開戦
暗がりの通路に、布津と皇の姿があった。
「…場所は頭に叩き込んだか?」
「おぅ。もちろんだぜ!」
布津はニヒルな笑みを浮かべる。
「なら良いのだが。…フッ…死ぬなよ」
皇は怪訝な顔をして返す。
「なんだそりゃ。普段は鉄面皮の布津さんにしては珍しい事で」
間髪を入れず布津が返す。
「お前が死んだら死体の処理が面倒なだけだ」
皇は引きつった笑いを浮かべる。
「そ…そうですか…」
おもむろに布津は立ち止まると時刻を確認した。
「…時間だ。行くぞ」
「おぅ。また後でな」
皇は右手へ曲がると闇へと掻き消える。布津はそれを見届けると、音も無く歩みを進めていった…。
正門付近。柱にもたれかかる布津の姿。
―――見つけた。
神崎は左手に握る特殊警棒に力を込め、間合いを詰める為一気に疾駆!勢いに乗り飛び上がりざま上段から一気に警棒を振り下ろす!!
『ガギィィン!』
お互いの獲物が金属質の悲鳴を上げる。
―――コイツ、刀使いか…。
神崎はリーチの不利を悟ったが、懐に入ればこちらが有利な事にも気付いていた。
「初めまして『CROW』…私、神崎 柳夜と申します」
「…布津 純能介…。いくぞ」
ガギギッ、と鈍い音を立てながら鍔競り合いを解く。お互い距離を取り間合いを測る。
先に動いたのは神崎。低い姿勢からの薙払い。それを刀身で受け――
「ぐふっ!?」
突然の脇腹への激痛。神崎の薙払いは囮。布津の脇腹にめり込んだ脚が本命だった。
無様に転がるが、そのまま距離を取り立ち上がる。
――センスは相当。修羅場を潜っているな…。
脇腹に手を当てる。骨は大丈夫だ。正面に立つ神崎を見据える。
「流石。そうこなくっちゃ面白くない。ちゃんと受け身取ってたし。もっと楽しませてくれよ?」
布津は正眼に構えると、両足に神経を集中。
「…その減らず口、あの世に取っておけ」
言い終わるが早いか、一息とも言える時間で間合いを詰める!
袈裟逆袈裟薙払い斬り払い斬り上げ!斬る斬る斬る斬るッ!
息を吐かせぬ斬撃!流石の神崎も防戦一方だ。
…パワーは上だが…スピードなら俺に有利!
………?
布津の斬撃を受け流しつつも、いなしきれず神崎の身体は少しずつ刻まれていく。
…笑っている。楽しむかの様に。
…危険な男だ。布津は攻撃の手を休める事なく、相手の反応に注視していた。
夜の学園に、鳴り止まない剣檄が響く。




