 いやいや、俺は道化師でも見世物でもねえんだぞ。

 そう言いたかったが面倒ごとになるのもイヤなので押し黙る。


 ミッション系高等学校――"鐘撞学園(しょうどうがくえん)"。

 今俺が通い、よくわからんがカトリックとか教会などの教えもする学園だ。

 普通は清楚な意味合いでの白などを強調するがここは少し特別であり色合いはベージュとカーキなど、ネクタイ・リボンは自由(陽太はネクタイをしていないが)で下は男子が黒色のズボンを履き女子はグレーのスカートを履く。

 学校側から規則として定められた男性が履くズボンと女性の履くスカートには右前に縦にラインが入っており1年生は白、2年生は蒼、3年生は紅とされており、そこらの学校よりもけっこう平均値も高い頭よさげな学校なのである。


 とある理由(わけ)とはもちろん、この制服のことで呼ばれたのだ。

 面倒ごとを強いられナイーブな俺の目の前には、修道女姿で風紀の牧野先生。

 その人は聖書を持っている手の指が苛立ちを感じさせる仕草をし、眉間にしわを命一杯に真ん中に寄せ、顔の筋肉がぴくぴくと動き、ものすごいしかめっ面でジッとこっちを見つめている。

 俺に対してなにかを喋ろうとする際は、必ず一つため息から入ってくる。


「まったく、君は本当にどういうつもりなんですか?」


 はい、全くその通りです、って言って欲しいのか?

 先生が声色が刺々しく腹を立てているのは、俺の髪色と服装のことだ。

 バンドで自分の音楽を再活動しようと決めたときに髪の毛を真っ赤に染めて短くした俺は、黒く染め直せ叉は丸坊主にしてこいという先生からの再三の警告をガン無視するどころか、今日呼び出されるまでまた頭の中からすっぽ抜けていたのだ。


 ゴールデンウィ―クに入る前からも口酸っぱく言われてったっけか?

 最後に、ゴールデンウィーク明けまでにはせめてちゃんと黒く染め直してこいと言われていたけど、それも聞かなかったどころかすっかり忘れてしまったので、今現在進行形でこうして居たくもない職員室に呼び出されているのである。

 いや全く、ケンよ、お前の予言は百発百中に決められたぞ。

 イヤなことを強いられるのははっきりキライなのだが、エスケープしようか。

 俺が散々言われている説教を受ける中、そう考えていると先生は頭を悩ませる。


「とにかく、その皮のアクセサリーとかズボンにしてある銀のアクセサリー。それに学校指定のベルトでもないし腕に巻いているリストバンド、せめてそれだけでも止めなさい。いけないことなんですよ?」


 先生はまたもやため息をつくが、俺はどうしても納得がいかない。

 たとえば空腹の人間に飯を食うなって言われて素直に聞くと思うか?

 その他にも欲しいモノが買える金額を持つのに買うなと他人が言えるか?

 俺にとっては先生からの忠告はまさにソレであり、とても腹正しい意見だ。


「はい? それはどうしてですか?」

「えっ。どうして?」


 先生は、俺の言葉をまるでオウム返しのように繰り返す。

 その顔色には疑問が浮かんでいる感情が見えている、納得いってないようだ。

 それから考えるに、俺の言葉をまったく理解ができていないって顔と心情だ。

 おいおい、本気かよ?


「先生、この際はっきり言いますけどね。どうして、髪型とか髪の色とか、服装や仕草とか、言動や行動を他人に強いられて決められなくちゃいけないんですか? そんなに、おかしいことですか? 俺としてはそう言って頭ごなしに否定してくるほうがどう考えてもおかしいって思うんですけど」


 最初は丁寧に、それでいて最後は反感するように問い返す。

 俺にとってはこの見た目も髪の色もアイデンティティーなんだ。

 それを止めろと言われて、はいそうですかと言えるほど俺は素直じゃない。

 先生はそれを聞いてもう一度深いため息をついて嘆き、頭を抱え悩んでしまう。


 先生はそんな顔を浮かばせる俺を疲れた感じに眺めて言葉を探す。

 その姿が切羽詰まった時に作詞作曲をする自分のように見えた。

 なんだろうか、少しだけ親近感が湧いてしまうが辛いよなこの感じ。


「いいですか? そういう駄々をこねた様な考え方は、早くて小学生、遅くても中学三年生くらいのときに弁えてちゃんと卒業しておきなさい。君くらいの歳になって、真顔で言うことじゃありませんよ。それにその態度、なんなんですか? こうして諭させてくれることをありがたいと思いなさい」

「先生はそう言いますけど、俺だって中学生の時は別に髪を染めたいとも思わなかったし自然体でいいかって考えてましたよ。でも今は、新しい挑戦をする今はもうそんなんじゃダメなんです。俺は俺であるために、自分の心で決めて、生きる道をもう一度歩み出すって決めたんですから」

「君が君であるための、生きる道……?」

「そうっす……」


 俺は、どんなに熱弁したとしても意地でも考えを改めてくれないわからず屋の先生にもきちんと心に伝わるよう、一字一句気合と決意をこめて目を見据えて言い放った。


「俺の、俺だから奏でられる……ソルズロックです」

「は、はあ……?」


 だけど、俺の熱意と決意は全然意味がわからず伝わらなかったみたいだ。

 そりゃそうだ、今の先生が浮かべている困惑の顔を見れば一目瞭然だ。

 ちゃんと伝わっていれば、こんな目で俺を見てため息をつくわけがない。

 牧野先生は、それを聞き、これ見よがしに幸せが遠ざかるため息をついた。


 先生はいつも悩みを抱えていて本当に大変そうだな……。

 俺はなんでそんな風に悩んでいるのか、まったく理解ができなかった。




ご愛読まことにありがとうございます。

これからもよろしくお願い致します。

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