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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第二章 シナーラ
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96 第一回戦

 俺達のパフォーマンスにあっけにとられている会場に俺の声が響く。


 「さあ、始めようか。」


 俺の言葉で、会場はようやく元の大歓声を取り戻す。


 『え、えーと。これどうなってんの!?』


 実況は俺達のパフォーマンスにリアクションを取れないでいる。


 「は、初め!」


 実況よりも先に我を取り戻した審判が試合開始の合図をする。


 「じゃ、頑張って。」


 そして俺は宣言通りこの一回戦には参加しないため、後ろに下がる。


 「任せてください。」


 「こんなやつら問題ないわ。」


 「ぼこぼこにしてやる~!」


 紫音、楓、スミレがそれぞれ返事をすると、相手チームが陣形を組む。


 「「「東之青龍!南之朱雀!西之白虎!北之玄武!四神防陣!」」」


 一条が後ろに下がり、他の三人が前に出るくしくも今の俺たちと同じ陣形だが、その本質が違う。まず、前に出た三人が発動させたのは四神防陣。これは陰陽道において最強の防御の術だ。それを三人で協力することで、無理やり発動させている。そして、一条がそれに守られて詠唱をしている。


 「払い給へ。悪しきものを。清め給へ。その魂を。集え。我が身元へ。我は汝に救済を与えるものなり。」


 一条は呪文の一言一言を丁寧に紡いでいく。


 「いくよ!」


 しかし、そんなこと彼女たちには関係がない。


 損の掛け声と共に楓とスミレが三歩前に出る。


 「威力増強ブースト。」


 楓は自身の杖に魔力を流し、頭に思い浮かべた魔方陣を具現化させる。今回使ったのは魔法の威力を上げるための魔方陣、威力増強ブーストだ。しかも、一つではない。合計六個の魔方陣を作り出した楓は、自分の仕事は終わったとばかりに後ろに下がる。


 一条のチームはそれを見て眉を顰めるが、気にせずにそのまま一条の詠唱の援護を行う。


 「弾丸バレット。」


 楓が展開した魔方陣に、紫音が砲術の基本攻撃、弾丸バレットを放つ。それは大した威力も速度もなく、ゆっくり魔方陣に向かって進んでいく。


 ちなみに、紫音のトリガーハッピーはある程度抑えるのに成功した。これも二年間の成果と言えよう。


 一つ目の魔方陣を魔法の弾丸が通過する。すると、弾丸の大きさが二倍になった。それは二つ目、三つ目の魔方陣でも起こり、最終的に六十四倍の大きさになった魔法の弾丸は、ゆっくりと相手に向かっていく。


 「疾風!」


 しかし、次はスミレの番だスミレが用意した札を宙に放り、札の効果を発動させる。すると、ゆっくり進んでいた弾丸のスピードが上がる。スミレが使ったのは加速の術式だ。勿論、そんなものを知っているのは俺のチームのメンバーと神の里の者だけだ。


 「疾風!疾風!疾風!」


 さらにスミレは三回加速の術式を重ね掛けして、弾丸の速度を上げる。


 威力が上がり、速度も上がった弾丸は一条のチームへとまっすぐに進んでいく。


 「こ、これはヤバ・・・!」


 四神防陣を張っていた生徒の一人が顔を引きつらせてそう言ったが、最後まで言うことはできなかった。


 ドーーーン!


 紫音が放ち、楓とスミレが強化した弾が当たったからだ。


 宙を舞う一条のチームメイトは、皆等しくありえないと顔で語っていた。


 彼らは地面に落ちると、そのまま起き上がることはなかった。


 「しょ、勝者五十一番チーム!」


 審判の声が会場に響き、この卒業トーナメントの第一回戦は誰もが予想しなかった終わり方を迎えるのだった。


 もちろん、俺の関係者は俺のチームが勝つと確信していたようだ。

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