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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第二章 シナーラ
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83 秘密

 俺達は今、各自の実力を把握するため、演習場に来ていた。


 「おい。見ろよ。『堕落者』だ。」


 「うわっ。よく表を歩けるな。俺なら無理だよ。」


 何故だかわからないが、演習場に向かっている途中、やけに視線を集めている気がする。いや、俺ではなくて俺のチームメイトか。それに、なぜか罵倒されている気もする。


 「お前ら何かやったのか?」


 俺は後ろを歩く三人に問いかける。


 「何もやってないわよ。でも、私たちみたいな不出来な魔法使いは『堕落者』って言われてるの。しかも、下手したらあなたたち五組より嫌われているわ。」


 「堕落者?なんだそれ。」


 「今から戦うんでしょ?それならすぐにわかるわ。」


 三人を代表して、楓が答える。


 俺はなおも疑問に思ったが、それ以上は聞かずに演習場へと向かった。



 「空いてない?」


 演習場に着いた俺は、演習場を管理している教師の言葉に、素っ頓狂な声を上げる。


 「ええ。一週間後なら開いてるけどどうする?」


 今の時期、俺と同じよなことを考えるやつが多いいらしく、結構前から予約をしないと演習場を使うことは不可能に近いらしい。


 「それならいいです。」


 俺は教師の言葉に、潔く引くことにした。


 「で、椎名君。どうするつもり?」


 楓が次のプランを聞いてくる。


 「場所移すぞ。」


 「移すって、どこかあてがあるの?言っておくけど、そこらへんでやったら最悪退学になるわよ?」


 楓だけでなく、紫音たちも俺のことを不安そうな目で見つめてくる。


 「大丈夫だ。じゃ、行くぞ。」


 俺は指をスナップさせ、転移を発動させる。


 「「「は?」」」


 一瞬で景色が変わったことに、三人は目を見開かせる。


 「おい。何ぼさっとしてんだ。とっとと行くぞ。」


 俺が声をかけると、ようやく現状が理解できたのか、三人が口々に質問してきた。


 「何今の!?」


 「今のどうやったのよ!?」


 「ここ何処!?」


 上から順に紫音、楓、スミレの順だ。


 「待て待て。ちゃんと説明してやるから。まず紫音の質問だが、今のは転移魔法だ。楓の質問は、空間魔法を使って、ここの空間と、学園の空間を俺たちごと塵買えただけだ。スミレの質問だが、ここがどこだかは秘密だ。でも安心していい。危険な場所ではない。」


 俺は、全員の疑問を解消してやった。


 「て、転移魔法…。」


 紫音は驚愕の表情でそう呟く。


 「転移魔法がどうした?」


 「いい?椎名。よく聞いて。魔術師の最終到達点と言われている魔法が、三つあるの。一つ目が、蘇生魔法。二つ目は、不老不死の魔法。そして最後に、転移魔法。」


 俺が驚愕している紫音に聞くと、楓が横から割り込んで、説明を始めた。


 「まじ?」


 「ええ、まじよ。」


 俺は紫音や、スミレのほうを見るが、彼女らも無言でうなずいた。


 「…このことは秘密にしといてくれ。」


 「ええ。いいわよ。大体、他の人に行っても信じてもらえないわよ。」


 楓はため息交じりにそう言った。


 「わ、私も誰にも言いません。」


 紫音は、少し戸惑いながら誰にも言わないと宣言する。どうやら、まだ現実が受け入れられていないようだ。


 「あ、私も言わないよ!」


 スミレは完全に復活し、元気いっぱいにそう告げる。


 「ありがとう。」


 俺はそう言って、頭を下げる。


 「あ、頭を上げてください!」


 「いや、そういうわけにもいかない。俺は、あまり目立ちたくないんだ。」


 「「「今更!?」」」


 俺の言葉に、三人は同時に突っ込んだ。



 今、俺たちがいるのは神の里だ。しかし、それを紫音たちに言う気はない。


 「あ、椎名さん。どうしたんですか?」


 里の修練場へ向かっていると、咲夜が俺を見つけ、話しかけてきた。


 「ああ、学校の演習場が使えないから、ここのを使おうと思って。」


 「なるほど。すると、そちらのおなご達はお前の学友か?」


 「そうだ。ポニーテールが紫音。茶髪が楓。で、残り一人がスミレ。」


 「ど、どうも。」


 「よ、よろしく。」


 「は、初めまして。」


 「じゃあ、訓練頑張ってくださいね。」


 咲夜はそう言って去っていった。


 「じゃ、行くぞ。」


 俺は修練場を目指して歩き始めるが、それを楓が静止した。


 「何あれ?」


 楓の言葉に、椎名は簡潔に答える。


 「知り合い。」


 「そうじゃなくて!」


 楓はまだ後ろ姿だけ見える咲夜を指さす。


 「あのケモミミ!何あれ!?」


 楓が指摘したのは、咲夜の頭についているケモミミだ。


 この里の連中は全員。尻尾が生えており、ケモミミもついている。楓は、そこに突っ込んだらしい。


 ちなみに、咲夜の耳はキツネ耳だ。


 「まあ、そういう場所なんだよ。」


 俺の答えに、楓は大きくため息をつく。


 「あんた本当に何者なのよ?」


 「知りたいか?」


 楓の問いに、俺はいつもは見せない真剣な表情で問いかける。


 「な、何よ。急に真剣な顔になって。」


 俺が急に真剣な顔になったことに、楓たちは少したじろぐ。


 「教えてもいいが、お前らが思っているような答えはできないぞ。」


 楓たちはごくりと唾を飲み込む。彼女たちは悟ったのだ。俺は彼女たち一般の魔術師ごときが詮索していい相手ではないことを。


 「い、いいわ。遠慮しておく。」


 楓は俺の正体を知ることをあきらめた。


 ほかの二人も、同じように引き下がる。


 「そうか。ならいい。」


 俺は表情を戻し、里の修練場へと向かう。

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