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LIFE A LIVE  作者: D・A・M
Second:Track I’m Truth Sols Rock” N” Roller
106/271

105曲目

 いきなりだが、俺はあらゆる"商売人"を素晴らしいと心の底から尊敬する。

 人に物を売って報酬を得るというのは、本当に気が遠くなるほど難しいものだ。

 アコギ入りギターケースを傍に置いてる俺は今日、それが身に染みてわかった。


 なぜって、ライブのチケットが全然売れないで無為な時間が流れるからだ。

 早朝から駅前にてまずは声かけから始めたが、本当にきれいさっぱり売れない。

 商売人が取引先や商売でお客に低い腰で接し金を得る、俺には出来ない芸当だ。


 陽射しの強い太陽の下で屋根の無いとこでの客寄せは、身も心もしんどくなる。

 俺自身"ギラギラに世界中を照らし出す太陽"みたくなりたいと切実に願ってるが、こう目標である"ライブチケット完売"を掲げて客寄せと声かけをしてもまったく売れないとこを見ると、季節に合ってる蝉の鳴き声と道行く人々の喧騒がけたたましい雑音(ノイズ)にしか聴こえない。


 最初は駅前に顔をだすまえに、一応クラスの連中やら学校の知り合いやらソロ活動のときに世話になった人々やらにも一応声を掛けて誘ってみたのだが、これがまったく売れなかった。


 ソロのシンガーソングライターとしての俺を認めてくれてる人も並々いたからなんとかなるとは踏んでいたが、ライブ当日の日に"バイトや仕事と重なってる"とか"両親の都合で少し遠くに出かける"とか"子供の運動会に行かなくちゃならない"といった、今のご時世ではよくある用事と被ってしまい断念ざるを得なかった。

 口々に"すまん"と浮かない顔をして言われたが、俺もソロ活動のときはムチャを言ったりして世話になった手前もメンツもあったため、そこは気にせずターゲットをクラスの連中やら学校の知り合いへと向けたのだ。


 だがしかし、それが全滅ときたもんだ。

 そもそも、そんなに話したことも関わったこともなければ親しくもないヤツが組んだバンドなんて、それこそ"チケット料金と1drink"が無料(タダ)と言われたって見に行きたくはないだろう。

 俺だって興味の無いヤツのライブなんて時間の無駄だし見に行きたくない。

 それが、べつに興味も無ければ金を払って見に来いと言われりゃ、絶対に来る気になるはずがないければ"迷惑だ"や"ウザい"と言っては怒り狂うヤツすらいる。


 ここまで悪手(あくしゅ)となるとバンド歴の浅い俺でも理解できる。

 バンドマンが行うライブ出演に向けての集客というのは、街の人をどれだけ注目させて自分たちの課せられているチケットをさばけるか、ライブ業界では一種の競争ともいえる行動だ。

 今他のバンドがしてる集客に競争で負けている、いいとは言えないな。


「あーあ、あんなこと続けていたら友達もなくして、人生という舞台で真っ先に悪役へと仕立て上げられちまうな。ま、俺には元々そんなたくさん友達と言える輩はいないけど」


 俺は手に持ってるさばけてないライブチケットを見ては憂鬱そうに言う。

 ま、だから今現在こうして困り果てているわけなんだが。


「うん、本当だね。かんばしい成果も出ないし、困っちゃったねぇ~」


 ケンも売れないライブチケットを持っては泣きそうになっている。

 ケンも俺も、普通のライブに出かける友達や知り合いも少ないのに、その中でマイナー中のマイナーである"パンクロック"のライブに出かけたりする趣味のある知り合いはほとんどいないからな。

 パンクロック、なにそれおいしいの? とふざけたことを抜かすヤツばかりだ。


 ま、その態度は気に食わないがそれはそうだろう。

 今巷で流行っているのはやっぱアニメやゲームなどの挿入歌や楽曲、それにJやらKだという軽はずみなポップと、ロック界の中で表も裏でも有名で人気急上昇をし続けている伝説的ロックバンド【Starlight(スターライト):Platinum(プラチナ)】ぐらいと言えよう。

 そんなとこにバッキングとロックコードを主体にして、人々の脳裏で思い描くパンクロックは『泥臭くてド下手で聴くに堪えない』と思っているのだから、2つ返事で毛嫌いし断るのは当たり前だ。


 上歌も楽器も手くて、自分の心が惹かれて、今流行で人気の音楽。

 腐敗した世界で生きる人々に根付かれた音楽の共感はまさにソレだ。

 俺にとってはそれこそが腐って、実にクソッタレな考えだと言えるのだが。


 ましてや今は長い長い夏休みの真っ最中だ。

 学園が休みなので、知り合いに会う機会もほとんどないのだ。

 学園のヤツに会っても俺の顔と姿を見てはそそくさと逃げるのがザラだ。


 俺が街の喧騒に嫌気を感じている中、ケンが縋るようにあることを口にする。


「ねえ陽ちゃん。あんまり気が進まないかもしれないけど、やっぱり結理ちゃんたちに頼んでみたらどうかな? 僕から頼んでみるからさ、そうすれば結理ちゃんも2つ返事で受け取ってくれるし。それに稔ちゃんや奏音たちだって喜んでライブを見に来てくれると思うんだけど」

「おい、ケン。お前はまだそんなことを言ってんのか」


 と、かなり先行き不安な発言をケンから訊いては見切り発車が始まった。




ご愛読まことにありがとうございます!

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