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LIFE A LIVE  作者: D・A・M
Second:Track I’m Truth Sols Rock” N” Roller
126/271

125曲目

憧れるから目指す。

目指すから鍛えられる。

例え儚くとも、何かが変わる。


夢ってそういうものだと思います。

 ふと、今まで考えもしなかった疑問が脳裏に浮かび出す。

 その疑問の正体はもうすでにお休みモードになっているのだが……ソイツに憧れを抱いている俺の双眸(そうぼう)にははっきり見えている。


 どうして俺はこんなに太陽を憧れているんだろう?

 熱気がそこら中からほとばしってギラギラとして、世界中の人たちを照らしているからか? いや、輝いているんだったら、今俺たちの空に浮かんで流麗な光で照らす星でも月でもいいじゃないか。

 稔に改めてそう言われると自分でも不思議に思う。


 だけど俺は、とにかくそうなりたいと追い焦がれているのだ。

 真っ暗で腐敗し、社会の地位や名誉などに目がくらんで理不尽なこの世界で、誰よりもギラギラと強く雄々しくカッコよく輝き続けている太陽みたいなバンドマンやシンガーソングライターになりたいんだ。

 漠然としてて未来もなにも無いけど、俺はソイツを憧陽(しょうよう)している。


 俺の脳裏から生まれた言葉と単語で書き続ける歌詞。

 俺の原始的なやり方で0から1へと進むために手掛ける作曲。

 俺の荒削りなギターとがなる歌が噛み合ってできるオリジナル曲。


 できたソイツを世界中で今も苦しんで泣いているヤツに、届けたい。

 そして本当はこの世界はもっともっと暖かいんだぜって、知ってもらいたい。

 だから俺はもう1度ギターを取り、歌を再度やり直し、稔に振り向いてほしい。


 そう……願いたいのかもしれない。

 ははっ、我ながら身勝手な考えとやり方だな。


 考えれば考えるほど、身が熱で灼けるほどの焦燥感と疾走感を感じ取れる。

 思想理念や概念なんかじゃ説明つかないし、もうどうしていいかわからない。

 だが、こんな張り裂けそうな熱気じゃとてもじっとしていられるわけがない。


 俺の体より存在がデカく強いモノが、俺の体の中で激しく暴れているみたいだ。

 心の奥がすごく苦しい、胸が締め付けられ体が引き裂かれそうなほどに苦しい。

 言葉でもジェスチャーでも例えようのない衝動と激動が入り混じって表現することができない気持ちが塊になりカタチと化して暴れている感じ。


 熱い、熱い、熱い……。

 今すぐにでも俺の体が()端微塵(みじん)に裂けてしまいそうだ。

 数分後、数秒後、瞬間にでも、俺の存在がこの世から消されてしまいそうだ。


 だから俺は好きな歌に伝えたい言葉を乗せて唄うんだ。

 だから俺は熱くて楽しくてカッコいい音でギターを弾き倒すんだ。

 もうこの理解し難い気持ちは俺にはなにがなんだかわからないし、どうすれば収まるのかかもわからないから、想いも行動も夢や希望も全てをひっくるめてロックに、俺の目指して焦がれているソルズロックに思いっきりぶつけるんだ。


 テレキャスターやアコースティックギターを弾き続け何かを必死に決意を固めて叫んでいる時だけが、この(よど)み切って腐敗した世界の中で俺が俺の存在を保ち、人生を全力であり続けていられるような気がするんだ。


 俺の音楽好きの始まりは、なんの変哲もないスタートだった。

 ささいなきっかけで凡人の泥臭い努力から始まって、気が付いたらいつの間にかロックが好きになってたわけだが、そんな理由とか流行とか社会になんの意味もないとか演奏()るだけ無駄だとか俺には関係ない。

 ただいつまでもずっと傍に居続けて、俺の全てを包み込んでくれていた。


 ああ、そうだ、これだけは曲がらないで元気つける言葉だ。

 ロックとはすなわち俺の面白きことで愉快な人生なり、人生は生まれた瞬間から死ぬまでで一度きり、フレーズ練習や歌の調子が出ずに上手くいかない日もあればなにもかもが噛み合い達成感に浸れる時もある……失敗を恥じぬ心持ち技術を過信に奢らず、だからこそ人生そのもの、レッツエンジョイ! ってところだろう。


 あの日以来から心の底にズドンと線と線で繋げてくれる最高の音楽。

 ロックは俺の全てのはけ口みたいなものであり、命を汲んでくれたモノだ。

 太陽とロックが合体するからこそ俺であり、俺が俺で生き続ける理由(わけ)かもな。


「カッコいい、カッコいいとは私も思うんだ。でもね、熱川君が本当に世界中を照らしてくれる太陽みたいになっちゃったら、なんだかものすごく遠くに感じちゃうかも。いつも一緒に話をして笑顔にさせてくれて、私の目を開ける勇気もくれた熱川君が、私を置いてどこか遠くに行っちゃうみたいな気がする」


 少し寂しそうに、端のベンチに座る稔がそんなふうに言う。

 俺は見上げてた夜空から視線をはずし、隣の心配気味な彼女に振り向く。


「いーやそんなことは絶対にねぇ、ありえねぇ、運命がとか未来がとか関係なく決してしない。俺が稔を置いてどこか遠くになんて行くもんかよ。第一、俺が稔から離れていったりすると思うか?」

「どうかな……未来のことなんて、私も、わからないもん」

「そんなの、わからないことあるもんか。今だって、あのとき制約された2から3メートルは近づけず体も触れられないとかの約束がなけりゃ今ごろ俺はっ……」


 たぶん、いや、確実に傍に行って思いっきり抱きつきキスしている。

 そんなことを稔の気持ちを考え無しに言えばまた怖がらせてしまうかもしれないから言わないけどよ。


 公園内に夜風が吹き、俺の体と稔の体の傍を透き通る。

 彼女の可愛いアホ毛のあるロングヘア―が風に乗り踊るようになびく。

 一瞬だけ(いだ)きそうになった劣情を涼し気な風もろとも連れ去っていく。




ご愛読まことにありがとうございます!

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