死神
ガギン!ドガァッ!
刀を薙ぎ払われ、溝落ちに掌底を受けると布津は二、三歩よろめき膝を付く。
「………ッ」
「もういい。飽きた。殺す」
神崎は布津に背を向けると助走の為の距離を取りはじめた。
…ドクン。
耳鳴りがする…。
ドクン、ドクン
感覚が、蘇る。
コロセ…コロセ…
蘇る感覚と共に声が聞こえる。コロセ?殺せ?
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ
十分な距離を取った後、神崎は振り向いた。
…!?
あの男の姿がない。ついさっきまでそこに…――
「っくッ!?」
反射的に身体を捻った。とほぼ同時に切っ先が腕を掠める。
――なんだ!?何が起こった!?
神崎は動揺を隠しつつ構えた。
…目の前には男が居た。紛れも無く闘っていた男だ。…何かが違う。中身だ。残酷なまでの悪意。それしか詰まっていない様に感じられた。
ヒュンッ
一瞬何の音か分からなかった。次に頬から何かが垂れてくる。血だった。
――なんだ?何をされた?…斬られた?何処?頬だけだ。
じゃりっ。
布津が前に一歩出る。神崎は合わせて後ずさる。
―――死神。
そんな言葉がふと脳裏をよぎった。
逃げ出したくなる衝動に駆られる。だが背を向けて逃げ出そうものなら、目の前の死神は容赦無く自分の首をはねるだろう。プライドもあった。それが神崎を逃がすまいと捕らえていた。
判断は早かった。…逃げられないのなら、倒す。それだけの事だ。
特殊警棒を振り下ろす。…予想通り。死神は刀で受ける。ガードの空いた所に再度溝落ちへ掌底!相手は衝撃で身体を折る。その下がった頭へ警棒を振り下ろー
――消えた。文字通り『消えた』のだ。
その時、神崎の動物的勘が働いた。また来る、と。振り上げた警棒を頭上で防御の体制に変える。
ガギィィン!
勘は当たっていた。と同時に背中に衝撃。…蹴りだ。神崎は二、三歩前につんのめる。振り向くと死神はさっきと同じように、無表情で立っている。
既に神崎は混乱していた。目の前で不可思議な現象が起こったのだから無理も無い。…少しずつ後ずさる。布津は一歩前に出る。




