81 生徒総当たり、学年別サバイバル
修正しました。武軍の数が二万五千になっていたのですが、読み返したらそんなにいませんでした。
なので、二万五千を七百に変更しました。
混乱した方はすみません。
俺が演習場に入ると、同じ五組の男子生徒が話しかけてきた。
「椎名君、だよね?」
「ああ。」
「チームに入る気はある…、かな?」
「ないな。」
「だよね。ごめん。」
そう言って、男子生徒は俺から離れていく。
「おまえ、名前は?」
「え?隆二だけど?」
「そうか。隆二、このサバイバルゲーム、エリート様の無様な姿が見れるぞ。」
俺はニヤリと笑うと、見通しのいい丘に登る。
この丘は、確かに見通しは良いが、それと同じように敵からも見えやすくなっている。
『では、スタート!』
スタートの合図と同時に、俺は空に向けて爆発魔法を放つ。
「俺はここにいるぞ。」という合図だ。
俺はそこから動かずに、敵が来るのを待つ。
演習場にある森の中では、生徒同士が戦闘している音が聞こえる。
「本当にいやがった!」
最初に来たのは、不良っぽい男だ。体操服には、二と書いてある。
「五組か!死ねや!」
不良は俺に向けて水魔法を放つ。しかし、その魔法は先程の男子生徒よりもレベルが低い。
「雷鳴。」
俺は手を前に突き出し、そこから雷を出す。
ドゴン!
雷は、不良の水魔法を弾き飛ばし、不良に直撃する。
「うがあああ!」
いくらダメージが入らないと言っても、痛みはあるため、不良は身もだえる。
「くっ!『離脱』!」
不良は修練場に取り付けられている安全装置の一つ、離脱を使って修練場のそのに出た。
この離脱は、詠唱と同じ要領--声に魔力を乗せる--でいうことで、この修練場から脱出できるものだ。
不良はこの修練場から出たため、もうこのサバイバルゲームの敗者となった。
「なんだ!今のは!?」
そう言って、五人チームの生徒が森から出てきた。
体操服の番号は四。
「布都御魂。」
俺は収納から布都御魂を取り出し、居合の構えを取る。
「雷刀・瞬。」
俺がそう呟くと、一陣の風が吹く。
「「「「「ぐあああ!」」」」」
俺がやったのは、レムナットにいた頃にやった『雷刀・閃』を一瞬でやっただけだ。
まあ、それだけなのだが五人の生徒はすぐに退場した。この演習場は、一定以上のダメージを受けると、退場するようになっている。
「やはり、君は危険だね。」
その時、森から声がした。
「三条か。」
森から出てきたのは三条だ。
「どうやってこの学校に入ったか知らないけど、僕の前では大きな顔はさせないよ。」
「そうか。」
俺の返しに少し頭に来たのか、三条は眉間にしわを寄せる。
「知っているかい?このサバイバルゲームは中継されていて、この学校の生徒と、魔術協会の魔術師たちが見ているんだ。」
「だから?」
三条はニヤッと笑うと、言葉を続ける。
「だから、ここで君をぼこぼこにして、君の無能さを彼らに知らしめてやろう。」
「やるのは勝手だが、邪魔が入るかもしれんぞ。」
俺の指摘に、三条は笑って答えた。
「大丈夫だよ。もう他の生徒は全部狩ったから。」
三条の言葉を受けて、俺は索敵を発動してみる。
「ああ、本当だ。もう誰もいないな。」
「そう。だから僕も存分に戦える。」
そう言って、三条は体操服のポケットと、足に装着したホルスターから紙を取り出す。その紙は、人間の形に切り抜かれている。
「我の忠実なる下部達よ!その真なる姿を持って、わが敵を撃ち亡ぼし給へ!式神、万軍!」
三条が詠唱を終えると、彼が持っていた紙が大きくなり、最終的に一人の人間と同じ大きさになった。
「なるほど。使い魔か。」
式神は、使い魔の一種で、紙を使う。普通ならカラスなどの形を取るのが一般的だが、三条はそれを人型にして、たくさん召喚したようだ。
「行け!」
三条が召喚した式神は二十。正直少なすぎる。
俺は布都御魂でそれらを切り伏せていく。
「やっぱりこれぐらいじゃダメか。」
三条は更に紙を取り出す。その数は百以上。
「まじかよ。」
俺は少し驚いて、布都御魂を構えなおす。
三条は百の式神を俺に向けて放つ。
「まだだよ。」
三条は、さらに式神を召喚していく。式神はどんどん数を増やしていく。
俺も布都御魂で応戦しているが、式神は増えるばかりだ。
「お前のポケットどうなってんだ!?」
俺は式神を切り伏せながら、三条にそう問いかける。
「このポケットは、異空間につながっているのさ。それに、この式神もあと十三万はあるよ。」
「嘘だろ!?」
三条の言葉に、俺は驚愕の声を上げる。
「後、三万増やすよ。」
今でさえ二万ほどいるのに、三条はさらに三万の式神を召喚する。
俺の姿は、だんだん式神に埋もれ見えなくなった。
「終わり、かな?」
ドン!
三条がつぶやくと同時に、俺の周りにいた式神が吹き飛んだ。いや、俺が吹き飛ばしたと言ったほうが良いか。
俺はただ魔力を放出しただけだが、その威力はすさまじく、それの周りにいた式神は消滅はしていないが、百メートルほど吹き飛ばされた。
魔力は、人によって色がある。その色は、その人が使う属性には左右されず、その色が変わることもない。
魔力の色の判別方法は、今俺がやったように魔力を放出するか、それ専用の道具を使うしかない。ちなみに、俺のように魔力を放出して色を確認するにはかなりの魔力量を必要とされるため、道具を使うのが一般的だ。
そして、放出された俺の魔力は…。
「黄金色?」
黄金色だった。金ともいう。
とにかく、黄金色の魔力が丘を覆いつくす。
「っ!行け!」
魔力が収まり始めたのを見て、三条は式神達に命令する。何せ、俺は今、ほぼ無傷なのだ。
三条はさらに召喚する式神の量を増やす。
「お前が大軍を召喚するなら、おれもそうしよう。」
俺はそう言って、空間を殴りつける。
バキ!
何かが割れるような音がすると、空間に罅が入る。
その罅はどんどん広がっていき、最終的に大きな亀裂となる。
そしてその亀裂から、白い手が現れる。
その手は透き通るように…、いや、実際に透き通っており、生気を感じさせない。
そして、その手の持ち主が姿を現す。
「幽霊?」
それを呟いたのは、勿論三条だ。
出てきたのは、大剣を背負う幽霊だ。その大剣は、禍々しい光を放っている。
その剣と、武兵の名はアーリマン。名前の由来は、ゾロスター教の悪神だ。
アーリマンを筆頭に、神の名を冠する武器たちが次々と出てくる。
その数は七百。今回は神の名前を持つ武器しか召喚していないため、神の名を冠していない雷帝や炎皇は召喚されていない。
「な、なんなんだ!お前は!?」
三条は、俺に向けてついに十万の式神を放つ。
「我が力に応えし武器たちよ!」
俺は右手を振り上げる。
「わが敵を一層せよ!」
俺は上げていた右手を振り下ろす。
「御意に。我が主よ。」
武兵たちは各々の武器を持ち、式神の軍隊に突っ込んでいく。
十万の式神対七百の武兵。この戦いは、普通ならば数で勝る式神側が有利だが、武兵はその一体一体が神を撃ち亡ぼす力を持つ。
それ故に、勝負は一瞬で着いた。
勿論、武兵の圧勝だ。
武兵たちは、三条の式神をまるで寄せ付けず、ちぎっては投げちぎっては投げを繰り返す。
そして、ほどなくして、式神は全滅した。
「う、嘘だ!僕の式神が全部やられるなんて、何かズルをしたに決まっている!」
「俺がズルをしてたとしても、それは教師にも見つかっていない。どちらにしろ、お前の負けだ。」
俺はゆっくりと三条に近づいていく。
「ひっ!来るな!」
三条はしりもちをつき、後ろに後ずさりする。
俺はデス・サイズを取り出し、三条の首にその刃を当てる。
「最後に言い残すことは?」
俺は静かに三条向けて言う。
それは実質死刑宣告だった。
「あ、ああ…。」
三条は恐怖のあまり、言葉を発せない。
「死ね。」
俺は三条の首を切り落とす。
そうして三条の人生は終わる…ことは勿論なく、限界以上のダメージを受けたとして演習場の外に送られた。
俺は演習場を出る。
そこには、今年の新入生全員と、この学校の全学年の五組の生徒がいた。
新入生は俺のことをバケモノを見るような目で見つめてくる。
五組の生徒達は、俺のほうを向いたまま、何も言わない。
しばらくの間沈黙が辺りを支配したが、隆二が前に出た。
「君は何者だい?あの三条一馬を倒すなんて、プロの魔術師でも簡単じゃないよ。」
俺はその問いに、笑って返す。
「俺はただの公務員さ。ちょっと荒っぽい部署に勤務している…ね。」
俺はそいって、教室に戻った。
その日、ヘルスーナ魔法学園に、新たな伝説が生まれた。




