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LIFE A LIVE  作者: D・A・M
Second:Track I’m Truth Sols Rock” N” Roller
125/271

124曲目

投稿遅くなり申し訳ありません。


夜の公園で年頃の男女が2人。

将来的な音楽の話でしんみり。

……いや〜、昔に戻りたい…(泣)

 稔にこのモヤモヤする気持ちを聞いてもらうためにベンチに座ることを促す。

 とは言ったものの、2、3メートルは近づけず体も触れられない制約がある。

 俺たちは缶コーヒーとメロンミルクを飲み干し自動販売機の近くにあるゴミ箱に捨ててから、今いる公園に設置された2つ並んだベンチの、いちばん遠くの端と端に向かって腰掛けた。


 左右に離れたベンチに腰掛けて稔は左を向き、俺は右を向く。

 これだけ離れていれば、突発的になにするかわからん俺だってなにもできない。

 俺の失態のせいで極度の男性恐怖症になってしまった稔も、これで安心だろう。

 稔は俺を怪訝そうにも恐れてるふうもなく、自然にそこに座って微笑んでいる。


 それにしてもなんだか不思議だ。

 コレは奇妙でも異様でもなく、なにか心地いい不思議感だ。

 なぜならこうして片思いを寄せている稔のそばにいて、その艶めかしく可愛らしい横顔を眺めて柔らかい声を聴いているだけで、さっきまでのモヤモヤとしてなんとも形容し難い不安がウソみたいに、疾走感が悪循環に回り続けていた俺はすごく落ち着いている。


「ゴメンね。なんだか気をつかわせちゃって……熱川君、悪くないのに」


 呟くように口にした稔の声色になにか寂しな感じがする。

 俺が悪くないとは、正直、違う違わないとも言い切れない。

 だけどそんな声色を聴くのは辛くて、俺は元気を取り繕って笑顔を出す。


「なに言ってんだ。気にすんなよ、俺が悪いんだから。お前の目とは見えるようになって、持病もあれからずっと落ち着いているようだしなによりじゃねえか。ま、それでもよく寝ちまうのはいい事だ。寝る子は育つって言うし、だから、あんなに想像力や影響力のある音楽もできるんだろうな」

「あははっ、そんな~、褒められるようなことはなにも……」

「それよりさ、稔」

「うんっ? なぁに」


 俺の声に、俯いていた稔がなにげなくこっちを振り向く。

 普通でどこにでもあるただそれだけの何気ない仕草なのに、どうしてこんなに、俺の目には特別染みてキラキラと輝いて映えるんだろうか?

 本当に、この世に生まれた天照大神の生まれ変わりに見えてしまう。


 誰がなんと言おうが、絶対に、稔は世界中誰よりもどれよりも一番輝いている。

 本当の燦々と輝いている太陽は、悔しいが俺なんかじゃないのかもしれない。

 太陽の陽を浴びて生き生きと咲く向日葵の笑顔を出す、稔なのかもしれない。


『君が照らしてくれる太陽、あの夢を描く空を、私に届けてくれるよね?』


 あのとき稔が不貞腐れた俺に掛けてくれた言葉を、いま脳裏に思い出す。


 でも、それは違うんじゃないのか?

 本当は俺からその言葉を稔に掛けるべきだったのかもしれない。


 向日葵の笑顔で天照大神の生まれ変わりで、まさに太陽そのものか。

 そうか、だから俺は……。


「稔、見ててくれよな! 俺、これから全身全霊に決意を抱き、熱気と根性を出して本気で未来を突っ走っていくからな! 絶対いつか、空に浮かんで世界中を照らしてやれる太陽みたいにギラギラと輝いてやっからよっ!」


 やはり、俺はこういう熱のこもった言葉しか口から、全身から出せない。

 縋るんじゃなくて、世界のどこかで困ってるヤツに縋られる存在になるんだ。


 稔に話すことで、俺は自分を奮い立たせて熱意をあらわにする。

 稔はそれを見てくすくすと笑った。


「ふふっ、また太陽の話? 熱川君は本当に大好きだよね、太陽って」


 あの日以来目が見えて世界の見方が変わった稔にとっては、何度も何度も俺の口から聞かされて、いい加減聞き飽きてしまった言葉と話なのだろう。

 だけど稔は、いつも嫌な顔ひとつせずに聞いてくれて笑ってくれる。


 でも、ライブ本番前の今夜の稔は、なんだか少し心配そうな顔を覗かせた。

 なんだ、いったいどうしたんだろうか……?


「だけど、いつもその話聞くたびにわたし思うんだけど、空に浮かんでた燦々と力出してさ。……キラキラと輝く太陽になんてなっちゃったら、熱川君は淋しくならないの?」

「淋しい? え、なんでさ?」


 結理は俺の顔をから逸らしまた目の前を俯いてしまう。


「だってさ、境界線から出て来て空に浮かぶ太陽っていっつもひとりぼっちじゃない? 傍には誰もいてくれないんだよ。確かに世界中のみんなを明るく照らしてくれて、地球になくちゃならない絶対的な存在だけど、でもよく視ようとすると眩しすぎて、触れたいと願っても熱すぎて、傍にいたくても誰も近寄れないんだもん。もし太陽になっちゃったら、熱川君は淋しいと思わないのかなって」


 結理は自分の膝の上に手を合わせ指を絡め、なんだか哀しそうに言う。


 ふーん、そうなのか、太陽ってひとりぼっちなのか。

 でもどうしてだろうか? 稔にそう言われても、俺には"太陽がひとりぼっち"っていう理由を聞かされてもよくわからないし、いまいちピンと来ない。


「俺には太陽が淋しいとか哀しいとか、ひとりぼっちはイヤかどうかなんてわからない。だって太陽は、あんなにもギラギラに輝いて、世界中の人間と景色を熱気で照らしてくれるんだぜ? カッコいいじゃねえか。だからこそ、俺はそんなカッコいい太陽みたいになりたいんだ。太陽みたいに熱い歌とカッコいいギターで音楽界を照らして、世界中に発信して光を届けたいんだ。ただ、それだけだ」


 俺は俺の思いのまま口にし夜空を見上げてガッツポーズをする。

 すると俯いていた稔はまた心配そうな顔つきで俺の方を振り向く。


「ねぇ、熱川君。どうして太陽なの?」

「それは……」


 稔の問いの返答に僅かに困り、ベンチの背もたれに背中を預ける。

 そして星々がそこら中に散りばめられた夜空を黙って見上げて見る。


 空に浮かぶそこに答えがあるのか、そんな考えを浮かばせながら……。




ご愛読まことにありがとうございます!

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