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雷帝は修羅の道を歩く  作者: 九日 藤近
第二章 シナーラ
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77 魔術師免許

 あの火事以来、俺はあまり人と関わらなくなった。


 雪姉や、詩帆とその友達数人、あと職場の人間以外の人間とは、目を合わせることすら珍しい。


 話しかけてくれば対応はするが、それもそっけないものだ。雪姉はそんな俺を心配してか、習い事などを進めてきたりするが、そういう類のことはやっていない。


 まあ、何が言いたいかと言うと、俺は日曜日の今日も仕事に励みます!ということだ。


 そんなわけで俺は今、二十万メートルの上空を飛ぶ飛行機に乗っている。


 理由を説明しよう。


 まず、俺は『魔術師免許』なるものがあるのを知り、それを取ろうとしたのだが、いかんせん幼すぎるため取り合ってくれなかった。しかし食い下がった結果、今紛争をしているアフガニスタンで一定の戦果を挙げれば『魔術師免許』を発行してもらえることになった。


 そして、運よくうちの部隊のアフガニスタン遠征任務が来たので、ちょうどよかったので来たのである。


 ちなみに、一定以上の戦果とは『五個大隊以上を撃破』だ。それを話したら、龍川たちはありえないと言っていたが、まあ、俺なら大丈夫だろう。


 とりあえず俺は降下地点に着いたので、降下の準備を始める。


 「これ邪魔。」


 俺はそう言って、パラシュート《・・・・・・》を捨て、飛行機から飛び降りる。


 「おい!椎名!」


 俺は一番最初に飛び降りる予定だったため、俺の後から龍川たちが降下してくる。


 「何考えてんだ!?死にたいのか!?」


 「いや、今死ぬわけにはいかない!」


 「ならどうして!?」


 「言っただろう!?邪魔だって!」


 俺はそう言って、重力魔法と、風魔法を使って加速する。


 「あ、おい!待て!」


 龍川は俺を制止しようとするが、俺は止まらずにそのまま落ちていく。


 俺が落ちる速度はもう音速を超えており、キイイイイン!という音が聞こえる。


 「な、何だ!?」


 ちょうど降下地点の近くで戦闘をしているらしく、何人かの人間がこちらを向く。


 ドオオオン!


 およそ着地には似つかわしくない音を立てて、俺はアフガニスタンの地面を踏みしめる。


 「何だ!今のは!?」


 戦闘していた男の一人がこちらに近づいてくる。


 俺は着地姿勢からゆっくり体を起こす。


 「…人?」


 男は自分が見ているものが信じられないのか、何度もこちらを確認する。


 「いくぞ!」


 俺はそう言って、武器を構え、近づいてきた男を斬る。


 ちなみに、これまで相手が何を言っているかはわからない。言っているであろうことを想像しているだけだ。


 「てめぇ!」


 近づいた男が殺されるのを見た他の男が俺に向けてサブマシンガンを乱射してくる。


 しかし、それは俺には届かない。


 俺に届く前に全て。何かに阻まれる。


 「絶体之盾アイギス。」


 俺はその魔法名を唱える。


 この魔法は絶対防御の魔法で、この世界で壊せるのは、神ぐらいしかいない。勿論ただの兵器で壊せるはずもなく、相手は無駄の弾を撃っていく。


 「な、何なんだこいつは!?」


 男の一人が悲痛な声を上げる。


 「面倒だな。」


 俺は男の叫びを無視して、考えるしぐさをする。


 「舐めやがって!」


 男はグレネードを取り出し、それを俺に向かって放り投げる。


 「無駄だって。」


 俺はそれを蹴り返す。


 「一気にやるか。」


 俺は足に力を籠めると、垂直にジャンプする。


 「八岐大蛇。」


 俺は魔法名を口にする。すると戦場に魔力が急激に満ちていく。


 そして、俺の手から火の大蛇が八匹建言する。それは一つに融合し、一体の魔物の形を取る。


 「行け。」


 俺が命を下すと、魔物、オロチは地上にいるテロ組織の人間を殲滅していく。


 三分もたつと、テロ組織側の人間で立っているものはいなくなっていた。


 「おい!椎名!」


 その時龍川たちがようやくやってきた。


 「お前死んでなかったんだな。」


 龍川は冗談じみた口調で言う。


 「ま、仕事は終わったし、帰るか?」


 俺はそう言って、新しく開発した、『ゲート』を発動する。この魔法は、一言で言うとワープホールを作る魔法だ。


 「え?終わった?」


 「ああ。テロ組織は殲滅した。」


 「まじかよ。」


 この後、龍川はテロ組織と戦闘していたアメリカ軍に殲滅ができたことを確認して、帰るのだった。


 この日、俺は十三個大隊と、二十五個中隊を殲滅した。それにより、俺は『魔術師免許』を手に入れ、晴れて魔術師として魔術師の社会で認識されることとなった。

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