伝令
再び食堂にて―
「よお。何か見つかったか?」
皇は布津の姿を認めると問い掛けた。
「…あぁ。恐らくは犯人と思われる奴と遭遇した」
皇は目を剥いた。
「ホントかよ!?よく無事だったな?」
「流石に学内だからな…。騒ぎはお互い避けたかったって所だろう。そっちはどうだ?」
皇は肩を竦めた。それを認めると、布津は口許を歪める。
「一度戻るぞ。長居して襲われても面倒だ。…おい」
「ふが?ひょっふぉはっふぇふえお」
皇はパンを口一杯に頬張っていた。布津は呆れた表情を浮かべると携帯を取り出し、何処かへ連絡し始めた。タクシーでも呼んでいるのだろう。
~二時間後~
都内の一室。そこに再び布津と皇の姿があった。
「さて、どーするよ?」
部屋に着くなり皇は問うた。布津は答えずソファに寝転ぶ。
いつもの事なので皇も椅子に腰掛ける。その直後、ドアがノックされる音。皇がはい、どうぞ、と答える。
「失礼しま~す!」
明るい声と共に若い女が入ってきた。伝令役の月野だ。
「裏葉ちゃ~ん!会いたかったよ~!再会のキ」
言い終わる前に月野の拳が皇の顔面にめり込んでいた訳だが。
痛みに転がる皇を尻目に、布津は月野に声をかけた。
「伝令か?」
「あ、はい!こちらを…」
月野は封筒を一枚取り出すと布津に手渡した。
「……………。」
布津は中身を確認すると、そのまま破り捨てた。
「俺まだ読んでねー」
「内容はシンプルだ。俺の報告から、近々襲われるだろうから、返り討ちにしろ。だそうだ」
「…また戦うのかよ。俺達ゃ正規部隊じゃ無いってのにさ」
皇は重苦しい溜息を一つ、吐いた。
「嫌なら抜ければいい。別に止める理由は無いが?」
「ちげーよ。そういう事じゃ無くてさ…」
「あの~。」
割って入ったのは月野だ。おずおずともう一枚の封筒を取り出す。
「さっき来た時、ポストにこれが…」
皇はその封筒を受け取ると封を切った。
「すいません、私次の仕事がありますので、これで失礼します」
他の部隊への伝令もあるのだろう、月野はそそくさと去って行った。
「あ、裏葉ちゃ…」
「寄越せ」
布津は皇の手から手紙をひったくると、内容を確認した。