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発端
ヒュオオ…
昼間とはいえ、風の吹きすさぶ冬の寒さの中、二人の男が対峙していた。
「今度はアンタか。うっとおしいんだよね、あのくらいで」
スーツの男が掃き捨てるように目の前の男に言った。
目の前の黒い作業着の男は滲む殺気を隠す事も無く、手に持っていた段平の刀身を露わにした。対するスーツの男は丸腰だ。だが男は臆さず言った。
「おーおー。いきがるねぇ。三下が」
その言葉が合図だったかの様に、作業着の男は咆哮をあげながら段平を構え突進していった…!
スーツの男は身動ぎ一つしない。むしろ口許に笑みを浮かべている。
「おせぇよ」
半身を捻り、段平の切先を躱すと同時に腹部へ膝。くの字に身体を折った所に首筋へ必殺の手刀一閃。
『ゴキッ』
決着の付いた音だった。作業着の男は白目を剥くと、そのまま前のめりに崩れ落ちた。
「フン、他愛の無い…」
スーツの男は踵を返すと、音も無く去って行った…。