73 殲滅
警察の事情徴収を受け、俺たちは彼らが手配したホテルにいた。
雪姉はショックが強すぎるのと、事情徴収のせいで疲れたためもう寝ている。
時刻は夜の十一時。ほとんどの子供は寝ている時間だ。
俺は雪姉が寝静まったのを確認して、ホテルの窓から外に出る。
行先は勿論、俺たちの孤児院に嫌がらせをしていた暴力団、獄炎組の事務所だ。
俺は重力魔法を使い、空を飛ぶ。風魔法でも空を飛べるが、音が大きいので重力魔法のほうが使い勝手が良い。
俺は夜の闇に溶け込み、滑るように飛ぶ。重力の枷は外してあり、もう俺を縛るものもないので、最高速で向かう。
俺の最高速は重力魔法に加え、風魔法も使う。これは推進力にするため、飛ぶ時ほど音は出ない。
俺の最高速度は音速に迫るため、すぐに事務所まで付く。この事務所は神の里の者たちが見つけてくれた。
俺は事務所の前に立つと、扉に手をかける。
バン!
俺は勢いよく扉をあけ放つ。
「誰だ!?」
若い男がドアが開く音を聞き、大声をあげる。
「何だガキか。おい、ぼうず、家に帰りな。ここはお前みたいなやつが来るとこじゃねぇよ。」
俺はその言葉を聞き、大笑いする。
「ク、ハハハハハ!」
俺が笑うのを聞き、何人かの男たちが奥からやってきた。
「何笑ってやがる!?」
男の一人がイラついたように聞いてきた。
「家に帰れって?俺の家はお前らに焼かれたよ!」
俺はそう言って布都御魂を取り出し、一番前にいた男に斬りかかる。
「へ?」
男は間抜けな声を出して真っ二つになる。
「次は誰だ?」
俺は獰猛な笑みを浮かべ、魔力を放出する。所詮、威圧というやつだ。
「ひ、ひぃ!」
男たちはその場に崩れ落ちる。
「なんだ、来ないのか?じゃあ…。」
ドン!
「や、やったぞ!」
俺が言葉を終える前に、火薬が爆ぜる音が俺の言葉を遮った。
音がしたほうを見ると、一人の男が銃を構えていた。
俺は地面に倒れ込む。
「ははっ!このクソガキが!」
なおも男は俺を撃とうとする。
ドン!
もう一発銃弾が発射されるが、それは俺に届くことはない。
「何かしたか?」
俺は一発目の銃弾を布都御魂の腹で受けたため、衝撃で吹き飛び倒れたが、二発目は布都御魂で切り払ったため、怪我は追っていない。
「な!?」
男は驚愕に顔を染める。そして銃を俺に乱射してくる。
「う、うおおおおお!」
男が持つ銃はトカレフ。トカレフの装弾数は八発。男はもう二発撃っているため、あと六発しか打てない。しかし、その六発も雄たけびと共にもう全て撃ってしまっている。
「くそぉ!くそぉ!」
男は弾が無くなったにも拘わらず、引き金を引き続ける。
「死ね。」
俺は銃を撃っていた男に短く告げると、その首をはねる。
「次。」
俺は表情を一切表に出さずに残った男たちを切り殺していく。
あるものは首をはね、ある者は心臓を突き刺し、ある者は縦に両断した。
五分後、その場に残ったのは俺と、死に絶えた三十人ほどの男だけだった。
俺が一息つこうとしたとき、扉の向こうから気配を感じた。
「お前もこいつらの仲間か?」
俺は気配に向かって問いかけるが、答えは返ってこない。
そして、そうやって問いかけるが、他にも気配を感じる。
どうやら三人ほどの人間に囲まれているようだ。
驚くべきことは、その人間が全員高い--この世界では--魔力を有していることだ。
「お前だ。扉の後ろに隠れている奴。」
俺が指名すると、扉の影から男が現れた。
その男は四十台に見えるのだが、それを感じさせない体つきをしており、体だけを見れば三十代でも通用するほど若々しい。
顔には大きな傷跡が斜めについており、非常に渋い顔つきをしていた。
「もう一度聞く。お前はこいつらの仲間か?」
俺は威嚇するように布都御魂を構え、男に問いかける。
「待て待て。俺はこいつらの仲間じゃない。むしろ敵だ。」
俺は目線で証明しろと訴える。
「ほら。」
男はそう言って手帳を投げてくる。
「公安特務殲滅部隊、『悪楼』?」
俺はそこに書いてあった文字を読む。
「ほう、読めるのか。」
男は感心したようにつぶやく。
「で、お前さんがこれをやったのか?」
男は表情を引き締めると俺に向かって問いかける。
「そうだよ。」
俺はその問いを肯定する。
「はぁ~。やっぱりか。」
男は大きくため息をつくと、右手を上げる。
「捕えろ。」
男がそう合図すると、今まで隠れていた三人が俺に襲い掛かってきた。
「な!?」
次に起こった光景を見て、男は目を見開く。
俺が重力魔法で襲い掛かってきた三人を全部捕まえたからだ。
「そういえば…。」
俺は薄く笑うと、男に問いかける。
「聞いてなかったよね。あんたたちが何でここにいるのか。」
俺はそう言って魔力を放出する。
「っ!?」
男は俺の魔力に充てられて顔を青くしながら、俺の問いに答える。
「こ、ここで魔力を使った反応があったから、目撃者がいたら口止め、使ったやつがまだいたらそいつをスカウト、もしくは抹殺するためだ。」
男は素直に白状した。
「俺の場合、何で捕えようとした?」
俺はこの男たちが、俺を抹殺でも、スカウトするでもなく捕えようとしたことに疑問に思い、それを聞いてみる。
「君はまだ幼すぎるから、捕えて上司に預けようと思った。」
俺はその答えを聞き、少し考えた後、男の仲間を捕えていた重力を解いた。
「よし!」
俺は手を叩くと、男に向かって歩いていく。
「な、何だ?」
男は俺が近づいたことで、少し後ろに下がる。
「その部隊に俺も入れろ。」
「は?」
その日、俺は日本の知られざる特殊部隊に入った。
なお、この後入ろうとする俺と、子供に戦闘をさせたくないと紳士なことを言う男--後に隊長だと知る--との押し問答があったが、そこは省略させてもらう。
そういえば、この小説での悲劇は前の話で最後です。
もう二度と悲劇はおこりません。
多分。
感想待ってます。




