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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第二章 シナーラ
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93 収納

 俺がこの世界に二度目の生を受けるときに授かった能力の内、『収納』はかなり高度なスキルになる。


 そもそも、この収納のスキルはレムナットには存在しなかった。それどころか、ファンタジーでの定番のアイテムバッグや、アイテムボックスなども存在しなかった。


 それは、空間魔法を使う魔術師が稀だったことと、たとえ持っていたとしても使えるものがいなかったので、作ろうにも作れなかったのだ。


 さらに、この収納には中の時間を止める能力が、時空魔法によってかかっている。この時空魔法も、空間魔法以上にレアで、時間という概念がはっきりしていなかった(朝ごろ、昼頃、夜ごろと判断していた)レムナットでは、これも使える者はいなかった。


 さらに、この収納も俺が物を保存しようと思い空間魔法で空間を作り、中の時間が止まっていたほうが良いという事に気が付いて、時空魔法で中の時間を止め、何か月もその状態を保ち続けた結果できたスキルだ。


 何故スキルになったかは、その収納が、もはや魔法というよりスキルに本質が近づいたからだろう。


 簡単に言うと、意識しなくても発動できるようになったからスキルになった。と、いう事だ。


 まあ、俺が何を言いたいかというと・・・・。


 「何だこれ?」


 俺は、学園祭もひと段落したのでふと思い出した収納の中身の整理をすることにした。俺はそう決めるとすぐに神の里の修練場を使わせてもらうように交渉した。そして、整理していたのだが、あるものを見つけた時に出た言葉が、これだ。


 俺が見つけたのは、料理だ。しかも、まだ湯気が立っている。


 「ドラゴンのステーキか?」


 俺は、出てきた料理の見た目から、それがドラゴンのステーキだと判断した。


 「椎名、それ何?」


 そこに、その場にいた咲が俺が手に持っている料理を見つけた。


 「ああ、ドラゴンのステーキだ。食べるか?」


 「ええ!?ドラゴン!?」


 咲は目を見開いて、俺の手に乗っているステーキを見つめる。口の端からよだれが垂れているような気がするが、そこは武士の情けで見なかったことにしよう。


 「な、何だよ?」


 俺は、咲の予想以上の食いつきに、少したじろいでしまう。


 「だってドラゴンでしょ!?」


 聞けば、この地球ではドラゴンはいるものの絶滅寸前で、狩ってしまうと一応神である咲たちでも死刑になるという。


 「それならやるよ。」


 俺はそう言って、咲にステーキをあげる。


 「咲~!」


 その時、修練場の入り口から咲夜の声が聞こえた。


 「咲!探しましたよ!て、なのを持って・・・・、ドラゴンのステーキ!?」


 咲夜は咲を見つけるとこちらに駆けてきて、咲が持っているステーキを見つけるとあまりの驚きに大声をあげた。あげてしまった。


 「何!?ドラゴンだと!?」


 「それは本当か!?」


 「でもなんで!?」


 「見ろ!椎名がいる。恐らく、レムナットかどこかで手に入れたんだ!」


 「なるほど!」


 咲夜の声はほぼ里中に響き、里中の人間がその言葉を聞き外に出てきた。


 「おい!椎名。まさかとは思うが、その二人だけにステーキを食わせる気じゃねえだろうな!?」


 鍛冶屋のおっちゃんがいつもの人の好さそうな顔ではなく、今にも殺さんばかりの顔でそう言ってきた。


 「も、勿論皆さんの分もありますよ!」


 俺はそう言って、ドラゴンの肉をざっと二百キロ取り出す。


 「よっしゃー!」


 俺が肉を取り出すと、歓声が起こった。


 「食うぞ!」


 そうして、神の里ではレムナットの酒も振舞われた宴会が始まったのだった。


 ちなみに、収納の整理は後日きちんと行われた。

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