都内の一室
『Zzz…』
都内、とある一室。
一人の男がソファで居眠りをしていた。
男が目を覚ます気配は無い。そんな時だった。
ダダダダダ…ガチャリ!ギィィィ…バタダダダッ!
「おい!大変だ!」
短髪の青年が部屋に入って来るなり叫んだ。
「五月蠅いぞ…皇」
皇と呼ばれた青年は呆れ顔を浮かべながら男の向かいにあるパイプイスに腰を降ろした。
「よくも毎日そんなボロソファに寝てられるよな。布津よぉ」
ソファに寝ていた男、布津はボサボサの寝癖が付いた金髪を掻き揚げながら身体を起こした。
「何処で俺が寝てようと勝手だ…。で?何かあったのか?アレだけ騒々しいって事は余程の事だろうな?」
布津はギロリと皇を睨む。当の皇は慣れたものか、涼しい顔をしつつも、直ぐに真面目な顔に戻って切り出した。
「あぁ。それがな…。例の学園で昼頃に、殺人事件が発生したらしい」
「…。その昼過ぎに確認した時、午後の授業は休講にはなっていなかった筈だが…?」
布津はフン、と鼻を鳴らすと脚を組んで身体を後ろへ反らし、大きく伸びをした。
「学長が手回ししたんだとよ。もちろん現場は隔離された上で警官が入ってるらしい」
「学長もご苦労な事で。それで?」
「あぁ。その死んでた奴がな、俺達の調べていた組織の一員だって話でよ、ボスから事実関係を調べて来いってさ」
「…つまりは。『お前達、ヘマをしたんじゃないだろうな?』って事か?」
布津はニヒルな笑みを浮かべると立ち上がった。
「そ、そう言うなよ…。不安になるだろ…」
皇は言葉同様、あからさまに不安げな表情を浮かべながら布津の動きを視線で追った。
ガラガラガラ…。
布津は窓を開けると、だいぶ日も傾きかけ、日差しの温もりが消え始めた外の空気を吸い込んだ。…寝起きの目覚ましには丁度良い。
布津は窓を背に振り向くと皇に投げ掛けた。
「行くか」
「…あぁ」